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第2話 私の仕事

 職場に到着し2階休憩室の窓を眺めていると後ろから声が掛かった。


 「おはようクレア」

 声の主は友人のフタバだ。髪をお団子にしてスーツも下がタイトスカートでズボンの私より女子力高め。そんなフタバだが朝はいつも悪ノリが過ぎる。


 「うっ」

 言わんこっちゃないとフタバはいつものように私の背中に飛びつき持たれかかってきた。


 「何一人でふけってるのよ」

 後ろから抱きつきながらフタバが言った。


 「おはようフタバ、相変わらず元気だね」


 「なにが相変わらずよ、クールに格好つけちゃってまぁ。

まぁクレアは本当に格好いいからいいんだけど」


 「それはどうも、どうでもいいけどフタバ重いから降りてよ」

 

 フタバは私の背中から降りると自動販売機でコーヒーを2つ買い1つを私に投げた。


 「ありがとう」

 コーヒーをキャッチしてフタバにお礼を言った。


 「今日口数少ないわね、なんかあったのクレア?」


 「んー今朝変な夢みてさ」


 「夢ね」


 「その夢がさ、夢の夢でさ、途中で自分がこれ夢だって気付いちゃうんだよ」


 「はぁ……」


 「はぁって感想はそれだけ?」


 「だってクレア何言ってるか全然わからないんだもん。まだ寝ぼけたてるんじゃないの?」


 くー、フタバにそう言われ頭に血がのぼった。


 「ちゃんと説明すればいいんだろ、ちゃんと。えーと、だからーー」


 「お母さんがーー」

 私が颯爽と話しはじめたは良いもののすぐに口をつぐんでしまった。

 フタバのいった通り、少しボケてたかもしれない。こんな話絶対に友達のまえするもんじゃない。それに相手がフタバだ絶対に職場で言いふらされる。


 「やっぱりやめた」


 「えーそこまで引っ張っておいて」


 「だって恥ずかしいんだもん。仕事はじまるよ」

 私はそういうと休憩室のベンチから立ち上がり逃げるように仕事の自分の持ち場に向かった。


 「もうクレアの意地悪、帰り必ず教えてもらうんだからね」


 私が自分の持ち場につくと反対番の人が、私に気付き席を立ち上がった。

 お互い挨拶はせず。いつものことだからもう気まずいという感情すら沸かない。

 はじめこそは、おはようって声掛けしてたんだ。でも彼女から返ってきたこと一度もない。

 聞こえてない訳ではなさそうなんだ。返さないことで挨拶はいらないって暗に私に伝えてるんだろうって勝手ながら思ってた。

 でもやっぱり挨拶をして返事が返ってこないっていうのは、結構もやもやするもので、百歩譲って自分から言わないのは分かる。でも言われて返さない人は私はちょっと神経を疑うな。


 「さてと仕事っと」

 私は席につくなり、テーブルの物を配置を自分用にと模様替えしていった。


 私の仕事はシステム管理エンジニアだ。毎日朝から晩まで文字の羅列、コードに異常がないかを読み上げ、異常が見つかり次第正しいコードへと書き換えるのだ、一種のバグだしが私の仕事だ。

 根気を必要とする作業ではあるが取り分け難しいということはないし、黙々と取り組めるこの作業は、私の性分にあってる。


 この職場ではスタッフとの連絡連携もパソコンひとつで行うので仕事をする上で人とコミュニケーションする機会は殆どない。


 そんな仕事ノイローゼにでも掛かってしまうって思うかもしれないけど、ここの離職率は驚異の0%だ。

 それには大きな理由がある。みんな業務が開始と同時に専用のヘルメットを頭に装着する。

 このヘルメットは優れものでどんなに仕事に適正のない人でもこのヘルメット1つで全てが解決してしまう。

 このヘルメットはマザーシステムから指示が送られてきていて、自分が身体を動かさなくても、システムに繋げば自動で身体が動いてくれるのだ。


 これで人が仕事に対して苦に思うことなくがなくなり、その間の思考は別の疑似空間へと移動でき、自由気ままに自分の好きなように過ごすことができる。ようするに体だけ職場に貸す感じかな。


 私がなんで素顔のままだって?さっきも言った通り私はこの仕事に対して苦に思ったりしないし、さして時間を費やせる程の趣味も持ちわせていないのさ。

 それに思い出したくないことに頼ってしまうような気がする。


 それから10時間、休憩も合わせると時計はぐるりと一周していた。


 「今日も終わった」

 私は反対番の人と交代し、自動販売機がある休憩スペースに顔を出したがフタバのいる様子がない。


 「フタバまだかな?いつもなら私より早いのに」


 窓からフタバと男子が話してるのがみえた。


 「なんかいい感じそうだし、邪魔しないでこうか」

 それにフタバにとやかく追及されることないしラッキーかな。


 エレベータに乗り1階フロアへと向かった。

 エレベーターが下がっていく、このエレベーターは足元以外がガラスばりで外の景色が丸見えだ。

 綺麗な夜景なんだろうが、昼も夜もみえる景色は一緒だし、特段心が動かされることはない。

 いつからか分からないけど感情という気持ちがどんどん薄れていってるような気がする。


 ビルの出入口の扉を抜け、夜風が私を出迎えた。

 いつもこの風をあびることで今日も仕事を全うしたんだと実感する。このときばかりは自由になれたんだと。

 でも家に帰る頃にはもう眠りにつく時間で、明日の仕事の事が頭を過ぎる。こんな生活をいつまで続けるんだろうって思う、でも考えた所で毎日は私の都合で止まってくれないし、どんどん時を刻んでいく。私達は目の前にあるやるべきことをやるしかないんだ。

前作小説、アサの旅完結してますのでこちらも是非お願いします。

https://ncode.syosetu.com/n5210hp/

長押しすると開けます。


小説投稿日は月火休みで、水〜金18時40分投稿。土日13時より投稿します。

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