厄災の跡
コメディ要素多めです。
「……なぁ、これってミゲルのだよな?」
崩落した巨大建造物の瓦礫の隙間に、彼らはいた。
「いや……それはゲンゾーのだ。古傷が特徴的だろ」
男はそう返すと、その腕を受け取り、回収ケースに梱包した。
既に血は涸れ、その腕に生前の重さはない。男達は尚も淡々と回収を続ける。
「今回は何柱殺したんだ? 流石に損耗が酷過ぎる……」
「でもよ、上層部はスゲェもんを回収したらしいぜ。普段、遺体の回収なんてするはずねぇ政府の黒服連中がそこら中をうろついてた」
「はっ、どんな代物だろうと、この状況は変わらねぇよ」
男は周囲を見渡すが、生きた景色は一向に見えない。
無機質な瓦礫に足を取られ、不愉快な塵埃に耐えつつ歩を進めるが、陰鬱な景色は腐朽の一途を辿る。当時、歴戦の兵達が激戦を繰り広げていた区域に近づくにつれ、一歩進む毎に周囲には死体――正確には人間を形作っていた肉片が増え続けた。
「だったらよ、どうすりゃこのクソったれな状況が変わんだよっ!」
足元に転がる瓦礫の一部を軍靴で小突くが、それも乾いた音を立てて静寂な廃墟の奥へと消えていった。
「回収班の下っ端に言われてもなぁ……まぁそうだな」
ただでさえ気を病む回収作業に加え、同僚の悪言に嫌気が刺したのか、男は作業を続けつつ半ば投げやりに返答する。
「向こうと同じく神様で対抗するしかないだろ」
男達の終わりなき作業は続く。
これまでも、これからも。