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ヒーロー

教室に戻った。あの3人はクラスの女子全員で、多分あたしのことを話している。

ちらり、とあたしを見る人がいるから…。


逆に、男子はあたしのことを、


「吉川さん、行かないの?」


だとか言って、心配してくれている。

あたしは、


「うん、いいの。ありがとう。」


とだけ答えた。


女子は、あたしに聞こえるか聞こえないかくらいの声で、


「吉川のやろう、浮気してるわ。」


「さいてー。」


だとか言っている。


別に浮気なんてしていないのに…。




その日の放課後、あたしは、勇気と一緒に帰ろうと約束していたので、

靴箱で待ち合わせていた。


しかし、待っていても、勇気は来なかった。


そこに、あの3人が来た。


「あ〜ら、吉川さん。そこで何を?」


「まさか、長嶋君と待ち合わせとか?」


「まだ懲りないのね。」


3人は、また水をかけようと、そこにたまたまあった、

ぞうきんを洗った水入りバケツをとって…。


「「「お仕置きよ!」」」


あたしは目をつぶった。


ばしゃっ


しかし、水はかからない。

そっと目を開けると、そこには、

知らない男性が立っていた。

びしょぬれになって…。


3人は目を開いてバケツを落とした。


「まだやっていたんだね…。君たちは。」


この声は、さっきの男性…。聞いていて、心地のいい声。

髪の毛は、綺麗な茶色にフワフワしていて、

背が高い。おそらく180cmはあるだろう。


「あ、ああ、あのっ、私たち…。」


「こ、この人が…。」


「…………。えっと…。」


3人はさっきと違う態度だ。

それに、微妙に涙を流している。

男性が怖い目でもしているのか、体が震えている。


「「「…ごめんなさい!!」」」


といって、走り出した。


「待て!」


3人は止まった。


「この子に、言うことがあるだろう。」


3人はびくびくしながら、あたしの方を向いた。


しかし、黙っている。


「言えないのなら、こっちにも考えがあるが。」


3人は、ようやく口を開いた。


「「「ごめんなさい…。」」」


しかし、あたしは何も言わなかった。


男性は、気遣ってくれたのか、話を変えた。


「とにかく、君たちのやろうとしたことは、この子を、

いや、周りのみんなも傷つけてしまう、悪いことなんだ。」


3人は下を向いている。


「とにかく、今日は帰りな。」


3人は「はい…。」といって、涙を拭きながら帰っていった。


男性は、あたしの方を向いた。

男性の顔は、正直に言ってかっこよかった。

目は大きくて二重で、鼻は高くて、唇もいい色をしていて眉毛もりりしくて。

きっと、3年か2年かに違いない。


「君、名前は?」


「え、あの、吉川真希です。」


「そっか、真希か。大丈夫か?」


「あ、あたしよりも、えっと…ぬれてますよ!」


「あ、名前教えてないもんな。おれ、長嶋大地。名乗ってしまったな。

俺は平気だから、気にしないで。真希、1年だろ?」


いきなり呼び捨て…。まぁ、いいか。


「あ、はい…。」


「俺3年!1年に勇気っているだろ。俺の弟なんだ。」


「え、勇気…じゃなくて、勇気君のお兄さんですか??」


「うん。顔は似てないんだけどね。」


確かに、カッコイイのだが、顔つきは全然違う。


「あ、勇気帰った?」


「みたいですね。」


「そっか、仕方ない…。俺は帰らないと…。真希、大丈夫?送ってくよ?」


「え…、でも…。」


「いいから、さっきみたいな奴らに、絡まれたら危ないだろ。」


「あ、あは…。」


この人は優しい。ちょっと強制的だけど…。

だから、送ってもらうことになってしまった。

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