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第14話〜侍女マリアの独白

最近若様のご様子がおかしいです。


いえ、おかしいというか、別人みたいというか………。


少し前までの若様は何にも興味を示さない、言葉は悪いですがお人形のような方でした。


決められたことを淡々とこなすだけでした。


お食事も、お勉強も、決められたことだからこなしている、といった感じでした。


まるで魂のない人形が、生きるためだけに生きている、そんな風にわたしは感じていました。


それは女性であるわたしから見ても可愛らしい容姿をした若様ですから、余計にそう思えたのかもしれません。




わたしは物心つく頃には若様のお世話係をさせてもらっていましたが、少し前までは何を考えているのかまったく想像もできないほど、若様は感情を表しませんでした。


毎日、毎日同じように朝起きて、朝食を食べて、お勉強して、お昼を食べて、お勉強して、夕食を食べて、お休みになる。


その繰り返し。


お世話係とはいえ屋敷で雑用を言いつけられるわたしの方が変化のある毎日を送っているくらいです。


若様が何を考えているのか、何が好きで嫌いか、どう感じているのか。


何年も身近にいながら、わたしは若様のことを知りませんでした。


本当に人形なのかもしれない、なんて思ったこともあります。


それほど若様は淡々とした方でした。




ですが、今の若様は何と言いますか、人間味に溢れています。


これが母の言っていた″ししゅんき″というものなのでしょうか?


まず目付きが変わりました。


ただ前だけを見ていた無機質な目が、最近では頻繁にメイドの胸や顔に向けられています。


すぐそばでお仕えするわたしには分かります。


一人一人にはチラ見程度でも、常にそばにいるわたしからしてみれば挙動不審です。


ましてやあの何にも興味を示さなかった若様ですから。


屋敷で働くメイド、侍女など貴族様からしてみれば空気も同然です。


身分が違えば扱いも異なり、平民のメイドなど置物と大差ありません。


若様のお父様であるアルベルト=ベル=カスターニャ伯爵様も、年に数回この屋敷に訪れた時には若様以外と業務以外でお話しすることなどありませんでした。


若様も前まではわたしなど眼中にありませんでした。


たまに目が合うことはあっても会話をすることなどなかったですし、話しかけられる時は用を言いつけられる時だけでした。


それが主と従者として当然の在り方です。


貴族の中には使用人にもおおらかに話しかける方もいるそうですが、少なくともこの屋敷ではそうでした。


それがいつの間にかよくわたしも若様に見られるようになりました。


その、特に最近成長し始めた胸元の辺りを………。


それだけでなく、なんと質問や日常的なことを話しかけられるようにもなりました。


そしてたまに″おいしゃさんごっこ″?という遊びをするようになりました。


わたしももう10歳になりますし、胸も成長し始めてきて羞恥心とかもあるのですが、侍女風情が拒否することなどできません。


むしろ綺麗に整った顔をした若様に迫られると、胸がドキドキするというか、これが年上の侍女仲間から教えてもらった″ご主人様とのいけない関係″?なのでしょうか。


これまで淡白だった若様が情熱的になったというのは喜ばしいことなのでしょうが、さすがにお手付きになるのには不安を感じる今日この頃です。

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