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天声 -君を想うー  作者: 零
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旧友

就任式を前に、多くの人が鎌倉を訪れていた。その人波を歩く黒風に、聞き覚えのある声が届いた。懐かしいその名を呼ぶのは、そう多くはない。その中でも、その声には特別な思いがある。与四郎、こと、黒風は、静かに振り向いた。その目が、相手を捉えるよりも先に、身体に衝撃を感じた。

「与四郎!やっぱり与四郎だ!」

「あやね……」

「覚えててくれたんだ」

あやね、と、呼ばれた女は、抱き着いた手は離さず、顔だけ上げて、笑った。

「あやね、何して……」

少し離れたところで、今度は別の男があやねの名を呼んだ。そして、

「……お前、与四郎か?」

「早手」

そう言うと、あやねはぱっと黒風から離れた。早手は、少し複雑そうな顔で、それでも無理に作ったような笑顔で黒風を見た。

「……久しぶり」

「ああ……この町で興行か?」

黒風も少し困ったように笑う。

「そうだ。人の集まるところに行くのが定石だろ。その方が身入りが良い。祝い事であるなら尚更だ。同業者も集まってる」

「稼ぎ時か」

「そういうことだ」

「与四郎にも、混ざってもらおうよ。腕は、衰えていないんだろ?」

あやねが無邪気にそう言う。確かに、芸ができる人間が大いに越したことは無い。黒風にしても、少しでも稼げるならその方がいい。いつまでも路銀があるわけではないのだから。それに、

「お頭にも会っていきたいしな。元気か?」

「もちろん。きっとお頭も喜ぶ」

そう言うあやねに手を引かれ、黒風は歩き始めた。道中、飛来するのは、自分が一座に籍を置いていた時の想いだった。


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