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2.悪夢の始まり

 

 俺の通っている学校は県内の公立高校で一番倍率が高い超人気校だ。だから県中から生徒が集まっていて、幸い俺とゆりの家も電車で二時間の距離にある。


 だから、付き合っていた頃も一緒に帰るということはしなかった。途中の駅まで一緒、そのあとは別々。となれば日曜日である今日はゆりに直接悩まされることはない。まあだからと言って月曜日以降のゆり対策を考えるつもりはないが。


「なるようになるさ。なんとかなるならなんとかなるし、なんとかならないなら諦めろ」


 両親が買い出しに家を出て行ったので、一発抜くことにしよう。恥ずかしいからあまり語らない。察してくれ。


 ということで俺は天にも昇りそうな快楽に溺れていたわけだが、どうにも嫌な予感がしてきた。何があっても大丈夫なように通常モード、もとい賢者モードに切り替える。どうやってかって? ああやってだよ。


 次の瞬間、嫌な予感は予想を上回って的中した。


 家のベルがピンポンピンポンと鳴りまくり始めたのだ。それと同時に鳴り響く携帯。もはや軽いホラーだ。昼間の賢者だから良かったものの、真夜中のノーマルならビビって漏らしてた。


 とりあえず電話に出るべきだろう。呼び鈴を鳴らしているのはおそらくアイツだし、携帯の画面に表示されているのは母親の名前だし。


「どうした?」


「重明? 道路にまきびしみたいなものが撒かれてたみたいで車のタイヤがパンクしちゃったの。帰るの結構遅くなると思うけどお昼ご飯食べて待っててね?」


「は⁉︎ ……待て待て、まきびしって、釘みたいな?」


「うーん、釘っていうよりまきびし?」


 釘っていうよりまきびし。なんだよそれ、まきびしじゃねぇか。


「とりあえず、夜ご飯にも間に合いそうになかったらまた連絡するから」


「…………う、うん」


「あ、そういえば重明? どうしてそんなにピンポン鳴ってーーーー」


 ガシャ。電話は切っておこう。俺と母親の会話を邪魔し続けた何気に耳が痛くなる音を止めなければ。


「はい」


「はぁ! やっと出てくれた!」


 やはりこの声か。いや想像はついていたし、まきびしとかいう明らかにヤバいやつが宮本家の話題に出た時点で確定したようなものだが。


「ご用件はなんでしょう」


「えぇっとー、宮本重明くんいらっしゃいますかぁ?」


 インターホンの前の様子を確認できる画面には、身体をくねらせた女が映っていた。肩甲骨の辺りまでの長さの髪はハーフアップ。やけにぱっちりとした瞳とちょっと厚めの唇は男心をくすぐり、それに目が吸い寄せられるような巨乳が合わさればとんでもなく魅力的だ。


 外見だけは。


「しぃげぇ、そこに立ってるのはしげでしょ? ゆりをお家に入れて? お父さんとお母さんはしばらく帰ってこないから」


 ああ、やはりこいつだったか。いやまあ確信はしてたけどね、本人の口から聞くとやっぱり違うっていうか、コイツやっぱ気狂いだなっていうか。


「弁償願う。今の時代監視カメラなんてそこら中にあるんだから、自首した方がいいぞ」


「夜の冗談を謝ってブロック解除してくれたらいいよ? ていうかブロックは冗談になってないよーぅ」


 画面越しで嘘泣きを始めるゆり。というか嘘泣きではないかもしれない。俺は一度泣かせたことあるからな。


 あのときは、申し訳ないと思ってる。ゆりも悪い子じゃないから。だが今回は違う。俺は俺の頭がおかしくなりそうだと自覚したから、この女と別れようと決めたのだ。ここで構っていては負けだ。


「なら警察がお前のところに行くまで待っとけ。ついでに教えておくとこのインターホンはビデオ録画してるから一つの証拠になるぞ」


「…………」


 あ、これはヤバい。急いでインターホンを切らないと。


 インターホンを切ったのと同時に、家の外からゆりの泣き声が聞こえてきた。家の前で泣くなよ。近所迷惑じゃねぇか。と思っていたらとんでもないことを口にし始めた。


「重明くんが子どもをおろせって言うよォォー!」


 ○ね! ○すぞクソが! 


 これは本当に収拾がつかなくなる。近所のおばさま方が『宮本さんちの重明くん、女の子を妊娠させた挙句におろせなんて言ったそうよ!』『あらまあ、男なら受け入れなきゃねえ』『ご両親はどうしたのかしらねぇ』『本当にねぇ』なんて会話をするに違いない。というかしなかったら感情無いだろそれは。


「ダメだ、ここで出たら負けだ。これは我慢大会、我慢大会だ。反応しなければ諦めて帰ってくれるはず! 待つしか無い!」


 よし、ゲームだ。テレビに向かおう。



需要があると判断したら続き書きます。もっとざまぁしろでも、もっとイチャつけでもご要望があればお教えください

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