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8話

あらすじに辿りつくまでに、33000文字かかるという罠。

すまんのう。すまんのう(笑)




 慌ただしく過ぎた日々。

 慣れれば楽しかった ダンジョン。

 お世話になったはずなのに記憶に残らない 教官。


 今日 僕たち 私達は 卒業します。


 茸を倒す事が出来たけれど、それでお金を稼ぐ事が出来ない事が理解できてすぐ、とうとう卒業式の日が来てしまった。


 そして、それは私にとって試練が始まる事を意味してしまう。

 なぜなら、これまでパーティを組んでくれたトミー、ジャックさん、ボブさん達から組めなくなるという事を伝えられたからだ。


 3人とも貴族の方からのお誘いがあったらしく、これからダンジョンに潜る際には自分達でパーティを決めるのではなく貴族の方が決めた班に入ってダンジョンの深層を目指す事になるらしい。


 みんな凄い。

 そう思ったし、3人がそれぞれ偉い人に認められたことはとっても嬉しい。


 ……でも茸すら倒せない私は、これまでの大きな助けを失う事になった。


「すぐ偉くなって荷物持ちにでも雇ってやるから心配するな。」

「ありがとう。」


 トミーは面倒臭そうな顔をしながらそう言ってくれた。

 なんだかんだ言って面倒見がいいトミー。同じ学生なのに他の人から慕われているのも分かる気がする。だからこそ、私が負担をかけるのも申し訳ない。


「むう……その、なんだ。食うに困ったら多少の力にはなれるかもしれんから、その時には声をかけてく……れ。」

「ありがとう。」


「落ち込まないでねエリーちゃん。そのスキルはさ、まぁ? なんか結構色々使えると思うから諦めないでよ。多分大丈夫!」

「ありがとう。」


 ボブさんもジャックさんも私が1人悩んでいる時に声をかけてくれた。

 こんなにも応援してくれる人達がいるんだ。私も負けてられない!

 私は茸を大きくできるんだから、これを知ってもらえれば今からでもパーティに入れてもらえる所もあるかもしれないんだから。



--*--*--



「ムチは要りませんか~? あの、ムチはいりませんか?」

「あぁ、鞭だぁ!?」


 俺はかけられた声に耳を貸し目を向けた。

 そして目にした瞬間から、胸が弾みだすのを抑えられなかった。

 なぜなら声をかけてきた女の胸が、それはそれは弾んでいたからだ。


 よし。

 この女。


 いい。


 仲間にして欲しいというのならば喜んで仲間にしようじゃないか。

 俺の本能が全力でそう叫んでいた。


 だがそう感じ動き出そうとした瞬間に悪寒が走る。

 その悪寒の元凶だろう方にそっと目を向けると、そこには笑顔の仮面の下に鬼神を隠した俺のベイベーの姿があった。


 正直『ベイベー』とか呼ばされるのは辛い。

 何を考えて、こんな腐った呼び方させてるんだろうか? この女は。

 パーティを組むようになって何となく惰性でこのまま組む事になったのだが、正直何日も一緒に居れば親しくもなるし情も沸く。いや、でも別に何もしていない。深い関係というわけではない。ベイベー呼びだって、ちょっとダンジョンで攻撃から庇ってテンション上がってたから『大丈夫かい?ベイベー』とノリで洒落で口から出ただけだ。なんかそれから強制されるようになったのだから。ちょっと頭おかしいと思う。

 だが正直……もうそろそろこの俺にベイベーと呼ばせる女とヤレそうなの気がするのだ。


 ヤレる。

 これはとても良い言葉だ。

 なんともいい響きじゃあないか。ヤレる。

 どんなお宝よりも価値がありそうな言葉だ。


 あぁ、ヤリたい。

 それはそうだろう。俺はお年頃だ。

 いつだってヤリたい盛りなのだ。


 だがしかし、今、声をかけて来てくれた女は非常に良い。

 なんというか、純朴そうで俺にベイベー呼びなんてさせる事もないだろう。

 なんていうか、尽くしてくれそう的な空気を感じないこともない。

 なにより弾む胸がムッチムチで今にも服を突き破りそうじゃあないか。でもウエストは細い。ちっくしょう。なんて肉感的なんだ。けしからん! 俺にベイベー呼びを強制させる女なんて、これに比べればまな板と言ってもいところじゃあないか!


 まな板を考えた瞬間に悪寒が一層強くなり鳥肌が立った。

 そうか俺にベイベーと呼ばせるこの女は、このいい女を嫌っているんだ。

 ちっくしょう! もし仲間にしてしまえば、この女からの評価はだだ下がりに下がるかもしれない! いや下がるだろう。そんな事になれば、ヤレそうだったものもヤレなくなるっ! くそーーうっ!


