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第五話 試験

 この家に来てから一週間が過ぎた。


 地上ではやっぱり俺は死んだと広まっっており、外を歩くと皆、幽霊?って顔をする。声を掛けられるのも多くなってうざい。ってか広まるの早すぎだろ。

【幻影】を使って見た目を変えようとしたがなぜか体には発動しなかったため、髪染めを買い、髪色を黒にした。黒髪碧眼になるが、これで少しは外に出ても騒ぎを抑えられる。黒髪最高。

 飯はいつも一食300ハルワぐらいの店で食べる。家政婦もいないし、自分では作れないので仕方ない。

 お金はこの家にきた後日に受け取ったんだが、どうやって集めたのか聞くと「企業秘密じゃ」と返された。怪しい。絶対市民を襲っただろ。


 俺はお金が沢山あっても別に飯以外では使わないのでほとんど貯金だ。財布にはいつも2000ハルワしか入ってない。


 貰った家は一階建てで、部屋が三つある普通の家だ。魔王が言ってた通り予め必要な家具は全て完備されており、住み心地もいい。まだ結構綺麗な状態なので、掃除は欠かさず行おうと思う。

 内装は俺好みにしようかとも思ったが、よく考えるとフェイニルにはパソコンも何も無いので最初から変わってない。シンプルも好きだから恐らくずっとこのままだろうな。


 大魔法学校には魔法学校を卒業しなくともある程度の知識があれば入学できる。

 一番重要なのは知識ではなく戦闘技術なのだ。魔法、スキル、戦闘術等が優れていると入学の確率はぐんと上がる。

 つまり魔法学校を卒業できずに終わった俺も乗り越えさえすればいい。そう、皆大嫌いな試験を。


 帝国大魔法学校に入るには特別な試験を受ける必要があり、そのお陰で俺は今猛勉強中だ。

 試験は個人の実力を確かめるために行い、それぞれ点数が出される。その点数が合格ラインを越えた者は晴れて入学だ。

 あと、帝国大魔法学校のクラス分けは少し変わっていて、特別クラスと普通クラスの二種類がある。一学年は四つのクラスで出来ているのだが、そのうち一クラスだけ特別クラスとなる。分かりやすく言うと、各学年ごとに特別クラスが一つ、普通クラスが三つあるのが帝国大魔法学校なのだ。ちなみに特別クラスで入学すると、授業料は払わなくていいというおまけ付き。テンプレだな。金は全然払えるが。

 特別クラスに配属されるには試験で好成績を残さなければならない。リアは特別クラスに行くだろうから、俺も好成績で試験を終えないと…まあ、リアとコミニュケーションが取りづらくなるよな。絶対特別クラスへ入らなければ。

 身体能力、戦闘技術は文句なしで好成績だろうが、普通教科は凡ミスが出る可能性があるので予習し、少しでも特別クラスに配属されるよう頑張っている。これで特別クラスじゃなかったら笑ってくれ。




 今日はついに試験を受ける日だ。昨日はしっかり早寝をして、準備も万全。

 受けるためにはまず、100000ハルワを払う必要があるので財布はいつもより大きい。

 …いや、待て。たけえよ。試験受けるだけで十万?

 勇者ならお金を気にせず無条件で入学できるため、受験料なんて気にも止めてなかったけど、改めて考えると高い。高すぎる。それ何大学?って状態だ。

 さらに合格すれば追加料金も払わなければならない。確か1800000ハルワだっけか。

 …ガハッ(血反吐)い、一応こっちは三年間の授業料も含まれてるから…。特別クラスに入れば入学料の300000だけでいいし…。な、なるほど、これならあのおまけが付くのも納得だよな…。へへっ


 あれ?いつのまにか試験会場へたどり着いてた。ま、いっか。

 受付は結構並んでいて、待ち時間が相当ありそう。やっぱり試験受け付け二日目でも人は多いか…。あ、言い忘れてたが、大魔法学校は昨日から試験の受け付けを開始している。最終日である今日を選んだのは単に勉強時間を長くしたかったってだけで、特に意味は無い。


