勝利と敗北
「なっ!」
後方からの衝撃を受け、希望は前方に吹き飛ばされた。
レーダーで近くに敵がいないことを確認していた。
バズーカに続いて黒鷲の打ったハンドガンの弾もしっかりと回避した。
しかし、弾丸が直撃したバズーカの弾の爆発範囲内からは回避していなかった。
そして、戦闘を想定して作られていない希望にとって後方からのダメージに対する用意は無かった。
X型スラスターも大破し、空中で姿勢制御ができるような状況ではない。
黒鷲はさらに吹き飛ぶ希望に追撃を加えるべくハンドガンの狙いをつける。
「久しぶりに武人として満足する戦いであった。強敵よ感謝する」
パーンと響く発砲音
しかし、ギャラックは敵を撃破したか確認できなかった。
黒鷲のモニターは沈黙し、エンジン音も急速に失われていった。
「ギリギリの勝利ねっ!」
落下中に左手のみで機体を再び空中に跳ね上げ、右手でEMPグレネードを黒鷲に直撃させた。
最後の弾丸は、希望の肩を抉ったが止めるにいたらなかった。
しかし、この戦いは月読にとって敗北であった。
なぜなら希望にはもう宇宙を渡るためのX型スラスターがないのだから。
スミノフ軍は黒鷲の敗北に衝撃を受けたようだが、再び包囲を狭めだした。
「お母さん・・・」
「ちょっと待ってなさい。千夜さんはいつも私が困った時に助けてくれる人なの」