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第17話 作戦準備

 「はぁはぁはぁ」

 まるで山頂に来たかのように息を吸うことさえままならないリィナ。彼女が目を覚ますとそこにはあらゆるコンピュータの集合体であるマザーシステムの目の前でだった。


 マザーシステムの周りに掛けられた何段もの足場の頂上に人影が見える。

 「やぁおかえり、君の帰りをずっと待っていたよ。見ないうちに随分と可愛らしい姿になったもんじゃないかマザー」

 親父が片手を腰に当て、煙草をふかしながら言った。


 「お前のおかげで処理が間に合わず仕事が山積みだ。彼らの頑張りは評価するが、やはり君なしではこの世界の運営は厳しいようだ、さぁきたまえ」

 親父が階段を降りリィナの元へ向かっていく。

 頭でいくら信号を送っても、リィナは動くことも抵抗することも叶わなかった。そうしてるうちに魔の手がリィナの視界を覆ってしまった。




 その頃おやっさんのバーではテーブル上に、ラズベル全土の地図が広げられ作戦会議が開かれていた。

 はじめに口を開いたのは言い出しっぺの私だ。

 「目指すはマザーセントラルビル、警備隊を分散させるためにおやっさんには陽動をやってほしい」


 「なるほどな、なら各自、東西南北に分かれて警備の目を引いてやる。確か倉庫に爆竹があったな?」

 おやっさんが腕組みしながら言う。


 「湿気ってなければ使えますね」

 ジェイドさんが言うとおやっさんが「ならここに持ってこい、後銃もカートでたらふく持って来い」とジェイドさんに指示を送った。


 「はいよ」


 「時間は何分持たせればいい?」


 「うーん40分は稼いで欲しいかな」


 「奴ら相手に無理言いやがるぜ」

 おやっさんが指をくわえ、あきらかに不満げな表情を浮かべ言った。


 「なによ、私ならそのぐらい出来るね」

 私は反抗して口からでまかせを言うと、おやっさんが立ち上がり私の頭(こめかみ付近)を両手でぐりぐりとめいいっぱい圧迫した。


 「お前はお願いしてる立場だろうが、減らず口の減らない奴め」


 「痛い痛い」

 おやっさんの腕を払いのけようにもムキムキゴリラに私がかなうはずもなかった。その後は、おやっさんの気が済むまでやられ続けた。


 「いてーよ、おやっさん」

 ようやく解放されたときには私の目の端から涙がにじんでいた。


 「自業自得だぜ。まぁその時間までなんとか持たせてやる

 みんな総出だ、ポジションはじゃんけんで決めるぜ」

 おやっさんが腕を頭上にあげ、ポジション決めの10名程のじゃんけん大会が始まった。

 これはいつもの事で相当時間掛かりそうだから、私は早々にその場を退散した。

 「それじゃ後はお好きにどうぞ。時間かかりそうだから、おばさん食べるものあります?」

 私が図々しくもセレンおばさんに言うと「しょうがないね、ちょっと待ってな」と嫌嫌ながら何か用意してくれるようだ。


 「そうだお前のバイク用意出来てるぜ」

 じゃんけんの途中でおやっさんが思い出したかのように私に言った。


 「私のバイク?」


 「前に乗ってたバイク、大破しちまったろ?」


 「うん」

 いまいちピンっと来てない私におやっさんは額に手をあて、呆れるように言った。


 「なんだよお前、まさか通勤用のオンボロバイクで敵のアジトに乗り込むつもりだったのか?」


 「いやおやっさんにバイクの予備借りようかなって」


 「うちに予備のバイクなんてねーさ、こちとら毎年かつかつだぜ」


 「だったら?」

 勿体ぶるおやっさんに不機嫌に私が言うと、おやっさんはようやく言う気になった。


 「だから言ったろお前のバイクだって、まっ正確にはお前の母親のだがな。最新仕様にチューニングしてある。あんなヘボじゃすぐに追いつかれるだろうからな」


 「お母さんもバイク乗りだったんだ知らなかった」


 「中々の凄腕だったぜ。リミッターも解除済みだ。暴れ馬だが、お前ならきっと乗りこなせるだろうよ」


 「うん、乗るのがたのしみ」

 お母さんがバイク乗りだったなんて。私はお母さんの知らない一面を知れて嬉しく思った。何も知らない私が自然とバイクに惹かれ、それがお母さんも同じだなんて、母娘の繋がりを感じずにはいられなかった。


