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8.なんだか申し訳ない

 

 掃除の時間、今日も胡簶さんと二人きりになるわけだが、やっぱり今日はなんだか申し訳ない気持ちが強い。


「胡簶さん、今朝は申し訳ない」


「いやっ、宮本くんは悪くないよ! 古川さんも悪くない。私がそう思わせちゃったんだから、私に原因があるんだし……」


「何言ってんだよ! ゆりが悪いに決まってんだろ⁉︎ 無関係の胡簶さんをいきなり巻き込んで、それが悪くないはずないだろ!」


「ご……ごめん」


 ああやらかした。なんで俺はこんなにカリカリしてるんだろう。胡簶さんにキレるなんて、それこそ意味がわからないじゃないか。


「いや、すまん。俺が明らかにどうかしてたよ」


「まあでもさ、ゆりがもう少し冷静だったら胡簶さんにも何か起きてたかもしれないじゃん。そう考えると運が良かったよな」


「そ、そうだね。みんなも私たちの味方をしてくれてよかった……」


 本当だ。胡簶さんに関しては日頃の行いってところが大きな理由だろうけど。


 それきり俺らは特に話さなかった。話せなかった。でも最後にホウキをしまってあげたら赤面してこっちをチラ見しながら小声でありがとうって言われた。いやもうこれ来たでしょ。



 帰りの電車、長田はふと口を開いた。


「宮本、胡簶さんと仲良くなったのか?」


 ここ最近見せる何かが引っかかったような表情で質問してきた。


「まあそうだな、委員会同じだしそもそも胡簶さんは人がいいからな」


 やっぱ変な顔してる。性格を除いて完璧なコイツがこんな顔をするなんて、女の子の日なのかね、コイツゴリゴリの男だけど。


「…………そうか」


 あ、いや待て。もしやもしや。これは揺さぶりをかけようか。


「長田最近どうしたんだ? 変な顔ばっかしてる」


「はっヒドイ! いくら俺が不細工だからってそれはないだろ!」


 そういやコイツはこういうやつだったな。自分がイケメンだと認めない。これに関してはどうやら本気らしい。本人に聞いたところ『じゃあ仮に俺がイケメンだとしても、長田家の中では俺が一番整ってない。長田家で学年一の美形の称号を持ってないのは俺だけだ』とのことだった。恨むぜ血筋。


「いやそういうわけじゃねぇよ。お前は世間一般にはイケメンだ。じゃなくて、なんか悩んでるのか?」


「いや、そうだな。まあ……ない」


 なんだよ。だがこの返答も予想済みだ。一気に畳み掛ける!


「恋煩いとか?」


 あ。


 長田の顔が激変する。学校での顔が作ってるものだってことは当然と言えば当然だが、帰りの電車の顔は素顔に近いものだと勝手に思ってた。だがそれすらも完璧な作り物だった。


 二重でハッキリとし、かつ凛々しい瞳は獰猛な肉食獣が獲物を見つけたときのように細く鋭くなる。顔の筋肉は強張り、いまにも残虐なことをするんじゃないかと思うほど。


 だがそれも一瞬のこと。この辺りを上手いというか下手というか。


「はぁ、シゲチにはバレちまうか。だが誰だとは教えない。シゲチ相手でもね」


 ほうほう。長田の顔を覗き込むが無視。これはこれは、なんとも面白いような面白くないような。俺はやっぱり愉悦部には入れない。


 パッと見パーフェクトヒューマンの友人が好きな人が、自分のことを多分おそらく好いている女子だというこの状況。俺は確かに愉悦なるものを感じたけど、それと同じくらいに、いやそれ以上に気まずさを感じた。



需要があると判断したら続き書きます。もっとざまぁしろでも、もっとイチャつけでもご要望があればお教えください

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