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瀬戸賢一「書くための文章読本」

作者: ハムスケ

日本語の悩みのタネ、それは文末

ある程度文章を書きなれているのに文末表現に苦労している、という方は少なくないはず。というのも、文末に動詞・助動詞がくる日本語は、文末表現のバリエーションがそもそも豊かではありません。基本的には、次の5つしかないのです(カッコの左が敬体、右が常体です)。なるほど、たった5つでは、文末表現が単調になるのは時間の問題ですね。


肯定(です/ます)(だ/である)

否定ません(ない)

推量でしょう(だろう)

疑問(ですか/ますか/でしょうか)(か)

過去(でした/ました)(た/だ)

そこで、書き手は色々な方法で文末表現を工夫するわけ。例えば、小学校では敬体と常体を混用しないように言われますが(そしてそれは基本としては間違ってませんが)、実際の文章では常体と敬体が混用される。そして、過去を表す時も必ずしも「た」で終わらず、現在形「る」を用いる。そういう様々な工夫で、文末の単調さを避けようとするわけです。もちろん、全部を「た」で揃えて力押しで読ませてしまう例外的作家もいるのですが、それはそれ…。


文末に絞ったレトリックの見本市

僕も、ここのところはブログの記事を敬体で書く練習をしていて、文末表現の単調さには悩まされてきました。「でした」「ます」「でしょう」だけで文末が終わってしまってはもったいない。そこで、独白的な部分や列挙する部分では常体を織り交ぜるなど、自分なりに実験はしているのですが、まだまだ難しいなあというのが本音のところ。


そんな時に、この本に出会えたのはラッキーでした。この本では、「文末」に焦点を絞った日本語の様々な工夫を一覧できます。常体と敬体の意図的混用、現在形と過去形の混用、終助詞の活用、音の響きが異なる動詞への転換、問答法の活用、省略法の活用…文末に助動詞が来るというハンデを負っている日本語が、実に色々な方法で、文末表現の豊かさを生み出してきたことがわかります。それはまさに、文末に絞ったレトリックの見本市。文章の書き手には、大いに参考になる本と言えるでしょう。とりわけ、高校の国語教材でおなじみの「城の崎にて」も引用されているので、国語の先生にはおすすめ。


そして、この本の文章自体が、豊かな文末表現で彩られているのも、さすが瀬戸さんと言ったところです。個人的には、やや文末のバリエーションが豊富すぎて少しうるささも感じたのですが、でも、瀬戸さんの文章自体が、これだけ多様に文末を操れるのだというお手本にもなっています。日本語の文末表現についての詳細な分析とその実践、書くことに興味のある方には、お勧めできる一冊です。



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