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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編

みんなの顔

作者: 近江 仙

自分には兄弟がいる。

そんな気がする。

ひたすらそれだけを考えて進んでいた。

周りに人がいる。

みんな兄弟を探している人たちだ。

おんなじ顔が並ぶ。


「やあやあ、あなたも兄弟を探しているのですか?」

道行く一人の人が訊いてきた。

「そうです。あなたは私の兄弟ですか?」

頷くと訊き返した。

「いいえ違います。なぜ?」

一人の人は首を振り答え、訊き返した。

「おんなじ顔をしています。」

自分の顔と相手の顔を交互に指さし言った。

「そんなこと言ったらみんなそうじゃないですか?」

一人の人は両手を広げ大げさに言った。

「そうだそうだ。こんなにたくさんの兄弟いるはずない。」

沢山兄弟がいるはずない。それもこんなに多く。

そんな気がした。

「もしかしてみんな兄弟なのではないですか?」

一人の人は何かに気付いたように周りを見渡した。

「それもあるかもしれない。」

たった今、自分の中で否定したはずなのにおんなじ顔の者に言われてそんな気がしてきた。

自分のその言葉により周りを走っていた者たちが近づいてきた。

みんな、みんな、おんなじ顔だ。

見れば見るほど兄弟なのかもしれない。

「あなたが私の兄弟のなのですか?」

「私は兄弟を探しています。」

「私もです」

おんなじ顔が口々に言う。

もう、誰が誰だかわからない。

先ほど話した人がどれだかもわからない。

きっと、向こうもそうだろう。自分のことをどれかなんて気づかない。

「私たちは兄弟だったのですね。」

自分の周りに沢山のおんなじ顔。

自分もおんなじ顔。

誰だかわからない。まるで合わせ鏡のような気味悪さ。

探し続けた兄弟を見つけた。

幸福感より気味悪さが際立った。

「私の兄弟」

「兄弟」


「兄弟」

そんな言葉が響く中、異変が起きた。

それは自分の中でも起きた。

顔がむずむずしてきたのだ。

「かゆい、かゆい。」

「いたい、かゆい。」

次はそんな言葉が響いた。

自分の顔もかゆくなってきた。

手を見ると、程よく伸びた爪が目に入ってきた。

これで掻くと、きっとこの痒さもおさまるだろう。

自然に手が顔に伸びた。

掻くと爪に皮膚だか垢だかわからにものがたくさん詰まった。

指と爪の中に圧迫感がある。

詰まったものを親指の爪でかき出し、再び顔を掻いた。

「かゆい、かゆい」

いくら掻いても痒みは収まらない。

周りのおんなじ顔も掻き続けている。

掻いても掻いても収まらない痒みに苛立ちを覚えてきた。

響く音は顔を掻く音とただひたすら「かゆい」という呟きだけだった。

「かゆい、かゆい」

痒さに痛みが加わった。

爪を見ると、赤い血が付いていた。

だが、痒い。痛みに勝る痒みで掻き続けた。

「かゆい」「かゆい」「いたい」

そんな言葉がひたすら響く時間が過ぎた。

足元を見ると、皮膚か垢かわからないものが血を交えて転がっていた。

「かゆくない」

喜びを含んだ声が響いた。

「本当だ。かゆくない」

そんな声が次々に聞こえた。

「かゆくない」

自分もそう言った。

痒みが消えて喜びに満ちていた。

周りを見渡すとそこには違う顔があった。

「違う。違う。」

みんなが違う顔だった。

「兄弟じゃない。おんなじ顔じゃない。」

そう違う顔の者たちは口々に言うと再び走り出した。

自分の顔を見れないが、きっと顔が変わったのだろう。

そして、自分の兄弟は結局いなかったのだろう。

「兄弟をさがそう」


自分には兄弟がいる。

そんな気がする。

ひたすらそれだけを考えて進んでいた。


周りに人がいる。

みんな兄弟を探している人たちだ。

違う顔が並ぶ。

「やあやあ、あなたも兄弟を探しているのですか?」

道行く一人の人が訊いてきた。

「そうです。あなたは私の兄弟ですか?」

頷くと訊き返した。

「いいえ違います。なぜ?」

一人の人は首を振り答え、訊き返した。

「おんなじ顔をしています。」

気が付いたらみんな同じ顔をしていた。

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