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【BL】勇者推しの俺が何故か敵対する魔王に転生してました。【全年齢版】  作者: のがみさんちのはろさん
一章

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第33話 「今度こそ負けない決意」



「おっす」

「え、ええ!? ま、魔王様?」


 俺は毎日城にいる魔族たちに声をかけることを習慣にし始めた。

 最初はみんな驚いていたし、複雑そうな顔をする奴もいた。だけど継続は力なり、続けていくうちに今の俺もちゃんと魔王として見てもらえるようになっていった。



ーーーー

ーー


「メア、おはよう」

「おはようございます、魔王様。そっか、今は朝なのね」

「おう。魔王城にもそろそろ時計欲しいなぁ。ちゃんと朝起きて夜寝たい」

「あら。魔王様、たまに人間みたいなことを仰るわね」

「違うよ、メア。俺は俺らしいことを言ってるだけだよ」

「ふふ、そうね。朝日で目を覚ますのも悪くないわ」


 うん、こうして城を見回ることでみんなと会話できていいな。

 魔王として充実した毎日を送れてる気がする。もっと早くやってればよかったな。そしたら勇者に振り回されることもなかったかもしれないのに。


 そういえば、あれから数日経つけど約束の場所にエルが来る気配がない。アイツ、今何してるんだろう。

 次が最後って言った手前、終わりにするのが嫌で行くのを渋ってんのかな。ちょっと有り得そう。まぁアイツがどうしようと俺には関係ないんだけどさ。少し寂しいくらいで、別に。


「魔王様ー、また手合わせしてくださいよー」

「訓練室直してからなー」

「魔王様、この前ダンジョンに新しいトラップ作ったんですよー」

「へぇ、あとで教えてくれよ」


 道を歩いてるだけでみんなが声をかけてくれるようになった。

 みんなとても友好的で、クラッドが築いた信頼を壊さないで済みそうで一安心だな。


「魔王様、今よろしいですか?」

「リド。何かあった?」

「ええ。この前、魔王様が見てきた小国同士の戦についてですが」

「ああ、あれか。終わったの?」

「いえ、まだ続いてますね。そろそろどちらの国も兵士の数が尽きて共倒れにでもなるんじゃないでしょうか」

「もうやめればいいのに」

「そうはいかないでしょう。一度始めた戦が結果も出ずに終わるなんてことはないでしょうし」


 俺には関係ないと思って見に行く気も失せたけど、ちょっと覗きに行こうかな。

 割と本気で興味ないんだけどさ。一応結果くらいは見ておきたいし。


「今度、ちょっと覗いてくるけどいいか?」

「ええ、構いませんよ」

「それよりさ……」

「はい?」


 勇者は今どうしてるのか聞こうかなって思ったけど、なんかリドには言いにくいな。

 この間、軽く注意されたし。あまり人間のことに気を回すのも良くないとは思うし。

 でも魔王として勇者の動向を気にするのはおかしくないよな。敵の動きも知っておかないと。いつ魔王城に攻めてくるか分かんないし。


「ゆ、勇者は今どうしてるんだ?」

「勇者ですか? それがあっちこっちに移動しているようで現状を把握できていないんですよ。とりあえず、まだ魔王城に来れるレベルではないと聞いてます」

「そうなのか? リドでも把握できないって、何してんだ?」

「色んな国を回って魔物退治をしているとは聞いてます。おかげでこっちも大忙しですよ。全く、仲間も連れずによくあそこまで動けるものです」


 色んな国をって、もう拠点を移したのか?

 じゃあなんで約束の場所に来ないんだ。マジで行くの渋ってるのか? 次会ったらもう会えないからって。なんだそれ、ガキかよ。

 アイツがあの場所に来ない限り、俺もいかないから別にどうでもいいっちゃいいんだけど、それはそれでモヤモヤするな。


「……俺、勇者の考えが良く分かんないや」

「勇者の?」

「仲間も作らないし、ただ人間の頼みを聞いてばっかりでさ。それで結果強くもなってんだろうけど、ただの便利な奴にしかなってないじゃん」

「そうですね。歴代の勇者の中でも特殊ですね、あれは」

「歴代……? アイツの前の勇者を知ってるのか?」


 そういえば気にしたことなかったな。

 魔王、クラッドは100年以上生きてる。その間に勇者も生まれてきておかしくない。アイツが世界初の勇者ってことはないんだろうし。それだったら光の属性を持ったものが勇者になる、なんて言い伝えも存在しないんだから。

 となると、魔王にも先代がいたはず。そいつは勇者に倒されているのか。


「私は魔王様よりも少し長生きしてますからね。先代の魔王様、そして勇者の話を耳にしたことがあります。残念ながらこの目で見たことはなのですが」

「へぇ……俺の前の魔王は、やっぱり……」

「ええ。勇者の力で倒されてしまいました。その後は悲惨なものでしたよ。魔物は人間達に淘汰されようとして、滅亡の危機でした。そこで立ち上がったのが、のちの魔王となるひとりの魔物、クラッド・オードエインドなのです」


 そっと、リドの手が俺の頭を撫でた。

 エルに撫でられたときとは違う。まるで子供をあやすような優しい手つきだった。


「勇者が人間にとっての希望なように、魔王様は我々の希望なんですよ」

「俺が、みんなの……」

「ええ」


 そうだ。俺は、俺たちは負けない。絶対に、勇者を倒してみせる。

 ゲームじゃ魔王は絶対に勝てないけど、この世界では違う。


 俺が世界を変えるんだ。



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