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第21話 マザーシステム内部

 私は涙を拭き取り立ち上がるとリィナを見やった。


 「リィナ立てるか?」

 リィナの腕を掴みリィナを立たせる。


 「うんありがとう、クレア私のために。試験はどうしたの?」


 「そんなのすっぽかしたよ」

 私はそんなこと大したことないと口元を緩めて言った。


 「あんなに頑張ってたのに……」

 リィナは私の頑張りを知っていただけに残念がった。


 「うん、私も受かる自信あったよ。でもその自信を与えてくれたのも全部リィナだったから。

 私リィナがいない明日なんて考えられないよ、だから助けにきた」

 リィナが感極まった表情で私に抱き着いた。


 「そっかありがたう、本当にありがとう」


 「リィナ行こう、外の世界へ」

 私がリィナの前に手を差し伸べた。リィナは迷う事なく「うん」と手を掴んでくれた。


 次の瞬間マザーシステムが突然音をあげ、リィナの体がマザーシステムに吸い込まれてゆく。


 「きゃー、システムに吸い寄せられる」


 「何が起きてるんだ。リィナ絶対に手を離すなよ」

 必死に抵抗する私だがしがみつくものもなく、どんどん機械に引き寄せられてゆく。機械は口を開きリィナを飲み込もうするが寸前の所で片足を機体に押し当て、なんとか食い止める。


 「こんな所で」

 私が力をかけ踏ん張っていると背後から人の気配がした。振り返るとそこにはーー



 「はぁはぁはぁ、マザーは誰にも渡さん。帰るべき所に帰るのだ」


 「親父……まだ生きてたのか」


 「この世界の物で私を倒すことなどできんのだ」

 親父が力を込めると傷口から銃弾が抜けてゆく。苦しげな様子からダメージが全くないわけじゃなさそうだ。


 親父がフラフラとこちらに近付いてくる。

 「この世界こそが人類にとっての理想郷だというのに。

 戦争、挫折、飢えもない、これ以上何を求める?娘であるお前がなぜ父の理想が分からん」


 「私は選択をする自由が欲しい、どんな辛いことがあったってそれはその人が選んだ選択だ。

 そんなにこの世界が大事ならあんたの身体を差し出せばいい」

 私は両手で掴むリィナの手から片方を外し、ふらつく親父の胸ぐらをつかんで、そのままマザーシステムの口の中へ投げ入れた。

 投げ入れた衝撃で私達の体もマザーシステムの中へと飲み込まれてゆく。


 全てが虹色で、空間が波打ち歪んでいるような世界で、私達はお互いが離れ離れにならないよう必死で両手を掴んだ。


 「クレアもう駄目。このままじゃあなたもマザーシステムに閉じ込められちゃう。

 犠牲になるのは私だけでいい。手を離して」


 「駄目だよリィナ、ここで諦めちゃ。私はマザーシステムから君を解放してあげたいんだ。そのためにここまできたんだ」


 「クレア」

 私とリィナがお互いを見つめ合った。


 すると私は体に不思議な感覚を覚えた。まるでシステムから情報が流れてくるかのような。

 15分間の魔法のまじない。その時の感覚に似てる。

 「私にもリィナと同じ力が使える?」

 私は自問自答した。


 リィナの顔も生気に満ち溢れたものに変わってゆく。

 その姿をみて確信した。

 「リィナ二人で力を合わせればここから抜け出せるかもしれない。やるよ一緒に」


 「うん」

 二人で力を合わせて流れに逆らい、システムの意思に反逆する。

 でもこっちは一人じゃない、二人だ。


 「出口がみえた」

 外に繋がる闇がみえ、私が叫び安堵のするのもつかの間、親父が横からこちらに猛スピードで突進してくる。

 でももう父を恐れることはなくなっていた。片手をかざし覇気を飛ばすように親父を遠くに吹き飛ばした。

 

 そして全速力で出口にむかった。そしてーー


 「はははは、まるでジェットコースターのアトラクションに乗ったみたい」

 リィナが軽口で冗談を言った。それに私も笑う。リィナはすっかり元気を取り戻した。


 「ははは」

 元の世界に戻ってきた。久しぶりに二人で笑い合ったような気がした。

 そう思った時、私はようやくリィナを取り戻した実感がした。

 でもこれで終わりじゃない。



 「もう親父もこれで戻ってこれないはず」

 マザーシステムに出来た大きな口はもう閉まっている。


 「リィナ立てる?」


 「さっきので力を沢山使って少し疲れちゃった」


 「リィナは仕方ないなー、ほらおんぶするよ」

 リィナをおぶさり歩きだすと、私はリィナと仲直りしたあの日のことを思い出した。

 あれからたいして日が経ってないはずなのに、今思い返すと懐かしいような気がする。

 それだけ同じような生活を繰り返して嫌気がさしていたんだろう。


 エレベーターを使い1階に降りる。電気はついてなかったが、私がスイッチ触れ力を流し込むとエレベーターさえも思いのままに動かせた。

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