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天声 -君を想うー  作者: 零
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隠した言葉

「行きましたか」

黒風が去った後、一人佇む信長に声をかけた男が居た。年の頃は信長よりも十ほど上に見える。

「可成か」

呼ばれて森可成は深々と頭下げた。

「……あれが褒美になれば良いがな。やれ、欲のない人間は扱い難い」

「御屋形様も素直じゃない」

可成の言葉に信長はふんと鼻を鳴らした。

「手柄を投げ出してまで自由を取るのは、分からぬでもない」

「珍しきことではありますな。戦に身を置くならば、誰もが大名家に取り立ててもらいたがるものを」

「功も要らぬ。士官も要らぬ。主も、と、言う事だろう。ただ、自由の身を好むと見える」

「それもまた、生き方、ですかな」

十兵衛の言葉に信長は意味ありげに口元を歪めた。

「もし、本当に奴が景虎殿を弑してきたらどうされまする」

「その時はその時。それで良かろう。己れの手間がひとつ省けるだけの事」

「成ると思われますか」

「思わぬ」

信長は即座にそう言って声高に笑った。

「会うも会えぬも運次第。運が強ければ望む者に会えよう」

「それが褒美、ですか」

「きっかけは作った。後は奴次第」

そう言って空を見上げる信長の頬を、一陣の風が撫でていった。

「風、か」

かの者は縛れぬ、と、言った。

(然り)

そのどこまでも自由な風は、果たして何を残すのか。何を追い、何を手放し、何を得るのか。

(風が、変わる)

時流という名の風も、また、変わろうとしているのを感じていた。信長はもう、うつけではいられない。あの、義元を倒した男として、扱われるだろう。それは、何より、信長が義元から、何か、を、引き継いでいくということだ。

(あの、若き風も、また)

信長は目を閉じた。

思いを馳せる。

今まで奪ってきたもの、そして、これから奪うであろうもの。そこから何を継ぎ、歩いていくのか。その先に、何が在るのか。何を、築いていくのか。

信長は、ふ、と、小さく笑った。

「生きよ」

誰へともなく、そう、呟いた。


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