祝福と雪の季節に
今はアドベントの時間 祝福と雪の季節の時間
間もなくクリスマス・イヴが訪れる 市場が開かれ
彼が賑やかで美しい街角で歌っている時だった。
一人の貴族の老人が 彼を潤んだ瞳で見ていた
歌が終わり そっと邪魔にならぬように老人がやって来る
「貴方だ 間違いない
長く忘れ果てていたが 私は思い出した あの故郷のアッコン」
「最後のイエルサレム王国 六十年以上前に滅び去った国
アッカ、アッコンのイエルサレム王国」
「アッカ、あの熱い大地の王国で 貴方は幼い私と妹を救い
両親の下に連れて行ってくれた」
涙声で老人は 吟遊詩人の少年にそう告げたのだった
「……・」吟遊詩人の少年シオン
彼は驚いたように しばし目をパチパチとさせていたが
ゆっくりと笑みを浮かべる 微笑するのだった
「随分、長い年月が経ったね エドモンド ふふっ」吟遊詩人の少年シオン
「貴方に私はずっと御礼が言いたかった」貴族の老人はそう言った
長い年月に再会した幼い子供だった彼を優しく見つめて
懐かしさに吟遊詩人の少年シオンは 微笑み
老人となった者の手に頭をいたわるように優しく撫でた。
FIN
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