第15話 どこを探しても
「リィナー!!」
私は外で人目を気にすることなくリィナの名前を叫び、彼女に呼び掛けた。
「まったくどこいっちゃったんだよリィナのやつ。でもあいつが行くような場所ってどこだろ?
マザーセントラル……いやあんなに嫌がってたんだ、それはないはず。おやっさんのとこか」
私は急いでおやっさんの家を目指した。
「こんばんは。あのここにリィナきてませんか?」
「リィナだと?」
カウンターから振り返ったのはおやっさんだった。
「おやっさん務所から出てきてたんだ」
まだ服役中だと思ってて油断した。こりゃ、ぜってー恨んでるだろうな。
「お前のせいで酷い目にあったぜ。でもまさかあんなに腕を上げてるとはな。俺もぼやぼやしてられんぜ」
「あははは」
まぁあれは全部リィナのおかげなんだけど。
「そんなことよりリィナきてない?」
「いやきてないぞ」
「そっか。じゃー帰るよ」
私が足早にそこを立ち去ろうとするおやっさんが私に声を掛けた。
「おい、クレアーー」
「何おやっさん?」
私は振り返って言った。
「お前時々は顔だしにこいよな、みんな心配してるんだぜ」
「みんなじゃなくて、おやっさんがだろ」
「馬鹿言え」
おやっさんが図星を指され顔を赤くして慌てた。
「またくるよ」
おやっさんのバーを出てそれからも色んな場所を探し回ったが、結局リィナが現れることはなかった。
「本当リィナどこいったんだろ?後思いつく場所って」
目をつむり考えこむと、リィナと踊った海のことを思い出した。
でもその場所にも人影らしきものはない。
柵を飛び越え、海に片足を入れて見るが浮かぶことなくそのまま沈む。
「あれもリィナの力だったんだろうか」
もう1時間以上探し回ってる、もしかしてリィナが家に帰ってきているのではと思い、自宅を目指した。
その途中で中央公園のピアノに目が止まった。
「もしかしたらあの場所にリィナがいるかもしれない」
ピアノの椅子のカバーを持ち上げたがリィナはいない。
落胆して椅子に座り込む。
「そういえばここに来るの何日振りだろう?あんなに毎日通ってたのに。考えてみればリィナが来る前、この場所だけが私の心の在処だったんだ」
このピアノを奏でれば、リィナがひょいっとあどけない笑顔をして現れるんじゃないかって、私は思えた。
for your mind only、リィナから教えてもらったお母さんが私のために作ってくれた曲を引く。
でも指が思った通りに動いてくれない。メロディーが思いだせないのだ。
そうだとおもい楽譜を書いておいたのを思い出した。
しかし楽譜の音符がその場で剥がれ落ちていった。
その時リィナのあの時の言葉が過ぎった。
『あなたこのままじゃこの世界に染められちゃう、向こうでの記憶を完全に忘れたら2度と元の世界には戻れなくなる』
ペンダント広くと中は空っぽだった。
「お母さんごめんね、私今お母さんの顔を思い出せない」
「うぁー」
私は目の前の楽譜を手で荒々しく破りさった。
そして荒れた息を整えて、自分の今の気持ちのままを、そのままピアノの乗せて演奏した。
ピアノを引きながら私は今までのリィナと過ごして日々を思い出していた。
『ただいま』いつもそういうとリィナがキッチンで、料理をしながら振り返ってくれた。『クレアおかえり』
記憶の中で何度も振り返るリィナの姿をみて、最後に海に走っていくリィナに私が呼び止めて振り返るリィナを見たとき、心がはっとした。
何か大事なものを見落としているような気がした。
それから自宅アパートに戻ったがそこにリィナの姿はなかった。
私はご飯もお風呂歯磨きもせずに布団にもぐり涙で枕を濡らし眠りについた。
7時のアラームがなる前に、6時過ぎにメールの着信音がなった。
私ははっとなり目を覚ます。携帯を見るとリィナから1通のメールが届いていた。
クレア突然いなくなってごめんなさい。心配かけたよね。でも私は大丈夫、はじめから時間が有限なのは分ってたことだから、この限られた時間で私はあなたと一緒に過ごせた日のことを一生忘れない。
クレアは今私がいなくて心が辛いかもそれない、でも大丈夫月日が経てばきっと忘れられる。だってそういう世界だから。
私はあなたを外の世界に導くためにきた。
でもあなたとってはこの世界が全てだものね、だから私はあなたの選択を否定はしなかった。
あなたなら絶対受かる今日の試験頑張ってね。
「何が大丈夫だよ、リィナのことを忘れることが平気な訳ないだろ」
私はその日仕事にいけなかった。上司のレイチェルさんに休むことを伝えたが、レイチェルさんは19時から採用試験には来れないかと強く説得された。
今日までこの日のために頑張ってきた。日々の努力の成果を試せる日なのになんでこんな気持ちで臨まなきゃいけないんだ。
でもリィナのためにも行くべきなんだろうか。
私は支度だけ済ませベッドで横に採用試験までの時間を待った。
クレアがピアノで引いた楽曲はイメージとしてYouTube上でduggy endless loveと調べてください。
途中楽曲の曲調が変わるので、そこでリィナ何度も振り返る回想シーンです。