第22話 見えぬ道へ
おやっさん達が街を暴れまわっていたが、マザーセントラルの異常警報が著しくマザーセントラルビルの前には警察だけじゃなく軍隊まで招集され、入り口の前で隊列を組みマシンガンAKを構えている。
ヘリの一台飛んでおりマザーセントラルは完全包囲されていた。
そこに私達が降り立つ。
「そこまでだ。腕を裏に回し膝を地面につけろ」
部隊長が大きな声で私達に言った。
「リィナいこう」
私はそんなの構わず母のバイクに乗り込みシートにリィナを下ろす。
「これは脅しじゃないぞ、地面にひれ伏せ」
それでも忠告を聞かずにキーのエンジンを回すと
「やつを射殺する」
「待ってくれ、話が違うじゃないか、彼女には危害は加えないって」
サイジョウさんが隊長ににくって掛かった。軍に助けを求めたのはサイジョウさんだったからだ。
「どけろ、国家反逆罪で貴様も撃ち殺すぞ」
サイジョウは無力にも凪払われてしまった。
「撃ち方よーい、撃て!!」
無数の銃声音が重なりそれは怒号のうなりと化す。
けどそんな凶暴な牙も今の私なら片手で無力化出来る。
銃弾が透明な壁に張り付いたかのように一定距離で動きを止めてゆく。
やがてそれは黒い壁となり、軍隊の視線から私達が見えなくなった。
「撃ち方止め、一体何が起きてるというのだ」
この異常事態に隊長は動揺の色を隠せない。
「私達の邪魔をしないで」
そして私が前にかざした掌を前に押しやると、銃弾が一斉に動き出し軍隊、警察を襲ってゆく。
物理法則を無視した動きで一人残さず戦闘不能にしていった。
銃弾は全て急所を外し脚に着弾させてある、その銃弾はサイジョウさんの脚にも当たった。
「あーー」
またしても情けない声で叫ぶ。
軍隊達が全滅すると、私はバイクを走らせ橋を渡り切ると、その先で彼女に会った。
フタバだ。
バイクを停止させる。
「フタバ?」
「クレアあなたなのね?私あなたが心配で……」
ヘルメットをしてないため、フタバにも私だと分かった。
「フタバも……私を止める?」
数秒黙ったあとに、フタバは私の問いかけに笑顔で答えたが、その目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「ううん、クレアがしたいようにしたらいいよ」
「そっか」
私は満面の笑顔をするフタバに控えめの笑顔で返した。
私はフタバのようにみんなに愛想を振りまくことは出来ない。そんな気を配ることが出来るフタバ。私はそのフタバの涙の理由も言葉なくともしっかり伝わってきた。
フタバには分かってたんだ、私との別れが訪れることを。それが悲しくて、でもその感情を押し殺してでも私を笑顔で送りして出してあげたかったんだと思う。私が後ろを振り向かないで前に進むために。
「クレア、私達もう会えないのかな?」
私はバイクを押してフタバの隣に行くと、頭にポンと手を乗せ言った。
「フタバ、外の世界で先に待ってる。君は強い女の子だ。
きっと一人でもうまくいく。自分を信じて恐れずに前に進むんだ。親友の私が言うんだ必ず出来るよ」
そう言い残し、私はアクセルを回しその場を後にした。
「クレア!?」
フタバが振り返り私の名前を叫んだ。けれどバイクは既に闇の中へ消え去ってしまっていた。
「この先」
リィナが指を差し世界の出口を案内する。
そして辿りついた先には道はなかった。ただ波のない海が広がってるだけだ。
ブレーキを掛け「リィナ本当にここ?」
「この先だよ疑ってる?」
「ううん、疑ってなんかないよ。リィナがいうんだから間違いない。
でもちょっと怖いだけさ」
「クレアの怖がり」
「よし行くよ、リィナしっかり掴まってな」
リィナが私のお腹に回した手を強め、私はアクセル全開で道なき道を進み出した。
水の道は水しぶき1つあげずに渡ることが出来た。
「リィナやったよ、これなら私達外の世界に出れる」
「だから言ったじゃない」
「あー最高に気持ちいいやー」
その時、ガッコンっと背後がら不穏な音が聞こえてきた。
何事かと思い後ろを振り返ると、そこにはマザーセントラルから黒い渦が巻き起こり、大きな細長い円を描き、どんどんその面積を拡大してゆく。
そして胴に手足が生えるかのように黒い影伸び、最後に頭から目が2つ生み出された。
「ははははは、そうだはじめからお前に出来て私に出来ないはずがなかったのだ。
どうだこの姿、世界の神に相応しいだろ。今やこの私こそがマザーの器となった」
黒く濁った声だがまたして親父の声だった。
「親父どこまでもしつこい、リィナこのまま振り切るよ」
私は力を使いメーターを振り切り、最前速でバイクを疾走らせる。
「ほう、出口を見つけ出したか。お前らにマザーとなった私の力を見せてやろう」
そう言うと親父は腕を前方に広げ、念力を送る。
「濁流に呑まれるがいい」
私達の左右から波が押し寄せ、私達をサンドして波に呑み込ませるつもりだ。
「くそ」
私も手で力を送り、対抗するが親父の力に抵抗できない。どんどん押されて波が押し寄せる。
「ははははは、完全な神となった私と力比べをするつもりか?愚かな。ははははは、これで終わりだ」
親父が高笑いし、最後に力を込めると、突然親父の体から次々と黒い触手が飛び出てきた。
「ぐわぁーなんだ、何が起きてるというのだ?溢れる力が抑えられん」
親父の身体は力の暴走を起こして、身体から突き破った触手によって親父を絶命させた。
「何が起きたか分からないけど、今がチャンスかもしれない」
私はまっすぐ正面に向きかえり、スピードをあげてゆく。
「リィナあともう少しだ。私が君を外の世界に出してあげる」
マザーセントラルビルに現れた怪物は暴走し。街を破壊しながらその勢力を拡大していき、私達の存在を感知すると無数の触手を伸ばしてきた。
目的は私じゃなくリィナだろう、いや力を手入れた私ならその器になれるのかもしれない。
「システムがこの世界を保てなくなってる。私を連れ戻そうと暴走してるんだわ」
リィナが悲しげに私に言った。
世界を犠牲にして……本当に親父の言ったとおりになってしまった。
でもいつかはこうなる運命だったんだ。遅いか早いかただそれだけ。