 俺は決断を迫られた。


「はっ! うぜぇ、消えろ!」

「あぁう!」


 俺は決断した。


 天秤に乗せた結果、ヤリたいが勝ったのだ。

 まな板はヤレそう。たわわは未知数。そう。仲間になったからと言ってヤレるとは限らないのだ。


 俺は涙をのんで、どうせ嫌われるなら、と、良い女の胸の近くを押して突き放した。


 せめてちょっとだけでもおっぱいを触りたかったのだ。

 あくまでも自然に、邪魔者を押し返すように無理のない動きで、不自然にならないようオッパイ近くを押したのだ。


「ふん! 私のダーリンに声をかけるなんて身の程を知りなさいよ! ねぇ!」

「おう! がっはっははは」


 ぷにぽよーんだった。

 神はそこにあった。


 顔で笑って、心で泣いて。


 俺はぷにぽよーんの名残を手に感じながら、新たに生まれた自分の選択が本当に正しかったのか苦悩する気持ちを『今日こそヤリたい』という強い気持ちで心の奥底に封印し、弾むおっぱいから目を逸らして、まな板と共に歩みを進めるのだった。



--*--*--



「うぅ……」


 まただ。また断られた。

 突き飛ばされて崩れたまま、もうショックで立ち上がれない。


 これまで色んな人に声をかけてみた。

 組になってしまっている人達が多かったけれど、この際、荷物持ちでもなんでもするつもりでダメ元で声をかけてきた。


 最初に声をかけたのは、男の人2人と、女の人2人の4人組パーティ。

 なぜか女の人達から怖い目で睨まれ、男の人が困ったような顔をしていたので、辞退することしかできなかった。


 次に声をかけたのは、男の人1人と、女の人3人の4人組パーティ。

 声をかけた瞬間から、女の人達全員が敵意に満ちた目で見てきて、男の人は優しかったけれど、とてもじゃないけれど、その輪に加わる事などできそうになかった。


 次に声をかけたのは、男の人3人と、女の人1人の4人組パーティ。

 ここではとても話が弾み、4人とも乗り気で仲間に入れてもらえそうだった。それで食事でもして懇親を計ろうという流れになった時に、いつの間にか女の人に連れ出されて二人きりになっていて「なに人のシマ荒らしに来てんだよ? あぁ? ふざけんじゃねぇぞ? クソが!」と、これまでの表情とまったく違う表情で怒られて怖さの余り辞退しかできなかった。



 次に声をかけてみたのは、女の人4人の4人組パーティ。

 しっかりと話を聞いてくれたし、色々と質問もしてくれたんだけれど「ごめんね……貴方の事は理解できたのだけれど、私達は実力主義だから……ちょっと貴方のスキルじゃあ……」と、申し訳なさそうに、でもハッキリと断られた。


 次に声をかけたのは、勇気を出して男の人の4人組パーティ。

 でも「すまないね。女の人が入ると、それだけでトラブルが増すもんで……俺達はしっかり稼ぎたいから……」と、謝りながらキッパリと断られた。


 4人組パーティだけじゃあなく、もちろん目についた3人組パーティにも声をかけてみたりもした。

 

 例えば、女の人3人のパーティ。

「いや、見てわかるっしょ? ウチの間に入り込む隙なんてねーし?」

 あっという間に軽くあしらわれた。



 男の人3人のパーティ。

「歓迎する歓迎する! とりあえず飲みに行こうか? 行くよね。

 どこから来たの? お金困ってるの? 大丈夫大丈夫すぐすむから。」

 なんだか怖くて逃げた。


 女の人2人のパーティ。

「あら? 新しい子猫ちゃんかしら?」

「もうおねぇ様!? ……でもあなたなら……」 

 なんだか怖くて逃げた。


 男の人2人のパーティ。

「すまないがホモ以外は帰ってくれないか?」

 見送った。


 そして、男女2人のパーティに声をかけて突き飛ばされたという流れだ。

 もうダメかもしれない。


 私は一人じゃあ満足に茸すら手に出来ない。

 大きくする事はできても、破裂させてしまって使い物にならなくなってしまう。

 私のスキルは、ダンジョンでは役立たずも役立たずなのだ。


「なんで……なんで私のスキルは鞭なの……なんでこんなスキルに目覚めたのっ!?」


 気が付けば悔しさから涙が流れ出す。

 そしてただただ不満のやりどころのない気持ちをベスさんの貸してくれたキャットオブナインテイルに乗せ、駄々っ子のように地面に向けて打ちつけていた。


「ほう。いい鞭捌きじゃないか」

「……え?」


 ふと見上げれば、そこには穏やかな微笑をたずさえたシルクハットを被った紳士が立って居た。


「ほらお嬢さん。折角の可愛らしい顔なのです。

 涙で濡れていてはもったいない。」


 そう言ってハンカチを差し出してくれた。

 私は見知らぬ人に声をかけられたことで泣いていた恥ずかしさなんかが心に沸き起こり、どうしていいか分からず、とにもかくにも目の前に差しだされていた紋様の入ったハンカチを手に取り、顔を拭う。

 そしてすぐに自分の服の袖ででも拭えば良かったのに人様の高そうなハンカチを使ってしまった事に気が付いて焦燥した。


 なにせ手触りですぐに上等とわかるようなハンカチなんて、どれほど高価か想像もつかない。

 いいえ……逆に、お婆ちゃんが裁縫をしていたから、糸や布で値段が大きく違う事を知っているからこそ、その天上の高さが想像できてしまい、私の稼ぐ能力でどれくらいかければ購入できるのかを考えてしまい気が遠くなる。


