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第1話〜脱線事故

仕事の忙しさに鬱屈してノリと勢いのまま書いた作品です。


そんな作者のメンタルが主人公に現れているので、好き勝手に行動します。

俺の名前は宮嶋崇みやじまたかし


どこにでもいる普通の若者だ。


現在人生最後の夏休みと名高い大学生活をそこそこにエンジョイしている。


といっても成人してから早数年、もう社会にいつ羽ばたいてもおかしくない年齢ではある。


大学生活ももう4年目、就活に日々奔走する毎日を送っているわけだが。


基本的に俺は汗水垂らして働くのは好きじゃあない。


特にこだわりのある趣味というものはないが、自由に好きなことができて、それを邪魔されない生活が理想的だ。


別に高給取りになりたくないわけでもないが、土日まで仕事で埋め尽くされたブラック企業で働きたくなんかない。


適度に働いて金を貯めて、好きなことをやって、たまに悪友達と遊べれば満足だ。


◇◇◇


そんな俺だが、初夏を迎えたある日、クールビズでラフなシャツ姿で電車に揺られていた。


本命の企業の講習会に参加するためだ。


さすがに現地に着いたらきちっとした格好をしなければいけないが、さすがに移動中まで窮屈な思いをしたくはない。


毎朝きっちりした服装で夜遅くまで働く社会人の皆様、お疲れさまです。


別に馬鹿にしてるわけでもないが、少しの手間やお金で代用して楽になるなら、躊躇いなくそれを選ばしてもらいます。


それが俺という人間なんだからしょうがない。


◇◇◇


窓の外に見える代わり映えのしない景色を何となく眺めつつ、適当に音楽でも聴いていようかと鞄を探っていたその時、急に電車が大きく揺れた。


小さな悲鳴がどこからか上がって、今の振動でよろめいた誰かの驚いたような声が聞こえる。


揺れ自体は一瞬だったかもしれないが、妙に長く感じられた。


次いで、まるで段差でも乗り越えたように一瞬だけ浮遊感が襲ってくる。


いきなり窓越しに見えていた景色が暗くなり、全身が弾けるような衝撃と共に俺は意識を失った。


◇◇◇


気付くと俺は真っ暗な闇の中にいた。


立っているのか座っているのかも分からない、不思議な空間。


夢かとも思ったが、それにしては思考は妙にクリアだ。


そして何が起こったのか思い出す。


電車の中であった出来事を。


おそらくだが…


電車の脱線事故に巻き込まれたのだろう。


直前に段差を越えたような振動もあったし、そこでレールから外れたのかもしれない。


電車は高台を通っていたので、脱線してすぐ横転したのだとすれば景色が急に暗くなったことも納得できる。


◇◇◇


なんて冷静に考えてみたが、これは現実逃避とあまり変わらないな。


現状理解と冷静な思考は事故に遭った際になくてはならない重要な要素らしいけど。


しかし冷静になればなるほど今の俺がいったいどんな状況なのかを考えたくなくなる。


こうやって考えていられるということは奇跡的に助かったのかもしれない。


だが、電車の脱線事故に巻き込まれたのだからどんな奇跡が起こったとしても、打撲や擦り傷くらいはできているだろう。


なのに何も感じない。


痛みはおろか違和感すらもない。


立ってるのか座ってるのか、寝そべっているのかも分からない。


電車が横転したということは俺の体も少なくとも横になっているはずだが、床や壁、天井の感触どころか五感からの情報が一切入ってこない。


これはまさか、やっちまった?


いわゆる植物状態というか、脳は生きてるけど体が死んだ状態か?


脊髄か頭にでも衝撃を受けていかれてしまったのかもしれん。


まさにお先真っ暗。


考えることしかできない深淵の世界だ…

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