樹里ちゃんの引っ越し祝い~酔いどれ軍団の乱痴気騒ぎにスチャラカOL律子が乱入~PART2
御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドで、ホラー映画の幽霊役を熱演中のママ女優でもあります。
今日は樹里と見知らぬ男と二人で、新居のご近所さんに引っ越しそばを配っています。
「見知らぬ男って何だよ!」
気の利いたモーニングジョークを言った地の文に激ギレする心が狭い不甲斐ない夫の杉下左京です。
「そうなんですか」
樹里はそれでも笑顔全開で応じました。
「それにしても、この辺りは大きな家が多くて、回るのが大変だな」
年のせいで重い荷物を持つのがつらい左京が泣き言を言いました。
「更にうるさい!」
的を射た指摘をした地の文にまたしても切れる情緒不安定の左京です。
「誰のせいだよ!」
続けて切れる左京です。切れ芸が堂に入っています。
「そんな事褒められてもちっとも嬉しくねえよ!」
口を尖らせてまるで幼稚園児のように文句を言う左京です。
見た目は大人、中身は子供のようです。
「うるせえ!」
とある名探偵と真逆な事を言われて切れる左京です。いつもより多めに切れています。
「誰のせいだよ!」
まだまだ切れる左京です。新記録に挑戦するようです。
「左京さん、次のお宅に行きますよ」
樹里が笑顔全開で告げました。
「そうなんですか」
思わず樹里の口癖で応じてしまう左京です。
「うん?」
左京は遥か前方からこちらに向かって歩いてくる人間の皮を被った妖怪に気づきました。
「誰が悪魔ベリアルだ!」
その妖怪が例えが神業だった地の文に切れました。
「あ、貴方は確か……」
樹里が言いました。するとその妖怪はニヤリとして、
「だから妖怪じゃねえよ!」
フェイントをかまして地の文に切れました。
「早く配っちまおう、樹里。干しそばだから、伸びたりしないけど」
前任者のお話を根底から覆す気が満々の左京です。
「そうなんですか」
樹里はそれでも笑顔全開です。
「俺は井川だよ!」
誰も訊いてくれないので、唐突に自己紹介した井川です。
「ところで、そばを配ってるってことは引っ越しでもしたのかい?」
井川は作り笑顔で尋ねました。
「はい、引っ越しましたよ」
樹里は笑顔全開で応じました。すると井川はガハハと大笑いをして、
「そりゃあ、良かったなあ。そうだ! 引っ越し祝いでもやるか!」
凶悪犯顏の加藤真澄警部も謝りそうな怖い顔で言いました。
「そうなんですか」
樹里はそれでも笑顔全開で、左京は引きつり全開です。
(こんな連中と関わったら、ろくな事がない。サッサと話を切り上げてしまおう)
左京は心の中でそう思いました。
「じゃあ、早速メンバーを集めるから案内してくんな」
いきなり家に来ようとする井川に仰天する左京ですが、
「いいですよ」
あっさり承諾してしまう樹里に項垂れてしまいました。
「ちょっと待ってくれ! 急に来られても困るよ」
左京は何とか二人の間に割って入り、抗議しました。
「ふうん、なら、明日でもかまわないぞ」
あっさり引き下がったように見せかけて、実は全然引いていない井川です。
さすがカツアゲのプロだと思う地の文です。
「カツアゲなんかしてねえよ!」
井川は妙に狼狽えて地の文に切れました。どうやら身に覚えがあるようです。
「そういう事じゃないよ! あんた達と関わるとろくな事がないから、来ないで欲しいんだよ!」
必死に叫ぶ左京ですが、井川はそれをガン無視して樹里と打ち合わせを継続中です。
大きく項垂れてしまう左京です。
井川は樹里に新居の場所を聞いて立ち去りました。
(今夜、逃げよう)
バカな事を画策するヘボ夫の左京です。
その頃、会社を退職し、すっかり一児の母が板についてきた律子は、愛娘のすみれの授乳を終えて寝かしつけ、ソファで寛いでいました。
「誰が尾野真千子だ!」
意味不明の事を言って突然地の文に勝手に切れる律子です。
シリーズきっての問題児である松下なぎさより手に負えないと思う地の文です。
「あ、何だ、スマホが鳴ってたのか」
テヘッと全然可愛さの欠片もない仕草をしてスマホを手に取る律子です。
「あれ? 日下部良介? 誰だっけ?」
人の名前を忘れさせたら、左京より上手の律子です。
「ああ、あのガラが悪いオジさんと一緒にいた若山富三郎に似た人ね」
ニヤッとして思い出す律子です。ちょっと違うと思う地の文です。
「いい男だったけど、ダーリンには敵わないわね。だって、ダーリンは向井理似だもん」
グフッと気持ち悪い顔で笑う律子です。そして、通話を開始しました。
「律子さん、お久しぶりです。実はですね……」
一刻も早く通話を終えたい日下部は要件を手短に話しました。
同じ事の繰り返しになるので、ナレーションベースにした地の文です。
「なるほどね。私も一度、御徒町樹里って人と会ってみたいと思っていたの。話が合いそうだから」
律子は上機嫌で応じました。
「そうなんですか」
つい樹里の口癖で応じてしまう日下部です。
「何か余興を考えるように井川部長に言われたんですけど、僕も忙しいので、律子さんにお願いできないかなあって思いまして」
妙に下手に出る日下部に全く不信感を抱かない律子は、
「まっかせなさーい」
出産をしたので多少は大きくなった胸を叩きました。
「誰が米倉涼子だ!」
更に意味不明の事を言って切れる律子に呆れてしまう地の文です。
「では、よろしくお願いしますね」
「大船に乗ったつもりでいてくれていいよ。銀座の仕事、夜勤続きで大変だろうけど、頑張ってね! 時々、差し入れでもしてあげるね!」
上機嫌になってきた律子が言うと、
「お気持ちだけ受け取らせてもらいますよ」
日下部は逃げるように通話を終え、電源を落としました。
律子からのしつこい連絡を拒むためです。
それ相応の謝礼をもらったので、律子には教えない地の文です。
「よおし、クリスマスと忘年会をまとめてやっちゃう会にしようかい、なんつって!」
南極の皇帝ペンギンも凍えそうな寒いギャグを言う律子です。
「お酒は三河屋さんにお願いして、ケーキはコンビニに予約して、その他諸々は、ダーリンにスーパーで調達してもらえば、バッチグーね!」
誰も使わないようなフレーズを得意そうに言い放ち、ウィンクをする律子です。
その瞬間、季節外れなのに飛んでいた蚊が毒気にやられて落ちました。
「さっきからずっと悪口を言われている気がするんだけど……」
急に周囲を見渡す律子にビクッとしてしまった地の文は気配を消しました。
「なあんだ、気のせいか」
お気楽が服を着て歩いているような律子は言いました。
ホッとする地の文です。
「で、で、余興は魅惑のボディの私がブレイクダンスをすれば大盛況間違いない!」
勝手に思い込む達人の律子は断言しました。
見たくもないと思う地の文です。
電源を落とした日下部は、ふと思いました。
(何故律子さんは僕が銀座で夜勤だと知っているのだろうか?)
ちょっと怖くなる日下部です。
さて、次回はどうなる事でしょうか?
あとはよろしくね、鉄人( ^ω^ )