 「おやっさん爆竹使えそうだぜ」

 ジェイドさんが大きなカートに爆竹に銃火器詰め込み帰ってきた。するとおやっさんは矢継ぎ早に次の注文をした。


 「クレアのバイクここに持ってこい。キーはこいつだ」

 おやっさんがジェイドさんにバイクのキーを投げ入れた。


 「おやっさんも人使いが荒いぜ」


 「私が行こうか?」


 「クレアちゃんはいいんだよ、相当重いバイクだから男の俺が持ってくるさ」

 ジェイドさんはそう言い、小走りにまた倉庫に戻った。


 「へっ格好つけやがって」

 おやっさんはその態度が気に食わないらしく悪態をついた。


 「そんな重量のバイク乗れるかな、転倒したら私起こせないよ」


 「転倒しなきゃいいんだよ」

 

 「そりゃそうだけど」


 「よし、これなら派手に暴れられるな。クレア後はここから好きな銃持ってきな」

 おやっさんが爆竹を手に悪い笑みを浮かべている。


 「じゃーみんなじゃんけんの続きだ」

 おやっさんはジェイドさん抜きでじゃんけんを再開したが、後でトラブルになっても知らないんだから。


 大人数でジャンケンしてるもんだから、あいこばかりで中々決まらない。私はその間に背中まで伸びた髪を腕でまとめ、鏡を見ながらハサミでバッサリと切り落とした。

 そしてここに来る途中で買った、脱色剤を頭に塗る。頭にネットを被せ待っているとセレンおばさんが夕食の残りであろう料理をもってきた。

 「ほら食べな」


 「ありがとうございます」

 セレンおばさんは私の頭が気になるだろうに、そのことについては何も言わなかった。


 頭にネットを付けたまま、私はカートの中を漁り好みの銃を物色していく。

 1つは火力重視でバリケードの壁を壊せそうなグレネードランチャー、もう1つは取り回しの利くリボルバー。

 オートマチック式の方が扱いが楽な上、装弾数も上だが、自前でリボルバーを使ってるせいか1番手に馴染む銃なんだ。

 私はホルスターを腰に巻きリボルバーをしまった。腰には黒と金のリボルバーの二丁銃が備わってる。

 グレネードランチャーはバイクにさせる所があればいいんだけど。

 


 30分後ーー


 母のバイクを持ってきたジェイドさんも途中からじゃんけんに加わり、ようやくみんなの持ち場が決まった。


 「よし、ポジション決まったぜ。ざっとこんなもんだ」

 おやっさんはメンバーの各ポジションをホワイトボードに書き出し、私に見せた。


 「おやっさんこれで完璧だね」

 私がおやっさんに言う、私をみたおやっさんが目を丸くして驚いた。


 「なんだおめー、随分と様変わりしたじゃねーか」


 「スッキリしたでしょ?一回やってみたかったんだ明るい髪」

 私は指で髪をくるくるとねじりベージュがかった髪色を披露した。


 「管理職を目指す優等生がそんな身なりでいいのかよ」


 「私はもうここには戻らないもの」


 「そうか、お前ならきっとどこいっても上手くやっていけるさ」


 「おやっさん、最後まで本当に迷惑かけてばかりで何も返せなくごめんね」


 「ふん捕まることなんてこわくねーさ。お前のことは娘のようにおもってる。

 そんな娘の期待を裏切ることのほうがよっぽどこえーのさ。

 だからお前も全力で親父に感情ぶつけてこい。人間も捨てたもんじゃないってことをな。そしてリィナを取り戻せ」


 「うんありがとうおやっさん」


 最後にみんなで集ってミーティングをし、個々が念入りにイメージトレーニングをする。


 「23時をもって作戦を決行とする。オラお前ら円陣組むぞ」

 みんなで外に出て皆で肩を組み合い大きな輪を作り出した。


 「クレアお前が掛け声やれ」

 

 「えっ私が」

 おやっさんに突然言われ、私やったことないもんだからどうしていいか戸惑った。


 「当たり前だろ、これで最後なんだぞ」


 「分かった」

 私はけじめをつけ、みんながやってるのを思い出し、見様見真似でやってみた。


 「みんなやるよー!!」

 私は腹の底から声を出し、こんな大きな声をあげたのは人生で初めてだと思う。


 「そうだその域だ、もっと声だせ、クレア!!」


 「やれる私ならやれる絶対、みんなもやるぞー!!」


 「おーーー!!」

 みんなが同調して大きな掛け声を上げた。


 「ははははは何年ぶりよ、この掛け声」

 私は久しくやってなかったもんだから可笑しくって笑ってしまった。


 「お前の母さんが亡くなって以来やってなかったな」

 その言葉をきいて私は笑いが止まるとすかさずおやっさんが「あーすまねぇ考えなしに発言しちまって」


 「いいんだよおやっさん。お母さんはもしかしたら生きてるのかもしれない」


 「なんだって?お前言ってたじゃねーか」


 「私の勘違いかもしれない。何が本当で何が偽りなのかこの世界から抜け出せばすべての答えが分かる気がする。リィナは私にそれを伝えたかったんだとおもう」


 「お前……」


 「リィナは私が必ず守る」

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