部活を作るのは一筋縄ではいかないらしい
なんで部活?そもそも、部活動説明会とかもまだだよね?」
「うん、部活動説明会は明日らしいね。」
「いや、だからなんで今部活の話が出てくるんだ。」
「そういうことね。実は私、新たに部活を創設しようと思ってね!」
展開が早すぎてついていけない。というか何で俺を誘った?……なんだか、色々と突っ込みたいところがあるが、一旦心を落ち着かせる。
「ごめん、一旦整理させてほしいんだけど、まず何で今日それを話したの?創設って言ってるけどさ、その部活がある可能性とかはないの?部活動説明会を聞いたあとでもよかったんじゃない?あと、何で俺?」
「いや〜、我ながら早とちりが過ぎたね。ふむ、じゃあ順を追って説明していこう。」
俺の頭の中にポワポワという効果音をさせながら塩谷が出てきて、ホワイトボードを使って説明を始める。
「さてさて〜、今回の議題は〜?ででん!矢坂くんの疑問に答えよう!です。それではいってみよー。」
Qその1.なぜ今日誘ったのか。
A.善は急げというから。
Qその2.なぜ矢坂くんを誘ったのか。
A.なんか帰宅部っぽいから。
Qその3.その部活がある可能性はないのか。
A.確実にないとは言い切れないけど0に等しい。
「以上のことから矢坂くんを誘いました!」
いや、ちょっと何言ってるか分からない。……おい、やめろ。そのしたり顔。やりきった感出すな。
「ごめん、全く分からない。てか、なんだよその帰宅
部っぽいからって。失礼極まりないぞ。」
「じゃあ部活はいるの?」
「帰宅部に入る。」
「おっけー。つまり入らないってことね!」
ぐぬぬ、なんてやりにくい相手だ。仕方ない。ここは俺の常套手段であり、強硬手段でもあるこの《《奥義》》を使うしかない。
「おれさ、実は父子家庭でさ。家事とかやんないといけないんだよね。だから、入るのはちょっと厳しいかも…。」
はい、決まった。家庭の事情を出せば誰だって深くは入れまい。普通の人間ならばの話だが。
「大丈夫だよ〜。普段はそんなに活動しない予定だし。てか、そんなに忙しいなら私手伝ってあげるよ。任せて!家事だけは得意だから。」
「いやそういう話じゃな「いいからいいから、取り敢えず話だけでも聞いてよ。」…」
どうやら話を聞かない限り終わらなそうなので、大人しく話を聞くことにする。
「私のお父さんね、私立探偵をやっているの。小さい頃からお父さんが働いてる姿を見てて、私もいつかお父さんみたいになりたいって、そう思うようになったの。あ、もちろんアニメとかでやってる殺人事件とか、犯人のトリックを解き明かしたりとかっていうのは少ないんだけどね。ほとんどは、浮気調査とか弁護士さんと協力して証拠集めとかそんな感じなんだけどね。とにかく、少しでもお父さんに、探偵に近づきたいの。だから私は部活を作って探偵になる前の練習をしたい。これが私の理由だよ。」
なんというか…ちゃんとした理由って言っていいのか?そりゃもちろん練習は大事だけどさ、練習っていう意識が良くない方向に作用して依頼失敗とかなっちゃったりしたない?
