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異世界で朝ご飯亭の広報を担当します!  作者: 海坂依里
8食目 朝ご飯亭の広報担当は『海苔バタートースト』で笑顔を取り戻す
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第3話「異世界での食事情。私は恵まれていたみたいです」

「でも、次回も三人でお出かけできますね」

「前向きなのはいいが、店にある道具で足りるのか?」

「急ぎの物は特にないので」


 異世界生活は始まったばかり。

 前世で見覚えのある画材はもちろん、異世界ならではの画材と出会うのを今後の楽しみとしてとっておきたいと思う。


「じゃあ、最後はアルカさんの書物を見に……」

「俺なら大丈夫だよ」

「え?」


 異世界での困りごとはギルドではなく、お金持ちの方に解決を依頼するのが1番かもしれない。


「魔法配送便を利用して、ディナの店に届くようになってるから」


 私の発想はあながち間違っていないらしく、アルカさんはにっこりと微笑んで頼りがいのある安心感を与えてくれた。


「ってことで、夕飯を食べにディナの店に……」

「そんなに焦らなくてもいいんじゃないか」

「ディナ?」


 ディナさんが、なんだか普段見ることのできない含みのある表情を浮かべる。


「ミリが異世界に来たっていうのが本当なら、異世界の食事を知っておいた方がいいだろ」

「ちょっ……ダメっ! それだけはダメ! 俺、絶対に反対だからね!」


 何に対してツッコんでいいのか私の脳が理解できるまでの間、ディナさんとアルカさんは会話を続けていく。


「ミリには、接客を手伝ってもらってるんだからな」

「だったら尚更、優しくして!」


 二人が言葉をまとめる時間を与えてくれているのに、私はなんて言葉を間に挟んだらいいのか分からない。


「あとで、好きなの作ってやるから」

「その言葉には惹かれるものがあるけど!」


 アルカさんは何かに対して必死に抵抗を示すけれど、この場で権限を持っているのはディナさんの方らしい。


「アルカさん、私、ほかのお店のご飯を食べるのが初めてなので楽しみですよ」

「その言葉、絶対に後悔するからダメ!」

「ミリの同意も得たんだから、何も問題はないだろ」

「ディナっ!」


 流れに乗っかることを決めた私が案内されたのは、ごくごく普通の外観と内装の飲食店。

 ディナさんが厳選してくれたお店というわけではなさそうで、ディナさんの視界に真っ先に目に入った店に入ったという感じだけど……。


「お待たせしました」

「ありがとうございます」


 あとでディナさんがお夕飯を作ってくれるらしく、このお店でお腹いっぱいになることは避けたい。そう思って、三人で分けられる食べ物を探した結果。

 店員さんが持ってきてくれたのは、前世と比べて特に変わったところが見つからないサンドウィッチ。


「…………」


 挟んである具材がモンスターのお肉だったりするとは思うけど、見た目はなんら前世と変わらないたまごサンドやハムサンド。

 トマトやレタス、チーズみたいな食材も挟んであるごく普通のサンドウィッチ。


「あの……」

「ん?」

「ほら、ミリちゃんはディナの食事以外食べたことないでしょ? 遠慮なく召し上がれっ」


 そのサンドウィッチが乗せられた皿は、気持ち私が座っている席の方に寄せられているのは気のせいなのかそうでないのか。


「さすがに、私一人で食べきれる量ではないのですが……」


 ディナさんお手製の夕飯が控えているため、注文した量は少なめ。

 とは言っても、目の前のサンドウィッチを一人で完食してしまったら、ディナさんのお夕飯を口にすることはできない。


「食品ロスって言葉、知ってます?」


 厚焼きたまごのサンドウィッチではなく、ゆでたまごを潰してマヨネーズで和えた見た目をしているサンドイッチを手にする。


「世の中には、まだ食べられるのに廃棄されてしまう食材や食品で溢れ返っているんですよ」


 異世界の事情は知りません。

 前世の事情を饒舌に語ることで、アルカさんとディナさんは顔を見合わせた。

 どうやら食品ロス問題は異世界でも通じるらしく、二人はまるで意を決したときのように気合いを入れてサンドウィッチへと手を伸ばす。

 その際に、随分と渋々な表情をされていたことを私は忘れない。


「いただきます」

「いただきます……」


 双子のように声を揃えて、食事をいただくときの挨拶をする二人。

 二人が何を結託しているのか確かめるためにも、私は手にしていたたまごサンドを口へと運ぶ。


「っ」


 そして私だけを犠牲にしないためにも、二人が続いてサンドウィッチを一口だけ口に運ぶ。


「あー……」

「…………」


 二人の態度が怪しかった理由が、ようやく理解できた。


「不味っ……」

「ミリちゃん、シーっ!」


 思わず大きな声を出してしまいそうになったほど、口に含んだたまごサンドは想像していた味とまったく違っていた。

 アルカさんは自分の唇に人差し指を持っていき、私に口を閉ざすように指示してくる。


「不味いです、美味しくないです、なんなんですか!?」


 ここからは一応、お店の人に配慮して小声で喋っています。


「サンレードの街以外で、食事をしちゃダメだよっていうミリちゃんへの忠告です……」

「はい?」


 なんらかのモンスターのたまごを茹でて、マヨネーズを混ぜ合わせただけのはず。

 それなのに、どうしてこんなにも人を愕然とさせることができるのか。

 できることなら、この場にシェフを呼んでみたかった。


「悪かったって」

「ごめんね! 本当にごめん!」


 基本的に、異世界での食事は美味しくない。

 両親の作る食事の味の好んで育った子どもたちは、外食文化を発展させてこなかった。

 そのせいもあって、異世界での外食産業は発展途上。


「口の中の変な味がまだ広がってます……」


 サンレードは、外で食べる美味しい食事を目指して発展してきた街。

 どのお店に入ってもハズレがないということは競争率が高いということでもあるけど、それはそれで今後の展開が面白そう。

 そんな展望が生まれてくるくらい、私はディナさんのお店の未来を考えられるようになった。

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