表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/24

第18話 救出作戦決行

 バイクが一挙に横一列に並び、各々バイクに跨りエンジンを吹かし気持ちを高めている。

 そのバイクの列に一際目立つバイクが一台あった。

 おやっさんが私のために用意してくれた母親のバイクだ。

 

 「こいつがお前のバイクだ」

 バイクを見つめる私におやっさんが言った。


 「これが……」

 バイクを見て思うことは多々ある。まずごてごてしたバンパーに真っ赤にカラーリングされたそれはお世辞にも私の趣味とは言えない。私はもっとシュッとしたフォルムに黒か白でスマート決めたい派だ。


 「随分と派手だね、母さんの趣味?」

 私は直接的な言葉では言わなかったが含みを持たせおやっさんに言った。お母さんのバイクを借りておいて悪くはいいたくないから。


 「艶が出ていい色だろ、塗料が剥がれはじめたから俺が塗装し直したんだ」


 「え?じゃコレおやっさん趣味?」


 「あー俺のバイクとお揃いだろ」

 通りでこーにもなるわけだ。


 「おやっさんの趣味なら納得、変に気を遣って損しちゃったわよ」


 「どういう意味だよ」


 「最悪ってこと、元々何色だったわけ」


 「白だぜ」


 「やっぱりセンスいいじゃない」

 私は腕組みをしてほっぺを膨らませた。


 「ったくこのガキ。色もくすんで黄色がかって見れたもんじゃなかったんだよ」


 「なら白で塗装し直せばよかったでしょ。変におやっさんの趣味織り交ぜるからおかしくなるのよ。このゴテゴテもさてはおやっさんの趣味でしょ?」


 バイクを隅々までみていると私はあることに気付いた。

「あっここなんて銃器まで付いてるじゃない?」

 左右に1メートル程の白い筒状の銃器が備わっている。今は銃口が後ろに向いているが前方にも展開出来そうだ。


 「こんなの前に見たときには付いてなかったはずだが?」

 おやっさんがとぼけた様子で言うと、見兼ねたジェイドさんが説明に入った。


 「リィナちゃんだよ。この前のレースの翌日の昼頃に彼女がバーにきたんだ」


 「そういえばお前はあの日、察に捕まんなかったんだったな」


 「彼女が倉庫にあるバイクを見せて欲しいって泣いて聞かないもんだから、案内すると不思議なもんでこの通りさ」


 「なんでそんな大切なこと今まで黙ってたんだ」


 「こんな話おやっさん言ったところで信じちゃくれないだろ?それに俺のせいにされちゃかなわないからな」


 「ジェイドさんその時リィナ何か言ってなかった?」


 「そうだな、お前を魔法で守ってくれるバイクだとさ、しかしタイムリミットは15分。俺には何のことだか」


 「私は分かったよ。リィナのメッセージ確かに受け取った」


 武装に対して追加の操作系統が見当たらない。おそらくリボルバーの時と一緒、私が願えばバイクがそれに応えてくれるはず、15分か、短期勝負だな。



 私は地面に置いたグレネードランチャーを拾い上げバイクのポケットに挿しこんだ。

 スタンドを上げバイクに跨りヘルメットを被るとおやっさんが言った。


 「クレアここを走り出せばもう後戻りは出来ないぜ。覚悟は出来てるな」


 「うん覚悟はもう出来てるよ、いつでも先行して最後尾から追いかけるから」


 「オーライ、出遅れるなよ。それじゃいっちょいくぞお前ら」


 「オー」


 おやっさんを先頭に次々とみんながバイクを走らせていく。


 バイクの騒音…私にとっては心地良い音が響いていく中、私は試しにリィナからの贈り物がどんなものか、力を試してみることにした。するとヘルメットのガードプレート上に地図と車体位置が表示されるようになり、車体の色がホワイトに様変わりした。


 「やっぱりこうでなくっちゃ」


 私は最後のバイクが走り去ったのを確認し、すかさず後に続くためにアクセルを回すと、以前のバイクとの馬力の違いに驚いた。

 でもバイクを走らせてる中でその感情はすぐに爽快感と高揚感へと変わった。

 そして目的のポイントに到達するとみな一斉に4方に別れて、それまでの排気音とは違う不快で耳がはち切れんばかりの騒音を鳴らした。

 ヘルメットをつけてこれだ、生身で聞いたら凄いだろうな。住民の人には悪いけど陽動としてはうってつけに違いなかった。


 私はマザーセントラルビルがある中央地区を目指した。

 中央地区のさらに中枢部は一般市民は立ち入りが禁止されており、バリケードで固められている。

 まずは挨拶変わりにおやっさんから借りたグレネードランチャーでバリケードを破壊した。


 バリケードを破壊して中枢部に侵入するとサイレンが鳴り出し、無人ドローンが起動して私を追跡する。

 ドローン自体に殺傷性はないがカメラにおさめたデータが、支庁警察に送られパトロールが出動する。


 中枢部は交通量が一切なく私はお構いなしに、アクセルを全開にし公道を疾走していく。こんなスピードなのに車体はこれっぽっちも振動せずに路面をしっかりと捉え私に安心感を与えた。


