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第11話 最後のひと押し



 サイジョウさんとは駐輪場で挨拶を済ませ、私は自宅に帰ってきた。

 「 ただいま、リィナ」


 「おかえりクレア、ふふふ」

 リィナがリビングで私を温かく迎えるとまたもや料理の香りがしてきた。


 「いい香り、今晩は何作ったの?」


 「豚汁、美味そうでしょ」

 リィナがコンロに掛かった鍋のフタをあけ私に見せた。

 

 「本当だ、今回は上手くできたんじゃない?」


 「うん、これなら煮込むだけだから失敗しないと………」

 リィナが途中で口を滑らせたことに気付き口を手で塞いだが、もう遅い私の耳はっきり聞こえてしまってる。


 「なるほど、それはいい考えだね」

 私は目を細め「にっしし」っと笑ってこたえてみせると。

 「違う違うのよ、まぁ食べてみれば分かるわ」

 手を振り途端に焦り表情を見せるリィナが面白くもあり、また可愛らしくみえた。


 器に盛り付け二人で食卓を囲み私達の夕食の時間がはじまる。二人で手を合わせ、私はリィナの自信作の豚骨を一口ぱくり。


 「うん、旨い。少ししょっぱいけど、ご飯がすすむよ」

 それをきいたリィナは胸を撫で下ろし、嬉しいそうに笑った。


 「おかわり」

 私がリィナに空の器を差し出し豚汁を盛ってもらった。


 「どうぞ」

 

 リィナから豚汁を受け取り、ご飯を食べ進めていくと話題は仕事の話になった。

 「そうだ、上司のレイチェルさんに管理の仕事を目指してみないかって言われたんだけど、リィナどうしたらいいかな?」


 「クレアはどうしたいの?」


 「うーん、わからない」

 私は天井を一点を見つめボーッとした表情で言った。


 「クレアはお父さんに向き合ってもらいたいんでしょ?それに合格すればお父さんクレアのこと認めてくれるんじゃないかな?」


 「そうだよな、でも怖いんだ失敗することが」

 それを聞いたリィナが真剣な眼差し向け私に言う。


 「クレア失敗を恐れないで、失敗が人を強くさせるの、失敗から学ぶことも沢山ある。人生っていうのは失敗続きなの、沢山失敗を重ねて、何が悪かったのか考えて、その先に成功があるの。

だから失敗なしに成功しようなんて考えちゃだめ」   


 私の中で自分はどうするべきか、答えはもう見つかったのかもしれない。ただ最後のひと押しをリィナに背中を押して貰いたかったんだ。


 「リィナありがとう、リィナの言うとおりだね。実はね今日の帰り、試験を受けるもう一人の男の子がいてさ。その子にも挑戦しないことで後悔するって言われたんだ」


 「なーにそれってロマンスかしら?」

 リィナが両手を頬にあて、顔を赤らめて言った。


 「なにいってるんだよ、フタバみたいなこといって」


 「フタバ?」


 「私の友達さ」


 「でもライバルがいるって事はいいことじゃない、お互い刺激があって切磋琢磨するって青春じゃない?」


 「そうかな?」

 青春か、なんか変だな少し前までは、目の前のその日しか見えてなかったのに、今はこんなにも未来が明るくみえるなんて。


 「じゃー私お風呂入ろうかな」


 「あっ」

 私のその言葉を聞くなり、リィナは何かを思い出したかのように立ち上がった。


 私が浴室につくと蛇口からお湯が出ていて浴槽はお湯で溢れかえっていた。

 「リィナお湯出しっぱなしじゃないか、光熱費も馬鹿にできないんだぞ」


 「やっぱりどこか抜けてるよなリィナは。得意の体内時計はどうした?」

 私は呆れながら蛇口のお湯を止めた。


 「ごめんなさい」

 リィナがうつむき目をうるうると涙でにじませた。


 「そんな泣くほどのことじゃないだろ、もう」

 私はそれでもリィナに突っぱねた態度をとるとリィナはそのままその場を動こうとしない。


 「リィナそこにじっとされると脱げないよ」


 「私もクレアと一緒にお風呂入る」

 リィナがぼそりと小さな声で言った。 


 「うーん」

 私が悩んでいると、リィナがまた泣きそうになるので「分かったよ、こういう所は子供なんだから」

 こうしてリィナと一緒にお風呂に入る羽目になってしまった。

 思い返せば誰かと一緒にお風呂入るなんていつぶりだろ。昔はお母さんとよく一緒に入ってたな。


 「せっかくだし泡風呂にするか」

 そういうとリィナは喜んで泡洗剤をお風呂に入れていく。


 二人でお風呂に浸かっているとリィナが私の耳元でごそごそと喋りかけた。

 「なんだ頭洗ってくれるのか、じゃーあとで私もリィナのを洗ってあげるよ」

 

 そうしてリィナに頭を洗ってもらうと、またもや私は大惨事に見舞われた。

 「おい耳に泡は言ってるって」


 「クレアが暴れるからー」


 「もう自分でやるからいいよ」

 こうしてドタバタなまま私の1日は過ぎていった。


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