「というわけで、私はしっかり理由話したんだから矢坂くんには部活に入ってもらうからね。」
「え。」
「え、じゃないよ。この世にタダなんて存在しないんだよ。聞いたからにはしっかり対価を支払って貰わないと。」
些か、対価にしては大きすぎるような気がするんだが…。
「いやでも「でももなにもない!」…。」
言い合ったところで取り合ってもらえない事は、火を見るよりも明らかだ。
「はぁ…。わかったよ、入る。これでいいか?」
「よっしゃー!取り敢えず1人確保。」
「え、まだ一人なの?ていうか部員予定は何人いるの?」
「え、私と矢坂くんで二人だけど。」
「あれ、それって大丈夫なのか?」
「え、大丈夫ってどういうこと?」
「え、そりゃもちろん……」
「駄目だ、人数が足りない。部活動説明会でも説明があった通り、部の設立には最低3人は必要だ。」
ほら、やっぱりこうなると思った。なんで俺が知ってたかって?それは今となっては昔のことである中学時代に遡る。
あれは確か……中学1年だったかな?当時クラスメイトだった田中が生徒会に入ったことにより、俺は色々話を聞いていた。その中に
「部活は最低3人居ないと部活動としては認められないんだ。」と言っていた。
まあ、これは中学の話だが、部活という点では中学も高校もさほど変わらないだろうという予想だ。見事に的中したがな。
そんなわけで、我が部(予定)の部長である塩谷結菜は頭を抱えていた。
「う〜。なんでこんなことに…。」
「昨日言っただろ。明日の部活動説明会を聞いてからでも良いんじゃないかって。」
「だってだって。こんな事になるなんて知らなかったんだもん。」
「はあ〜。先生、部の承認には最低3人ということなので、あと1人連れてくればいいんですね?」
今話しているのは、初日は桜を見てて話を聞いていなかった、俺のクラスの担任、市貝涼香だ。
「ああ。それから顧問の件についてだが、あまり忙しくないということなので、私が担当する。」
「ほんとですか!ありがとうりょうちゃん〜。」
「先生をつけろ先生を。」
あ、りょうちゃん呼びはいいんだ。
あと一人部員を入れないといけないということで、俺たちは職員室をあとにし、西側校舎の職員室がある二階から降りた、一階の一番奥にある視聴覚室を特別に借り、会議をしていた。
塩谷が隅にあったホワイトボードを教卓の傍に持ってきてくる。俺は、ホワイトボードの前にある長机を挟んだパイプ椅子に腰を下ろす。
顔を上げれば、キリッとした表情の塩谷が重々しい口調で言う。
「これは由々しき事態です。よって、今から会議を開催して、もう一人を勧誘します。目指せ、部活設立!」
と言うと、なにやらこちらに目を向けてくる。あ、掛け声言ってほしいのね。
「おー。」
なんとも情けない声になってしまった。
「と、言うわけでまずはどうやって誘うかなんだけど、なにか案がある人ー!」
「…………。」
「なんか言えや。」
「キャラぶれてない?」
案があるかなんて言われても。……取り敢えず思いついた無難な案を口にしてみる。
「じゃあ、塩谷さんが俺を誘ったみたいに他の人も誘えば良いんじゃないか?」
「あ、確かに。それ、採用!」
そう言って、マーカーを取りホワイトボードに書き始める。随分あっさりしてるな。それでいいのか。
塩谷が書き終わり、大袈裟な声で言う。
「名付けて……誰これ構わず誘いまくれ作戦!」
「はあ。そのまんまなんだね。」
「うるさいよ!!」
というわけで、今俺たちは下駄箱の前に立って、俺の
様な雰囲気を醸し出してる人に声をかけていくが…。
「すみません。親が部活駄目って言うので。」
「ごめんなさい。私、もう弓道部入っちゃったの。」
「俺は、…ハンドスピィナァ部に…入ったぜ!。」
と、こんな感じ連敗中なのである。困ったものだ。これは一度案を練り直したほうがいいか、そんなふうに考えていると塩谷が通りかかった女子生徒に声をかける。
また、惨敗か…と先を見越して悲しみに暮れていると「ほんとにほんとに入ってくれるの?!」という塩谷の声が聞こえてくる。
「ええ、その代わりに条件があるわ。」
駆け寄った俺も彼女の話を聞く。
「その条件ってなに?」
「私の条件は2つあるわ。まず1つ目は、部活を週に5回やること。2つ目は、………部室でハムスターを飼ってほしいの。」
「「へ?」」
彼女のあまりに奇想天外な提案は、俺たちの思考能力を一瞬にして奪い去った。




