セーミラズルシェーニャの猛威
「ちょっとやばいかも」
本当は月ちゃんに心配かけたくないけどもらしてしまった言葉だった。
こう囲まれてしまっては誰でもピンチってわかってしまう。
月ちゃんだけでも逃がさないと・・・
敵はわざと弾を外して楽しんでいる。
「お母さん・・・」
「大丈夫!全力で絶対守る!」
敵は泣きも叫びもしない親子に飽きてきたようだった。
そして、踏み殺すことで決定したらしい。
足を高く上げて踏みおろした。
はずだった。
踏みおろす足がなくなっていたが・・・
一機がバランスを失って倒れるなか、残りの二機は周囲を警戒するも、次の瞬間には、コクピットが消し飛んでいた。
倒れたDNもとどめの一撃で動かなくなった
着弾地点を元に射撃地点を見ると、山の上で狙撃特化型第二世代DN雑賀・撃が手をひらひらと振っていた。
どうやら元同僚の誰からしい。
とりあえずの安心を得て手を振り返そうとした。そんな場合じゃなかったのに
雑賀の周囲は真っ赤に染まっていた。
雑賀のパイロットも気づいたのだろう
慌てて紅い光から脱出しようと走らせたが、あまりに広い範囲の照射から逃げられない。
紅い道を追い掛けるかのように白い光が降り注ぎ、紅く染まっていた全てのものを溶かした。
スミノフ軍の最大戦力と噂される移動拠点グローズヌイ。超大型宇宙戦艦と言えばわかりやすいだろう。その最大の特徴はセーミラズルシェーニャと呼ばれる7つの巨砲。
それがキョートシティーを狙い放たれたのだった。
全てを融解させ、蒸発させるだけで飽き足らず、空気を巻き込む莫大な熱量は周囲に嵐の様相を示す。
月ちゃんを庇った背中にいくつもの瓦礫が当たり肋骨が幾つか砕けた。
「月ちゃん!石が降ってくる前に、あの階段を降りるよ」
目的だった公園のトイレ
隠されていたその階段は既に剥き出しになっていた。
今やシェルターなど意味をなさない。
けど!ここには月ちゃんを守る希望がある!