第30話 「熱に魘される」
エルに組み敷かれ、俺は抵抗しようにも出来ずにされるがままだった。
手段を選ばなければエルを退けることは出来る。だけど、そうなったら魔王の魔力に気付かれてしまうかもしれない。
俺の魔力を感じ取ったリドや他の魔族たちがこの状況に気付いたら、この村なんて簡単に消してしまうかもしれない。
ズルい。俺が何も出来ないと分かってて、お前は無理やり俺を襲うというのか。そんな奴だったなんて、最低だ。
「や、めろ……っ!」
「やめない……」
エルの唇が、俺の首筋に這う。
舌の生温かい感触に体が震える。
インナーの裾を捲り上げられ、露にされる胸元。腰を撫でていたエルの手が、ゆっくりと上へと動く。
膨らみもない幼い少年の胸なんか触って何が楽しいんだ。
小さな胸の突起を、エルの指先が弾くように弄んでくる。
「っ、ん!」
「魔物でも、体は人間と変わらないんだね。安心した」
「も、やめ……」
「ダメ。俺は、君を離したくない」
意味が分からない。
俺の小さな抵抗も空しく、首筋に会ったエルの顔は下へ下へと下がっていき、剝き出しにされた胸へと唇を重ねていく。
当たり前だけど、誰かに触れられたこともない場所。男の胸なんてぺったこんこで何もないのに、なんでコイツは自然にそういうことが出来るんだ。
「う、ううっ……」
「可愛い……イオリ……」
可愛いもんかよ。くすぐったいのに、それだけじゃない変な感覚で頭がおかしくなりそうになる。
エルは俺の脇腹や腰、腹を舐めていく。マーキングでもしたいのかってくらい、執拗に。隙間を埋めるように舌を這わせていく。
「う、ぅん! も、やだっ……くすぐったい、から!」
「イオリの体は、そう言ってないよ」
「ひぅっ!」
エルの指先が、俺の胸の突起をキュッと摘んだ。痛い、痛いけど、背中がぞわっとした。このゾクゾクが俺の下腹部を刺激していく。
なんで。嫌なはずなのに。こんなの、最低なのに。俺の体は反応してる。
「気持ちいい?」
「……っちく、ない!!」
「強情だね……」
エルはクスクス笑って、胸に舌を這わせた。
くるくると円を描くように動く舌先に、俺の体はビクビク小刻みに震えてる。全身の神経がそこに集まっているようだ。
「やっ、あっ、あ!」
「反応、変わった。ここ、良いんだ?」
俺の反応を楽しむように、エルはそこばかりしつこく愛撫してくる。
体が。頭の中が、変になりそう。
胸に与えられる小さな刺激がどんどん体の奥に溜まって、爆発しそうになる。
「や、ぁあ……える、もう、やだぁ」
「その顔で嫌って言われても、説得力ないね」
「ひぅ、んッ! や、あ、あっ! え、える……やだ、こわい!」
「大丈夫だよ。怖がらないで……そのまま、俺に身を預けて」
無理言うな。もう頭ん中がメチャクチャで何も考えられない。
俺、前世でも性欲そんななかったから自分でシたりすることもあんまりなかったし。てゆうか自分でするのとは全然違うし、これが気持ちいいってことなのかも分からない。次から次へと刺激が与えられて、自分の体じゃないみたいにずっとビクビクしてる。
「あまり声出すと、他の部屋に聞こえちゃうかもしれないよ」
「じゃ、あ、やめろ、よ!」
「無理」
胸への愛撫を続けたまま、エルの手が俺のズボンの中に侵入してきた。
そのまま俺のペラペラな抵抗も拒絶も受け入れられることはなく、エルに抱かれてしまった。
俺、魔王なのに、男なのに、エルの甘い言葉に簡単に骨抜きになって女みたいに喘いで、マジで情けない。
ただ、メチャクチャ気持ちよかった。なんて、本人を前にして絶対に言わないけど。
「……イオリ、平気?」
「ん、なわけ、あるか……」
「ごめんね。でも、俺は後悔してないよ」
「……そう、かよ」
「もう女の子に声掛けないでね」
やっぱりそれかよ。
別にナンパしたわけでもないのに、俺コイツに襲われたのかよ。
勇者の嫉妬、マジ怖い。
「……次の依頼を終えたら、本当に最後だ」
「そうか……」
「約束、だからね」
「ああ。お前がそう言ったんだ。守れよ」
それから暫く、エルは動かなかった。
俺たちは互いの顔も見えないまま抱き合った。
互いの熱だけを感じながら、いつか来る別れを惜しむ。




