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5.幸せはモテの素/再びのぶっかけ

 

 次の日、何だか体の調子が良かったので早めに家を出た。6月の朝の空気は思いの外軽かった。開放的な朝の空気を十二分に堪能して着いた教室にはまだ5、6人しか人がいなかった。その中にゆりの姿はない。


「あ、宮本くん今朝は早いね」


「まあ健康な体を取り戻したって言うかね」


 自分で言うとどれだけゆりが毒だったんだよと思うが仕方ない。今上を向いているのだから余計なことは考えないぞ。


「だよねー分かる。ゆりと別れてから一層イケメンになったていう感じ? てかさ、ゆりってあんま恋愛のことウチらに話してくんないんだけどどんな感じに別れたの?」


 ちょっと待て。情報量が多すぎる。まず1個目は? 俺がイケメンになった? それはまあ嬉しいけど何でだろうな。ストレス無くなって運動も再開したからかな。とりま置いておいて2個目は? ゆりが恋愛に関してはだんまりだって?


 え、嬉しいんだけど。いや俺の偏見なんだけどさ、女子ってフラれたら仲の良い女子にその相手の悪口を垂れ流して拡散させて男の居場所を奪うってことをするイメージだったんだけど。それなら余裕じゃん。


「まあ、黙秘だね」


「教えろよシゲー! 俺もお前イケメンになったと思うぞ!」


「おだてたって教えてやんねーよ!」


「ホントだってー! あ、長田には負けてるけどな!」


「それは知ってるわ! あいつに勝つなら整形しないとならねぇだろ!」


 なんて会話をする。なに、こうちやほやされるのは気持ちの良いものだな、なんつって。そんなこんなで朝の時間を過ごす。


 そういえば付き合っている頃はゆりが嫉妬して恐ろしい縛りを掛けてくるもんだから、あまり他人とはオープンにしてなかったな。もしかしたらそれが一気にオープンになったから『イケメン』ってことになったのかもしれない。


 社交性は大切ってことだな。


 昼休み、長田と食堂へ行くことにした。授業の準備があるのでチャイムの5分前までにカレーライスを食べ切って階段を上る。するとそこには、水の入ったバケツを持った古川ゆりがいた。


 マジかよ。嫌なこと思い出すじゃねぇかよ。


「アハハハハ! シゲチ! またぶっかけられるよ!」


 あー愉悦してる。忘れるもんか。一年前、武道場で部活してる俺に水入りバケツをひっくり返したゆり。俺の防具は水でビチャビチャ、武道場の床も濡れたがそれに止まらなかった。なんと先輩の防具まで濡らしたのだ。


 後輩の恋愛云々で防具を濡らされてキレない先輩はいない。それで俺は『自発的な』休部を申し出た。


 その情景がプレイバックした。


 授業直前に制服を濡らされる。ついでに長田も。こいつに目をつけられるのはぶっちゃけゆりよりも心配だな。


 と思っていたら。


 ビシャーンという音とともにゆりが自分で水を被った。


 長田をさすがにびっくりしたのか、いや理由はよく分からないが腹を抱えて苦しそうにヒクヒク笑っている。しかしこれは笑い事ではない。なにがって聞かれたらよく分からないけど、なんとなくそう感じる。


 と思ったらゆりがバケツを投げてきた。そんなものキャッチするほかない。そのまま彼女に手を引かれて、どこに連れて行かれるのかも分からないまま歩かされた。


「ひっ! あっははは! まあがんばってねシゲチ、ふふっ!」


 クッソアイツ。あれでいて学園内で五本指に入るイケメンだ。いやらしい。


「ゆり、どこへ行くんだ?」


 色々な感情がごちゃ混ぜになった状態で質問するが、答えてくれる様子はない。そのまま体育館横に連れられてきて、そこで察した。


 体育職員室、つまり担任のところに来たのだ。体育の教諭で生徒指導の先生。禿頭にモジャモジャの髭で、ついたあだ名は海賊。でもまたどうして。


「失礼します。高橋先生いらっしゃいますか?」


「はいよーって! どうした古川そんなにびしょ濡れで!」


 うん? あ、死んだわ。


「宮本くんにかけられました」


 はいはい。古川さんは冤罪をかけて人を苦しめるのが好きなんですね。痴漢冤罪と同じですね。本当に憎らしいです。


「あ"あ"ん?」


「はぁ、先生僕はやってません」


 もう面倒くさい。付き合ってられない。


「いや、話は生徒指導室で聴こう。古川はジャージに着替えて授業に出ろ。今日は体育があったからジャージあるだろ」


 そのまま生徒指導室に連れてかれる。そういえばさすがにこの部屋に来たことはなかったな。


「女子生徒の頭から水をかけるなんてッ! うちの生徒として俺が恥ずかしいわッ!」


 痛っ! こいつ机蹴りやがったぞ! 俺の前にある机を! 


「やってないって言ってるじゃないですか!」


 俺もだんだんイラついてきた。本当にこの世の中どうなってんだろうな。なんであんな奴の言うことがこうも簡単に信用されているのだろうか。


「古川も言ってる、お前はバケツを持ってる、お前の制服も少し濡れてる! これだけ揃ってるのに違うだなんてさすがに見苦しいぞ!」


「それはアイツの策です! ってか古川には前科があります! なんならうちの親に電話して確認してもらっても良い! それになんたってあんたも生徒指導の先生なら生徒が嘘ついてるか本当のこと言ってるかくらい分かんだろ!」


「くっ……それは……」


 よし、このまま押し切れ!


「ほら、今母親に電話をかけました。これで確認してください。先生だって冤罪の生徒を叱りたくはないでしょう?」


 半ば奪い取るように携帯を取る高橋。


「…………もしもし、担任の高橋です。お子さんについてお話を伺いたいのですがーーーー」


 電話中の海賊の顔を見ていると、なんだかどんどん情けなくなってきた。母さんは強い人だからな。特にゆりは約束を破ったわけだし。


「あー宮本、その、すまなかったな。先生が間違っていたようだ。本当にすまない」


「いえいえ、分かってくれたならいいんです。そんなことより古川を叱ってくださいよ、あんな卑劣なことをした奴」


「そうだな、二人で教室に戻ろうか」





需要があると判断したら続き書きます。もっとざまぁしろでも、もっとイチャつけでもご要望があればお教えください

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