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ある教会にて

今はもう使われていないとある教会。そこに一組の男女がいた。楽しそうに談笑する 2 人だったが、唐突に男が立ち上がる。

「どうしたのー?」

「あー、あれ壊れたみたいです。今強く感じました」

「何がビビッときちゃったのー?」

「『人魔呪本(モンスターノート)』です」

女は男に驚きながら問う。

「それってぇ、人間にディジヤの遣いのふりしてあげたっていうあれー?」

「そう、それです」

男はにこやかに答えると、女はさらに驚きの声をあげる。

「えー?あれってちょー貴重なものでしょ?壊れちゃってよかったのー?」

「いやいや、あれはただの模本ですから、壊れたらもっと慌ててしまいます。原本はここにありますよ」

男が背広から本を取り出す。

「もーサリエルちゃんたらー」

それを見て女は笑いながら男、サリエルの肩をぽんぽんと軽く叩く。

「はははは、驚かせましたね、すみませんナサリーさん」

サリエルは本を背広にしまい、遥か地平の彼方、お粗末な猿芝居に騙されるバカな人間がいた方向をちらりと見る。

「もう行っちゃうのー?」

「はい、ちょっとした用事を思い出しましてね」

「サリエルちゃんが用事!?何それ知りたーい!」

目を輝かせ、ナサリーは彼に背中から抱きつく。彼女の声と体で誘惑されたならば、普通の男ならばすぐにその秘密を話すところだ。しかし、サリエルは態度を崩さずナサリーを背中から下ろし優しく言う。

「秘密ですよ。面白いことは秘密にしておいた方がそれが何かわかった時もぉっと楽しくなるでしょう?」

「むー、何するか知ってた方がもっと楽しいよー!というか、サリエルちゃんあたしの魅了(チャーム)効かないのずーるーいー!」

「はははっ、そんなこと言ってるうちはまだまだ効きませんよ」

「次は絶対魅了(骨抜きに)してあげるんだから!」

ぷんすか!というような擬音が聞こえてきそうな彼女の姿に少し微笑みながら、サリエルは背中にある真っ黒の、皮膜のない蝙蝠の羽のような不気味で歪な翼を広げ、その場を後にした。

「くくくっ…しかし、模本といえどもあれを使った人間を倒した人間が現れ、さらに向かう先も一緒とは、面白いことになりそうですねぇ…」

彼は自分の欲を満たしてくれそうな人間が現れたことに、全身が湧き立つような感覚に陥るのだった。

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