第6話〜あくまで本人の主観による
◇◇◇
鏡に写っているのは小学校低学年くらいの子ども。
客観的にみて、中性的で可愛い顔をしてるな。
いや、そっちの趣味はないし、ナルシストでもないが。
けどまぁブサイクよりは整った顔をしてる方がいいよな。
ちょっと女々しい見た目なのは絡まれそうで嫌だが。
光の加減で金髪っぽく見える茶髪に青緑色の透き通った瞳。
なんとなく庇護欲を誘う顔をしてるけど、まぁ中身が成人してる俺だからか妙に気怠げというか、太々しいな。
なまじ将来イケメンになりそうな顔付きだからかすげぇイラっとする。
いずれ軽薄なナンパ野郎になりそうな顔だ。
いや、俺なんだけど。
女たちにキャーキャー言われそうな苛つくイケメン予備軍め。
いや、俺だけど。
困ったな。
これ、男に嫌われるタイプのイケメンにならないよな?
◇◇◇
「おはようございます、アル様」
「………おはよう、ミネルバ」
着替えて顔を洗い階段を下りていくと四十代くらいの人の良さそうな女性がいた。
俺の記憶ではなくアル、アルタ=ベル=カスターニャの記憶によるとアルが生まれた時から世話をしてくれているミネルバという侍女だということが分かる。
なんか妙な気分だな。
見知った記憶に常に既視感が重なってる、みたいな。
「朝食の用意ができております」
「………分かった」
おっと、考え込んでたせいで反応が遅れた。
俺は返事をして食堂に向かう。
一目見て価値のある調度品や展示が計算された配置をなされた通路を進んでいく。
食堂に着くまでに何人かのメイドとすれ違い、頭を下げられ挨拶をされ、それに手を軽く上げて返す。
やれやれ、正直頭を整理する時間が欲しいけど、いつも通りにしないと怪しまれるな。
正直起きてから今の今まででも、ドッキドキなわけだが。
これで記憶がなかったらもうどうしようもなかったわけだが、分かってて記憶ありありで転生させたんなら、まぁあの神とやらも気が効くじゃないの。
◇◇◇
ちなみに俺の後ろにはお付きの侍女がおり、着替えや支度も手伝ってもらった。
若い女の子に服を脱がされたり色々されて反応しそうになったが、なんとか耐えきったせいで朝から疲れたな。
その後食事を終え、座学の授業を受け、昼食を挟んで指南役の先生に剣術と魔法を教わる。
そして作法や習い事を済まし、入浴を終えるとようやく一日が終わった。
「………………。」
さて、いつも通りの普通な1日を終えたわけだが。
改めまして。
スーッ…
よりによって貴族とか、一番自由のないジョブだろうが!
少しは考えて転生させろよ自称神!