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第9章 大王の死

第9章  大王の死


 さて、スペルマ大王とその弟子の精子Aが、中央突破を続行し、スペルマ総統親衛隊に向かって行った、その時である。



 急激に、スペルマ大王の尾っぽが、最初は軽い痙攣から、誰が見ても分かる程、激しい痙攣状態になっていったのである。



「スペルマ大王様。一体、どうされたのです?」



「若き精子Aよ、いよいよ、私の寿命が来たようだ。後は頼むぞ……」



 そして、急激な痙攣の後、スペルマ大王は、ゴボゴボと、謎の洞窟内に沈んで行ったのである。



「ス、スペルマ大王様、戻って来て下さい!!!」と、精子Aは大声で、テレパシーを送るも、多分、永久に届く事は無かったのだ。



 しかし、感傷に浸っている暇など無かったのである。



 ここは、もはや、戦うしか、道は残されていない事は、自明の理である。

 しかし、何と言う運の悪さであろう。



 スペルマ総統には、今まで秘密裏に訓練されて来た、約十万匹の親衛隊の精子の軍団がいる。数は、少ないとは言え、超精鋭部隊なのだ。



 勝てるとすれば、一匹対十匹で、個別に戦っていくしかないのである。



 しかもである。



 一番の問題は、仮に、この戦いが仮にうまく行ったにしても、最強の敵、スペルマ総統が最後の最後に残っている。


 

 こればかりは、精子A自らが一騎打ちを仕掛けるしかないのだ。



 その覚悟を再度確認し、若き精子Aは、自ら青いオーラを発している事を感じた。



 既に、自分は、かって、スペルマ大王から聞いた、「心」の【三段の変化】を遂げている事に気が付いていた。



 有名な哲学者ニーチェの唱えた、【「心」が駱駝となり、獅子となり、最後に子供となる】と言う意味が、完全に、理解出来たのだ。



「敵は無く、我も無く」「色即是空、空即是色」の心境。正に「子供」のような自由な心になっていたのである。

 もはや、恐怖心も何処にも無かった自分に、精子Aは、漠然とだが何故か勝てるような不思議な気持ちになっていたのだ。



 戦うのなら、今だ!



 今しか無いのだ。



 スペルマ大王の死を弔う為にもだ。



 周囲の、突撃隊との親衛隊との大激戦を横目で見ながら、ゆっくりと、スペルマ総統に向かって泳いで行く。



 スペルマ大王からは、一子相伝の秘術を、二つも教えてもらっている。



 しかし、この一子相伝のワザは、実は、スペルマ総統も、もしかしたら知っているかも知れない。



 更なる、奥義を究めたワザが必要なのだろう、とも、思う。



 しかし、一体、どう言うワザがあるのか?万一、これを考え出せなければ、自分の死は、「確定」だ。



 『スペルマ鞭毛べんもう百連発打』



『スペルマ鞭毛べんもう波動打』



 これ以上の、新型のワザをだ。

 しかし、オタマジャクシのような胴体と尾っぽ(鞭毛べんもう)しか無い形態で、これ以上、どんなワザが考え出せると言うのであろうか?



 フト、まだスペルマ大王が生きていた時に、聞いた事を思い出した。



 そういえば、ペニス王子の住む世界に、かって、ブルース・リーと言う、格闘家兼映画俳優がいて、自分の習った、葉門派詠春拳に、フェンシング・ボクシング・空手・テコンドー・合気道・柔道等のワザを取り入れて、「ジー・クン・ドー」と言う、新しい武術を作り上げた話を、思い出した。



 では、自分は、どのようなワザを生み出せば良いのだ?



 確か、葉門派詠春拳は、少林寺女四天王の一人と言われた、詠春と言う女性が、発明した格闘技と言うでは無いか?



 男性の精子でもある自分にも、生み出せない筈は無いのだが、ただ、ヒントが無い。



◆ ◆ ◆



 この様子を、Z大学の研究室のスパコン「エベレスト」の液晶画面で見ていた、明智美桜は、フト、この精子Aに、自分でも全く信じていない、テレパシーを送る事を、思い付いたのだ。



 駄目元である。



 明智美桜の考えた最終のワザとは、スペルマ総統よりも、尾っぽ(鞭毛べんもう)が長い、精子Aが、その長い尾っぽを、スペルマ総統の全身に十文字に瞬間的に巻き付けて、絞め殺してしまう究極のワザだった。



 『スペルマ鞭毛べんもう十文字攻撃』だ。



 そして、液晶上のアバターの精子Aに、

「精子Aよ、スペルマ大王二世を名乗りなさい!」と、つい、我を忘れて、大声で叫んだ。



 それを横で見ていた、田中教授は、

「ハハハ、美桜チャンも、ついにオカルト信者になったのか?」と、嫌みを言った。



「いえ、私は、あまりの激しい戦いに、つい、我を忘れて大声で叫んでしまっただけです。別に、オカルト信者になった訳ではありませんよ」と、照れながら弁明したのだ。



◆ ◆ ◆



 しかし、奇跡が起きた。



「我こそは、正統的な、スペルマ大王二世である!」と、若き精子Aが、皆の前で、宣言したではないか?



 スパコン「エベレスト」の液晶画面上のアバターが、そう、大声で叫んだのだ。



 明智美桜の、テレパシーが、本当に、通じたのであろうか?



 このスペルマ大王二世宣言に、スペルマ総統は、その自信に少々の翳りを感じ始めた。一体、この精子Aの、急激な変化は、一体、何がどうなったのか?



 そして、この宣言が、その後の、二人の決着に大きく作用する事になるのであろうか?





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― 新着の感想 ―
[一言]  オーディエンスを巻き込んで加熱するバトル!!  こんな、熱い物語だとは、最初は思いもしませんでした。
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