小さな戦争
「きたぞ!」
傭兵の一人が叫ぶと同時に主装備のアサルトライフルを連射した。
しかし、エス・ケラーテは既に射線からずれスラスターをさらにふかしていた。
「あたれっての!」
二機の攻撃をかわし間合をつめる。
パーシバル・クロイツェルは疑問を感じた。
「打ち返さないとテストにならないだろ・・・?」
その答えはすぐにでた。
「チェック」
エス・ケラーテのビームダガーが最初に撃った傭兵のコクピットを貫いていた。
「なっ!殺すための攻撃か」
パーシバルは即座に味方に通信をいれた。
「これはテストじゃない。敵は殺す気で来てるぞ。弾幕を張って試験区域から抜けるんだ。」
しかし、傭兵達は聞く耳を持たなかった。
「返り討ちにしてやる」
そう言ったパイロットは次の瞬間、光の中で蒸発した。
「さて、そろそろ第三世代のテストを始めるか」
スパルナはAIエスを起動させるスイッチを押した。
「エス起動。マスター確認。」
「パス確認完了。キャットタイプAIエス出現します。」
「マスター。戦争をはじめますか?」
「殲滅作戦だ。」
「了解。」
左腕が自動で稼働しアサルトライフルを撃った。
その弾はパーシバルのDNがさっきまでいたところを通過した。
「敵速度の入力を修正。」
「予測射撃適正化。」
アサルトライフルの銃口はまるで敵のDNと繋がっているかのような動きを見せた。
次の弾丸はパーシバルのDNの右手の装甲が薄い部分にあたり右腕を中破させた。
「未来予測射撃か。素直な奴だな」
「敵の攻撃能力40%の低下に成功。」
「狙うのはコクピットだ。」
「了解。」
再びアサルトライフルがパーシバルを狙う。
「甘い。予測と分かれば簡単によけれる。」
速度を落とし回避も三次元的に行うことで弾はパーシバルのDNに触れることができなかった。
「各機退避。時間を稼ぐ。」
「AI!逃げる奴からだ」
「了解。」
次の弾は逃げるDNの背中からコクピットを撃ち抜いた。
「敵コクピット破壊。生命反応なし。」
「いいぞ。次だ。」
「ターゲット捕捉。射撃開始。」
さらに攻撃をしかけるエス・ケラーテと狙われたDNの間にパーシバルは飛び込んだ。
「ペンタルフィールド緊急展開。」
DNの左手を前方に掲げると五角形のビームシールドが広がり弾を受け止めた。
テストのターゲットに装備されているようなものではない。
「あの的・・・スパイか」
「エス。あれを落とすぞ。」
「了解。左腕ソードの使用を提案。」
「黙って弾ばらまいておけ。」
「了解。」
エス・ケラーテは左腕でアサルトライフルを撃ちつつ右手からビームダガーを放ちパーシバルのDNに追い討ちをかけた。
「二機を相手にしてるようだ。ペンタルフィールドも持たない。」
パーシバルはスモーククラッカーをなげ撤退する。
定石通りスモークの中に機雷を撒くのも忘れない。
「スモーク内機雷確認。操作の一任を提案。」
「ふざけるな!俺に任せればいいんだよ。」
スラスターをさらにふかせながらスモーク内にエス・ケラーテを突撃させる。
送られてくる機雷の位置情報をもとに回避行動を続けスモークを突き抜ける。
しかし目の前にはパーシバルのDNの左手が待っていた。