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愛の定義は人それぞれ

あれは僕が22歳のときの話。

その日はお盆休みの前日だった。

僕の心臓はいつもよりドクドク活発に働いていた。

なぜなら、今日の夜に彼女とデートをするからだ。

きっとそんな楽しみのおかげか、この日はいつもより

ずっと早く仕事にケリをつけることができた。

いつもは定時を過ぎても帰れないくらいのブラックな

会社なのだが、この日は久々に定時で帰れた。

きっとそれだけ早く彼女に会いたい。

彼女と時間を共にしたい、ってことなんだろう。

そして、きっとこの力は愛の力に違いないんだ。

なんて思いながらタイムカードを処理して

車に乗って、彼女のもとへと急いだ。


本当は高速道路を使った方が早いのだが

お盆休み前日ということや、同じく定時帰りの

会社員たちで、道はとても混んでいた。

高速道路の入口さえとても混んでいる。

こっちは早く愛する人に会いたいのに、、。

という怒りの気持ちを抑え、ハンドルを切り

僕は、下道で向かおうと心に決めた。

なぜか、下道の方が空いていた。

きっとお盆休みを無駄にしたくない家族たちが

前日の夜から目的地に高速道路を使い向かっている。

ということだろう、だから下道の方が空いてたんだ。

空いている、そして早く彼女に会いたい。

そんな気持ちが揃うと、スピードを出したくなる。

だがここの道路は60キロ走行。

さすがに、オーバーして警察に捕まった方が

彼女に会う時間が遅くなってしまう、それは嫌だ。

ごめんな、愛するキミよ。本当は180キロくらい

出してキミのもとに向かってあげたいさ。

と思いながら、60キロで走っていた。

高速道路を使えば30分で着いていたのだが

案の定、空いているといえども下道だったので

1時間半もかかってしまった。


ようやく彼女が住むマンションまでやってきた。

なぜだろう、彼女が住んでいるっていうだけで

そのマンション自体から、温もりを感じる。

と思い、彼女が鍵を開けてくれて僕は入った。

入って早々、僕は彼女と熱い口付けを交わした。

「やあ、会いたかったよミユ。」

彼女は笑顔を浮かべ

「私もよ、リク」

と、言った。

そのまま彼女のぬくもりの中に

僕は溶けてしまいそうだった。

「今日のデート、どこに行きたい?」

と僕が聞くと彼女はすぐにこう返した。

「私ね、夜遅くまでやってるデパートに行きたい。」

つまり今夜はショッピングってわけか。

僕は雑貨や家具などはどうでもよかった。

今すぐキミをお買い上げしたかった。

なんてひとりで思いながらニヤニヤしてると彼女が

「もうリク!変な妄想してないで!早く行くよ!」

と、僕に少し笑いながら言った。

付き合って2年だけあって、妄想なんて

すぐにお見通しになってしまった。

「あぁ!ごめん!行こっか!」

僕も少し笑いながらそう言って、車へ向かった。


彼女のマンションからそのデパートまでは

30分程度で着く、意外と近いのだ。

車内ではお互いの好きな曲を交互にかけるという

お決まりのルールが存在していた。

今夜もそのルールで目的地まで向かった。

デパートに着くと、彼女はまず服屋へ入った。

正直、キミはなんでも似合うのにな。

なんて思いながら無邪気に服を選んでいる

彼女を見ていた、とても幸せな時間であった。

彼女は僕にこう言った。

「ねぇ、この緑のTシャツ、お揃いにしない?」

と彼女から提案された。

「いいね!シンプルな柄で!しようしよう!」

最愛な人の提案ならもちろん、即決であった。

その後、雑貨や食料品、家具、電気屋、ゲーセンなど

デパートをほとんど1周した。


時計は夜の20時をさしていた。

「ねぇミユ、お腹空かないか?」

「さすがはリク!ちょうど腹ペコになったわ!」

「じゃあ、あそこに行ってみよう!」

そのデパートには左右に飲食店が立ち並ぶ

(飲食店タウン)という場所があった。

2人手を繋ぎ、肩を寄せ合い、歩いて行った。

「今日の気分は何かな?」

と僕が尋ねると彼女は

「たまにはハンバーグなんかどうかしら?」

と僕を見つめ、優しく微笑みながら言った。

今のキミの笑顔はきっと、肉汁より熱いだろう。

なんてまた変なことを思いながら

「OK!じゃあハンバーグで決まり!」

と返し、2人はハンバーグ屋に入っていった。


店内は思ったより空いており、早く座れた。

2人とも、とてもお腹が空いていたので

座ってすぐにメニューに見入っていた。

「僕、決まったよ。ミユは?」

「私も決まった!じゃ呼び出しボタン押すね。」

ピンポーン。

2人の今日の夕食を知らせる幸せな音色が

店内に響き渡った。

「はい、お待たせいたしました。」

「僕は、ジューシーハンバーグの350gで。」

「私は、ジューシーハンバーグの200gを。」

「はい、かしこまりました。少々お待ちください。」

やはり、長く付き合っていると

食の好みも似てくるものだ。


僕は料理が届くまで、今日1日を振り返っていた。

ふと、愛について考えみた。

愛とは一体なんなんだろうか。

実際に形もわからないし、愛というものを

見ようとしても無理だし、触れもできないし

愛は、とにかく物理的に見ることができない

とても、儚くて暖かくて切ないものではある。

だけど、とにかく人を愛したり人に愛されたりって

とても難しいのには間違いはきっとない。

結論から言えば、愛は見えないから難しい。

じゃあもし仮に愛が見えてしまったら。。

これじゃまだ愛が足りないとか

これだと愛しすぎか、愛を減らさなきゃとか

愛が見えたら僕はより難しくなってしまうと思う。

いっそのこと、愛の取扱説明書でもあればな。


なんて思ってぼーっとしていた。

僕は、彼女に突然こう語った。

「愛の定義ってさ、僕が思うには辞書を使ったりインターネットで調べたりしても、よくわからないものだと思うんだよね。これをすれば愛、あれをすれば愛とか、逆にあまりしないようにするのを愛と捉えてる人もいるだろうし、愛の定義ってその人によって違うんだろうね。」

と、語ると彼女はうなずきながら

「おー、さすがリク、深いねぇ。」

と、返してくれた。

「けどさ、愛ってとても面白いよね。だってその人その人で愛の定義が違うってことはさ、1億人いたら1億個の愛の定義があるってことでしょ?これだから愛って難しいけど楽しいんだよなぁ。」

って僕が言うと彼女は笑った。

それもそうか、楽しいデート中に急に

愛について語り出したら滑稽だものね。

僕も彼女に続いて笑った。

その後は他愛もない話をしながらハンバーグを食べ

彼女をマンションまで送り届けた。

僕はひとり寂しく深夜の街へと消えていった。


という日記を部屋を掃除していたら見つけたので

今年30になった俺は妻と読み返していた。

所々2人で声を上げて笑った。

今日の夜、あの時ぶりにあのハンバーグ屋へ行って

愛を語ろうと思いながら、部屋の掃除を続けた。





























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― 新着の感想 ―
[良い点] 短編ですごく読みやすいが内容がすごい詰まってして読んでいて面白かったです! 次も楽しみにしてます!
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