プロローグ『廃れた新人刑事』
「いやーマジ疲れた」
「そりゃそうっしょ、警察官なんだから」
「この前さ、殺人事件だ! って臨場したのに、直ぐに自殺って結論になっちゃってさ」
「えーカン君の出番お預けにされちゃったんだ」
「もっとでかい事件が起きてくれないと全然モチベ上がんねえ、ちっちゃい事件ばっか解決しててもさ、組織の一人としてしか見てくれねえんだよ。俺の天才頭脳を発揮する場を作れってんだよな」
「私が、世界を震撼させる凶悪な連続殺人を起こそうか?」
「あ、頼むわ、死刑になっても良ければ」
「冗談よ、殺す勇気は出ない」
「なんだよ、お前に手錠かけたかったなあ」
「……もう、何よそれ、もしかしてそういう趣味?」
「どういう趣味だよ、そう言って来るって事は、お前こそ、そういう趣味なんじゃないのか?」
「変態! そういう考えになるカン君こそ……」
ドンドンドンドンドンドンドン!
「……びっくりしたまただよ」
「心霊現象?」
「ほんとさ、最近多いんだよ。きっとこれでさ、外を見ても誰もいないんだよ」
「怖くないの?」
「いやまあ、突然来るからそれは怖いけど。俺誰にでもフレンドリーに接する事出来るからさ」
「だから幽霊とも仲良くなれちゃうの? やばいね」
「いつか実体化して現れたら、一緒に飲み明かしたいぜ」
「幸せ者だねえ」
パソコン? とか言う機械に向かってずっと喋っている。考えられない。これ程までに裏で廃れた生活を送っている刑事を、私は知らなかった。確かに息抜きは必要だ。しかしこの刑事はあまりにも度を超え過ぎている。下手をしたら、警察官であるにもかかわらず、犯罪に走りかねない。こんな奴に、刑事をさせるわけにはいかない。明日だ。明日決行する。