謎が謎々してる
部員になったってどういう事だよ?」
「遠足の帰りの電車、お前寝てたじゃん。その間に色々話してさ。塩谷って良いやつだな。」
茂木はニコニコしながら昨日のことを語る。あれ、お前そんなキャラだったっけ?
てか、俺はその色々の部分が聞きたいんだが…。本人たちは話す気無さそうだしなあ。あ、鹿沼は。
「ごめんなさい、私も話せないわ。」
「俺まだ何も言ってないんだが。」
まさか、心を読んだだと…。お前、…エスパーだったのか。というか、鹿沼も言えないってマジで何の話してたんだ。
「おい塩谷。」
この話の張本人である塩谷は、俺の質問に答えるかのように口元に人差し指を立てて、軽く笑みを浮かべながら言う。
「ヒ・ミ・ツ。」
いや、答えになってねーよ。
なんだかなぁ、と不服な思いでいっぱいになる。
あれ、新手のいじめかな?シクシク鼻水垂れ流しながら泣いてやる。
「さて、それでは我が部に2つ目の依頼がやってまいりました!拍手!」
パチパチパチと全員で拍手をする。
「茂木くんは初めての依頼だよ!気を張りすぎずに頑張っていこうー!」
「おー!」
あの、君そんな喋るキャラじゃなかったよね。なんか、キャラぶれる人多くない?
ンンッ。と軽く咳払いをして塩谷は依頼を告げる。
「今回の依頼は、図書室で消える本の謎、です!」
「おー。」やら「んー。」など反応は様々だ。
図書室で消える本の謎?なんだか、また厄介事の匂いがする。
詳しい事情を聞かないことには何もわからないので、俺達は図書室へ足を運んだ。
俺達の部室がある西校舎の三階に位置する図書室。人気のない廊下は、不気味さが漂っている。
俺達は図書室に入ってすぐ右手にある司書室へ向かう。司書さんもこちらに気づいて近寄ってくる。どうやら塩谷が既に話は通していたみたいだ。
俺達は司書室で話を聞くことになった。司書さんは50代くらいの女性で、丸い眼鏡をかけている。おっとりとした雰囲気は、図書室によく合っていた。
「それで、図書室の本が消えるってどういうことですか?」
塩谷が話を切り出すと司書さんは困ったように眉を下げる。
「それがねぇ、私にもよくわからないんだけど本が消えてるのよ。図書委員の子が定期的に本棚を点検するんだけど、貸出ししてない本が盗まれるのよ。」
「なるほど。ちなみに今は何冊盗まれてるんですか?」
「今は全部で6冊ね。」
6冊も抜かれていたら、誰がしているかくらいわかりそうなものだけどな。少なくとも目星をつけることくらいはできるだろう。
「対策は何かしていますか?図書室を利用する人は、多いわけでは無いと思うのでそれっぽい人とかいたりしませんか?」
「私と図書委員で見回りをしているけど、それらしき人は今のところいないわね。」
ふむ、どうするべきか。とりあえず手がかりがないことには始まらないな。さて、ここは一肌脱ぐとしますか。
「その盗まれた本の名前を教えて貰ってもいいですか?」
うまく聞けた!……なんだか心が小学生に回帰した気分だ。
「ええ。えーっと、確か………。」
盗まれた本はまとめるとこんな感じだ。
1.クスノキの番人
2.人間失格
3.魔女の旅々
4.オイディプス王
5.江戸川乱歩傑作選
6.いなくなれ、群青
だ。
いなくなれ、群青っていいよね。
ンンッ。気を取り直して。流石に、これだけだと分からないな。
「盗まれた日付とか分かりますか?」
「流石に分からないわねー。最初に気付いた時には、4冊が無かったわ。」
これさ、最悪警察コースだわ。学校の備品を盗むのも立派な犯罪なのです。
「警察に任せるという事は考えてますか?」
俺が尋ねると、司書さんは下げた眉を一段と下げて言う。
「…できるだけ大事にはしたくないのよ。」
そうか…。困った困った。警察に任せるのが一番楽だし、確実なんだが…。
「うーん。流石にこれだけだと犯人特定は難しいねー。」
頭を押さえて、くねくねする塩谷。
「そうね。犯人の目星もついてないとなると、私たちも見回りに加わるくらいしか対策がないわ。」
顎の下に手を当てて考える鹿沼。
2人の様子を見て、茂木は言う。
「だな。今日は一旦戻って対策を立てたほうがよくないか?」
「そうだな。」
茂木の言う通り、一度落ち着いて情報を整理したほうがいいだろう。
俺達は図書室をあとにし、部室へと戻る。だが、いくら考えてもいい解決策が出ることはなかった。
次に犯人がアクションを起こした時に、何かがわかる。
探偵というわけでもないが、俺の勘がそう言っていた。
次の日、司書さんから連絡が入った。
―――――盗まれた本のうち、一冊が見つかったと。




