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7.それはダメだ

 

「そう言えば胡簶さんって部活何に入ってるの?」


「えあっ、さ、茶道部に入ってるよ」


「胡簶なのに弓道部じゃないんだね」


 胡簶って確か矢を持ち運ぶための道具だった気がするんだけどな、ってかこのネタ通じるかな?


「あははは! それクラスメートに言われたの初めて! よく知ってるね!」


「ま、まあね」


 すごい、なんかめっちゃ喜んでる。と、これでちょっとだけ話しにくかった雰囲気を解消して教室をあとにする。思いの外時間がかかっちまったな。長田になんか言われるかも。


「遅れましたー」


 中ではすでに他の部員たちが活動している。鈍った眼も復活してきて、みんなが振る竹刀の動きも予備動作も掴めるようになってきた。いや、マイナスがゼロになっただけだが。


 お、長田もやってる。うちの高校は別に強豪ってわけではないけど、各学年に華やかな剣を振るやつがいる。2年の中では長田がそれだ。


 剣道は30秒観ればそいつが上手いか下手か大体の見当がつく。長田はそのフィルターを通って上手い側だとすぐ分かるのだ。


「いっそげー!」


 感想はさておきそろそろ着替えなければ。



「長田元気ないな」


 帰りの電車の中。俺は長田と二人で話している。そう、稽古が終わってからというものの長田の様子が変なのだ。


「あー、いや何でもないよ」


 この様子だと何かあるのだろうが、長田はそもそも誰にも心を開かないタイプだからこれ以上聞いてもウザがられる。なんとかして長田が好きな話題にしないといけないかね。


「そういえば最近でグロサイトに面白いネタあった?」


「うーん、最近はパッとしたのが無いんだよね。数ヶ月前にギャングがショットガン零距離射撃で人の頭ぶっ壊したのがあったんだけどさ、ここ数週間はレイプ系が多すぎ。ああいうの面白くないから」


 そう、愉悦部員長田快のもう一つの問題点。それはグロ系が大好きだってこと。今の言葉を聞くにアイツが欲しいものは性欲の混ざってない純粋な暴力。純粋にヤベー奴。


「お、おう」


「あーでも犬の心臓を生きたまま外に出してる動画はなかなか良かったかな。前にそれを人間がやられてるやつを見たからやっぱ衝撃度はあんまだったんだけど、人間のは辺りが結構血で濡れててしかも森の中だったからなんとなく汚かったんだけどね。でも今回のはちっちゃい犬で血もあんま出てなくて森の中じゃなかったからよく見えたんだよね。だから基礎点は高くないけどプラス点は高いって感じかな。それからーーーー」


 本当に、大体頭のおかしい奴って顔に出るから決してイケメンにはならないはずなんだけどなぁ。どうしてこうコイツはイケメンなんだろうな。ほら、本物のサイコパスは外から見たら魅力的だって言うじゃん、まさにそれだよね。



 次の日。ゆりから解放されたからこれからは毎日早く家を出よう! とはならずまたいつも通りの時間に家を出た。


 教室に着くと胡簶さんが固まっていた。理由は入り口のところからでもよく分かる。ゆりだ。


 彼女の机にも俺の机と同じように大量の呪いが書き込まれていた。胡簶さんはリュックも背負ったまま立ち尽くしている。




 それはダメだ。俺だけにちょっかいを出すのならまだ分かる。だが他の女の子を巻き込むのはダメだ。特にゆりはカースト上位、それを利用してどうこうなんて始まったら、胡簶さんは学校に来れなくなるかもしれない。


 カッコつけてられない。


「おい古川、どういう事だ。俺だけにならまだしも胡簶さんまで巻き込むのは違うんじゃないのか?」


「どうして? 彼女がいたから私たち別れたんでしょ? 浮気なしげと色目使ってる胡簶さんが悪いなら、二人とも私に責められて当然じゃない?」


 教室中がしーんとなった。まあそうだろうよ、クラス内で一番可愛いことになってる古川ゆりとその元彼が喧嘩を始めて、さらにはその会話にクラスで二番目に可愛い胡簶香織の名前が出てくればこれほど面白い話はないだろうよ。


「い、色目なんて……つかってない……よ……」


「ああ。俺がお前に別れを切り出したのに胡簶さんは関係ない。俺がただお前とはもう無理だと思っただけだ」


「ふん、まあそう言うでしょうね。でも周りを見てみなさい。周りから見て自分たちがどう写ってるかよーく分かるから」


 どれどれ、周りを見てみよう。周りから向けられているのは、うん、同情の目だ。


 まあそれもそうだろう。あの日から毎日俺の机は悪戯書きされ、海賊、もとい高橋先生は最終的にきちんとゆりを叱ってくれた。それから別れてからの俺の生き生きした様子もみんな見ていた。


 その情報が広がっている時点で周りは俺の味方だ。そこでさらにゆりは胡簶さんが色目を使っているとして責めた。


 これは多分ゆりにとって悪手。なんてったって胡簶さんは恋愛に興味ないとの評判だ。実はそうでもないかもしれないなんて知ってるのは昨日一緒に掃除した俺だけ。


 話が逸れたが、周りから見てあり得ない事で責め始めたらそれはお終い。被害妄想のヒステリック女だ。


「ええーと、ゆり。自分の負けを認めたらどうだ? お前こそ周りを見てみろ」


 ゆりに向けられるのは憐みと不快感をごちゃ混ぜにしたような目。広がる静寂。


「やあ古川さん、どうかしたの?」


 バンっという音と共に教室内に響いた声の主は、まさかまさかの長田快。


「ああ、やっぱいいや察したから。もうちょっと早くーー」


「長田ここ教室だぞー」


 何やってんだアイツ、教室内で自分の性格はクソだって公言するつもりかよ。


「あぁ! すまん! まあシゲチお疲れさん、って胡簶さんまで狙われたんだ」


 机を見てそう言う長田。


「ああそうなんだよ。俺に色目使ったとか言って」


「……ふーん」


 って、あれ? 長田? なんだろう、最近コイツの様子おかしい時があるよな。


需要があると判断したら続き書きます。もっとざまぁしろでも、もっとイチャつけでもご要望があればお教えください

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