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第17話〜侍女兼魔法の先生シュリアの愛情

「それでは今日は魔力とその性質についてのおさらいと、初級魔法の練習です」


初めまして、私はカスターニャ伯爵家に勤めさせていただいております、アルタ様付きの侍女シュリアと申します。


私がこの屋敷でお仕えするようになって、もう9年ほども経つでしょうか。


それまで私は冒険者として各地を旅したり、王都の魔術ギルドに所属して魔法を研究したり、その伝で魔法学の家庭教師のようなこともしてきました。


私の年齢ですか?


今年で52歳になります。


まだまだ若輩者ですね。


私は世間で言うところの魔族と人族のハーフですので、人族の成人女性よりやや上といった外見です。


魔族は総じて内包する魔力が多いからか寿命が長いので、若い期間が長いのです。


父親が魔族で母親が人族。


人族と魔族は国や地方によっては敵対的である場合がありますが、中には友好的な場合もあります。


人族も肌や髪の色が異なるように、魔族にも多くの部族がいるのです。


父は魔族の中でも人族と友好的な部族で、外見もほぼ人族と変わりません。


私の銀髪は父親から遺伝したものですが、寒い地方の人族にも銀髪の者がいるのでめずらしがられるだけで、私が魔族とのハーフだと気付いた者はいません。


魔力を見ることのできる魔眼を持つ者には、私が魔族並みの魔力を持つことは気付かれるでしょうが。


イナホ王国では魔族との関係は中立ですが、中には魔族というだけで排斥しようとする愚かな者が少なからずいるので、この屋敷では主人であるアルベルト様以外私がハーフであることは知りません。


たったの半世紀と少ししか生きていない私でも、何度か排斥されかけた経験があります。


別に恨んでいるということもありませんが、どうしても周りと距離を取ってしまいがちですね。


長年旅をしてきたこともあり、寿命の関係で外見の変化があまりないのもあり一ヶ所に留まれなかったので表情の変化が乏しいのも原因ですね。


それにどうしても人間は年齢は私よりもずっと下なので、口調も厳しくなりがちですし………。


ここ数年は可愛らしい小物類や人形などを集めて自身を慰めるようになってしまいました。




この屋敷で侍女として働くこと8年。


三男であるアルタ様の魔法学の講師の役割を申し付けられました。


魔法学の勉強は前半は座学、後半に実践形式になります。


アルタ様のことは産まれた時から存じております。


何せ身の回りのお世話は全て私がやってきたのですから。


52歳なんて小娘もいいところですが、アルタ様のお世話をしながら、その成長のご様子を見守ってきた身からすると、まるで我が子のように愛情を感じてしまいます。


これが母性と言うものなのでしょうね。


生娘が何を言ってるのかと、笑われてしまいそうですが。




最近、といってもここ数年ですが、同年代の遊び相手兼侍女としてマリアが勤めるようになりましたが、二人とも本当に可愛らしいですね。


長く見てきた分、アルタ様の方に軍配が上がりますが。


毎晩アルタ様を寝かし付け、愛らしい寝顔を堪能できるのが私の特権のようなものですね。


最近では起こさないよう額にキスをして、普段話せないようなことを語りかけることが日課になってしまいました。




そうそう、アルタ様のことといえば。


アルタ様の魔力は一言で言えば異常です。


その量も質も。


父親であるアルベルト様も、奥方様も混じり気ない人間だったのですが、アルタ様の魔力量は並の魔族どころか、冒険者時代に遭遇したドラゴンすら上回っているように感じます。


そして、だいたい適性のある人間でも魔法を使うには才能と努力、そして生まれ持った魔力が必要になるのですが、アルタ様は一度の説明で私のお教えする魔法をことごとく再現してしまわれました。


ほんの小さな火種を出す程度の魔法でも、使える者は三人いれば一人使えればいい方だとはよく聞きますね。


この世界のあらゆる生物、物質、空気中に魔力は含まれていますが、それを魔法として扱えるのは、人族では半数ほど。


そしてそれを実践で使える者はほんの一握りです。


魔力総量はモンスターを倒したり修行を積んだりと経験を積めばそれなりに増えますが、アルタ様の魔力量はあきらかに人族の限界を越えています。


これは特殊な″加護″でも授かっているのでしょうか?


アルタ様は同い年の子供たちに比べて成長が遅れているように見えますが、もしかしたら余りに魔力量が多すぎて魔族のように成長が遅くなっているのかもしれませんね。


魔王が一定以上の力を蓄え、世界を侵攻すると勇者が世界に産み落とされる、というのは魔族に伝わる言い伝えでしかないと思っていたのですが、まさか………。




私は今日もアルタ様を寝かし付けた後、額にキスをしてとりとめのないことを独白します。


あり得ないほどの魔力量と素質を持った男の子。


私は見たことはありませんが、剣の指南役のロバートもアルタ様には才能があると言っていました。


アルタ=ベル=カスターニャ。


血は繋がってないし、たぶんこの想いは伝わってないけど、我が子のように愛している可愛い子。


最近は表情がコロコロ変わるようになって、活発になりました。


何事もなければきっと貴族の三男として、騎士団かそれに準ずる仕事に就くことになるでしょう。


ですが、アルタ様、この子はどこか型にはまらず、自由に羽ばたいていってしまう、そんな気がします。

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