「あ、あ、あ、あの! すみませんでした! は、ハンカチを使ってしまいました! ごめんなさい!」


 すぐに立ち上がって頭を下げる。


「はっはっは。いいんだよ。こんな爺に使われるよりも可愛らしいお嬢さんに使われる方が、このハンカチもよっぽど幸せだっただろう。」

「で、でも、その、こんな高価そうな……」


「お嬢さんや……道具は高かろうが安かろうが、使ってこその道具。道具の本分というのは、その使われ方だよ。値段じゃあないんだ。」


 優しさが滲み出た様な落ち着くような声色に、私の焦っていた気持ちも和らいでいくのが分かる。


「はい……あの。有難うございました。」

「あぁ。」


 私は頭を下げながらハンカチを返す。

 だけれども、ハンカチは私が差しだしたまま中空を彷徨う。それが不思議で顔を上げると、紳士が自身の顎鬚を撫でながらじっと、なにか地面を見ていた。


 視線につられ私も目を向けると、そこには落ちているキャットオブナインテイル。


「その道具もまた……八つ当たりに使われる事は望んでいないだろう。分かるね?」

「……はい。」


 私の返事を聞いてから満足そうにハンカチを受けとる紳士。

 私もすぐに地面のキャットオブナインテイルを拾いあげる。


 これはベスさんが私を思って貸してくれた鞭。

 私がうまくいかなくて悔しいからって、乱暴に扱うのは、それは違う。

 キャットオブナインテイルに申し訳なくなり、私は気が付けば鞭をそっと抱きしめていた。


「ふむ……いい心がけだね。それにさっきの鞭捌きも八つ当たりにしては良いものだった。君はひょっとするとひょっとするかもしれんな。」


 私から受け取ったハンカチを、立派な服を着た強そうな従者の人に渡しながら紳士が従者に向き直り言った。


「なぁルークよ。私は、この娘の鞭捌きが私の目に留まるようであれば見守ってやろうかと思うのだが?」

「メチヤ様。確かに私は報告は上げておりましたが、クリスという名の者も中々に有望と聞いております。流石に鞭しかできぬ娘などにそのような庇護を与える事は――」


 どこか焦ったようにハンカチを受け取ったルークと呼ばれた従者の人が言葉を返す。

 私は話の進展が私に関わっている事だけは理解できたけれど、それよりもハンカチは私が洗って返した方が良かったのか? などとどうでもいい事が気になりはじめてしまう。


「なぁにいいじゃないか。ルークよ。」

「いえ、しかしメチヤ様!」


 もしハンカチを洗って返す場合は、高級品を一時でも預からせてとお願いする事になるし、そちらの方が、逆に迷惑になるような気がする……う~ん? 今からでも洗いますと伝えた方が良いんだろうか?


「そのクリスとやらに会いに行く前に、この娘に出会えた。これもまた縁。なにかの導きかもしれんだろう?」

「いえ……しかし、鞭捌きを見るなどと申されましても、ここは公共の場ですし、いかようにして……」

「はっはっは。簡単だとも。いや……この場だからこそ、本質を見れる……とも言える。」


 う~ん……ハンカチ……洗いたいけど、どうしたらいいんだろう?


 私がそんな事を考えていると紳士の人が私に近づいてきていた。


「どれ御嬢さん。少し振るってみてはくれんかの?」


 そう告げて、まるでダンスでも踊るように優雅に右足を引きクルっと半回転して私に背中を向けた。そしてそのまま流れるように腰だけをクイっとあげ、お尻を強調したのだ。


『ぶって……』


 私には紳士の放った声が聞こえた。


「え? あ、はい!」


 そしてその声に従って、お尻の望む通り、打たれたがっているけれど、本当に打たれると思ってない無念さを滲ませながら油断しているお尻を精一杯の力でスナップを利かせ十全の傷みが伝わるように打ちぬいた。


「アォォオオンっ!」

「だ、旦那様が鳴いたっ!?」


 油断していたお尻はビクーーンと大きく反応しエビぞりになる紳士。

 私は、打ちぬいて初めて自分がしたことに気が付く、


 なんという場所で、なんてことをしてしまったんだろう!


 どうしていいのか分からずに慌てる事しかできない。


「あ、あわわ、わあわ。」

「小娘! もう一度だ!」

「えっ? えっ!?」


 従者の人に言われ紳士を見ると、激しく両手でお尻を擦っている後ろ姿しか見えない。


『ん、ンんんん……もっとぉおおっ!』


 お尻が『もっと打て』と言っていた。


「えっ? えぇええっ!?」


 私は動揺しながらもお尻の声に従い、激しく擦っている手の隙をかいくぐって的確にスナップを利かせた鞭を再度お尻に打ちこむのだった。



ふぅ……


なんとかあらすじまで辿りついたし……もうなにも遠慮する必要ないな! うんっ!

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