 私達の起こした同時暴走行為はTV中継で大体的に取り上げられ、ラズベルのビルの壁のスクリーンビジョンにもその状況が映し出されていた。


 「あれってクレアじゃない?」

 フタバがビルを見上げ言った。その頃フタバはサイジョウさんに私のことで相談され、二人で喫茶店のオープンテラスでコーヒーを飲んでいた。


 「僕ちょっといってきます」

 サイジョウさんはすぐ様立ち上がり、テーブルに二人分の会計代を置きその場を後にし、バイクを走らせた。


 「ちょっと待って」

 サイジョウさんがその声を聞き入れることはなく、フタバは一人になり、またビルの映像に目を移しぽつりと呟いた。

 

 「クレア……」



 そのまま中枢部を勢いよく走り抜けていくと、とうとう数台のパトロールが私の背後からじりじりと距離を詰めいく。


 「ここは立入禁止エリアだ。直ちに止まりなさい」

 警告を無視しているとマシンガンを使い応戦し、タイヤを狙ってきた。

 私は蛇行運転をし弾丸を避けながら、振り向き様にグレネードランチャーをボンネットめがけ撃ち込み、車体を大破させた。


 それでも怖気づかずに後続のパトロールはしつこく取り付いてくる。

 広い通りにでると、左右、後ろに取りつかれ、前方の道も2台のパトカーが横並びになり、道を塞がれてしまっていた。


 バイクのスピードを落した所で左右、後ろの車が接近し私のバイクの身動きを

封じに掛かってきた。

 私は流石にこのピンチにリィナの力を借りる事にした。

 願いを込めるとバイクがその気持ちに応え、左右に備わった銃器からレーザー砲が放たれた。

 後続車はたちまち後方に弾き飛ばされ、レーザーを放った銃身は180度回転し、その回転途中で左右に取り付いたパトカーをも大破させた。

 前方に展開されると砲台はクールダウンに入りチャージを開始。バイクはスピードを加速させ、パトカーとの距離ぎりぎりのところで放射し、パトカーを遥か前方に押し出した。

 全速力で公道を走り抜けると前方にマザーセントラルビルが見せ始めた。

 マザーセントラルに繋がる大橋にはパトロールが5台詰め掛け、マシンガンでこちらに発砲してくる。



 私は魔法の力でバイクのバリア機能を使い、バイク前方に赤い膜が展開され、銃弾はすべて弾き返された。

 そしてレーザー砲の照準を合わせ、放射するとそれを見た警官は橋から飛び降り湖に着水した。


 パトカーはなぎ倒され、残骸だけが辺りを転がっている。

 橋が崩落することはなかったが、凹凸だらけになった道をこのままバイクで走行することはかなわなそうだ。

 私はそこで前輪を浮かせ、ウィーリィー状態で走行し、橋に突入する所で後輪をも浮かせレーザーをニトロ噴射に利用し空を滑空した。


 橋を渡りきりバイクが地面につくとその衝撃と加速からいくらブレーキを握っても一向に止まってくれない。

 バイクは大きく回転しながらタイヤ痕を地面に残しなんとか停止する事ができた。



 バイクから降り、マザーセントラルビルを見上げ、先に進もうとすると私を呼び止める声が聞こえてきた。


 「ちょっと待って」

 私は振り返り顔を隠すためにバイザーモードを切り替え外から視認できなくした。

 その声は男性のもので、凹凸だらけの橋をバイクで渡り、今にも転倒しそうな足取りでこちらに近付いてくる。

 言わんこっちゃなくバイクは転倒し彼はコロコロ転がり私の前に投げ出された。

その時投げ出された衝撃でバイザー付きのヘルメットが外れた。

 スピードが出てなかったから大事には至らなかったが、それでも肘膝は擦りむいたようで節々をおさている。

 彼が立ち上がり顔が見えると私はハっとした。


 「クレアさん……」

 私の名前を呼ぶのはサイジョウさんだった。こんな所にいるはずがない彼に私は動揺した。

 でもサイジョウさんからは私の顔が見えてないはず。

 黙ったまま白を切ろうとも考え、沈黙の間だけが延びてゆく。


 「クレアさんなんでしょ、こんなことやめましょうよ」

 周りの破壊された残骸を見ながらサイジョウさんが言った。


 「こんなのまるでテロじゃないですか?今からでも遅くない、僕と一緒に戻りましょう」


 私は彼の真摯な姿に自分の中でけじめをつけようと思い、ヘルメットを外し彼と向き合った。


 髪型から髪色まで変わった私にサイジョウさんは驚きのあまり言葉が出てこない。


 私はサイジョウさんに声を張り上げいった。

 「ごめんなさい、あなたとは行けない」

 私は彼に引き返してもらうために、自分の思いを打ち殺し、ピストルの銃口を彼に向けた。

 そして涙ながらさらに声を張り上げ言った。


 「あなたは、私に好意をもって接してくれた人だから。撃ちたくないの、私に撃たせないで」 


 サイジョウさんは怯えながらも震える声で言った。

 「僕は……僕は君のことがーー」


 「そんな言葉ききたくない」

 私は彼の言葉をさえぎるように声をあげ、銃弾を撃ち込んだ。

 

 銃弾は彼の顔の横を通り抜け、驚いたサイジョウさんは情けない声を上げ、その場から逃げ出した。


 私は涙を腕でぬぐい、顔を覆う腕をどけると、それまでの顔付きとはまるで違った。

 これから戦うのに女性的な感情は私にはいらない。

 「私は戦う」


 セントラルビルに向きかえりゆっくりと歩みを進める。


 「リィナ、今からいくよ」

すみません長らく時間が掛かってましたが、無事最後まで書き終えたので、明日以降も投稿致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