 やっと俺に順番が回ってきた。えっと…、まずは名前から。


「え?何ですって?」


「だから、アントガー・ウォルコットだって」


「真面目に言ってますか?」


「真面目に言ってるが?」


「はぁ、分かりました。そう書きますね」


 周りからちらほら笑い声が聞こえてくる。俺が元勇者と同じ名を語る痛い人とかでも思ってるのだろうか。別にいいけどな。


 番号と名前の書かれた紙を貰い、試験会場の中に入ろうとしたとき、後ろから「すみません」と声が掛かった。


「あ、あのー…間違ってたら悪いんですけど、本当にウォルコット…元勇者さんですか?」


 髪は薄い赤で、背の低い少女だ。年齢は13歳ぐらいに見えるが、確実に同い年だろうな。列に並んでるし。

 はっきり言ってかわいい。秋葉原周辺を歩けば紳士たちの視線を集める程度に。俺もこういう子とは仲良くしておきたいなぁ。…ロリコンじゃないぞ?


「さあな。知らん」


 だが今は適当に誤魔化して奥に進む。此処で騒がれるのは面倒だしな。




 試験が始まった。

 まずは戦闘試験を行う。

 場所は外でやるみたいだ。種類は剣、魔法、槍、弓のどれかで挑戦する。

 剣、槍を選ぶと試験管を相手に対人戦をし、魔法を選ぶと一番得意な魔法を一つ披露する。そして弓は的を狙って撃つ。それにより、点数が決まるのだ。

 俺は剣と言いたいところだが、特別クラスに行けるラインがはっきりしてる魔法を選ぶ。


「次!アントガー・ウォルコット!」


「はい」


 俺は闇属性魔法のブラックホールを撃つ。ブラックホールはスキルに最低【闇属性魔法lv9】がないと使えない魔法なので文句なしに合格だろう。周りが少しざわめく。


「ブラックホールか…凄いな。合格だ」


「はい。ありがとうございます」


 そう言って戻ろうとすると何処かから「お前すげえな!」と声を掛けられた。


「あれブラックホールだろ!【闇属性魔法lv9】持ってんのか?」


 お、これは友達を作るチャンスかもしれない。此処なら人が密集してるわけでもないしいいか。


「持ってるな。いいだろ?」


「本当だぜ!羨ましい!あ、俺はユーリッツ・ヴァレオンだ。レオンとでも呼んでくれ。お前は?」


 …


「…アントガー・ウォルコットだ」


「あ?どっかで聞いたことあんな… まあいいや!ウォルって呼ぶぞ?あ、ルコットでも…」


「いや、ウォルで頼む。よろしくな」


「ウォルだな。よろしくよ!」


 なんかいい奴だな… 名前を言う時、少し引かれないかひやひやした。


「あ!おい、あれ見てみろよ!」


「弓の試験か?」


「そうだ、今矢を撃った子凄くなかったか?可愛いし」


「…」


 見覚えあるなと思ったら、よく見ると受付で声を掛けてきた女の子だ。


「どうした?」


「なんでもない」


「さては可愛くて一目惚れしたな?あ、ほら二撃目打ったぞ」


「一目惚れはしてないが、確かに凄いな」


 エンチャントスキルを持ってるのか、飛んだ矢には風属性が付与されており、かなりのスピードで矢がとんでいる。

 エンチャントとは武器や道具に特殊な効果を付与するシステムで、【エンチャント】というスキルがないと使えない。


「速えぇ」


 確かに風属性にしてはかなり速い。


「あれだと特別クラス行きかもな」


「なら俺と同じクラスか」


 …ん?


「なんだ?俺は中々強いんだぞ?絶対に特別クラスに入ってやるぜ」


 まあ、本当かは知らんが、俺もレオンが同じクラスになってくれると嬉しいので応援する。


「そうか。頑張れよ」


 そろそろ次の試験時間が近い。もう少し喋りたいが早めに移動した方がいいか。何が起こるか分からないし。


「時間だからそろそろ行くわ」


「おう、それじゃあ今度は特別クラスで会おうな!」


「そうだな」


 うん、この調子で入学できればこの学校生活は楽しくなりそうだ。

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