2話 姉弟はステータスを確認する
ハーレムタグは保険です。
ステータス関連は手直し入るかもしれませんが、とりあえず出来ました。
「……スースーして恥ずかしいんだけど。後、尻尾に風が当たる感じが……」
「確かに、尻尾がちょっと……でも、優くんは元々可愛いですし、女の子でも違和感はありませんよ?」
「そう? ならいいかな」
それでいいのかな、と思わなくもない紗香。
優花的にはいいのだ。紗香に褒められたなら、どんな事であろうと大体は喜ぶ。
不機嫌そうな顔から一転、ニコニコしながら先程のことを思い出す。主にステータスや装備についてだ。
「鉄の短剣と弓と腕輪、さや姉は弓と短杖と指輪……うーん、種族的な相性と、本人の好みかな」
武器に特別な効果は無いようだが、優花の腕輪には筋力強化、紗香の指輪だと敏捷強化が施されていた。
上昇値はどちらも同じで20。
ちなみに、2人のステータスはこちら。
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名前:桜城 優花
性別:女
種族:白狐Lv1
第1職業:隠密騎士Lv1
第2職業:【使用不可】(解放条件:種族Lv20)
加護:246/250 (+150)
魔力:218/300 (+100)
技力:131/150 (+50)
筋力:47 (+15)(+20)
耐久:25 (+10)
敏捷:50 (+30)
器用:55 (+25)
精神:61 (+20)
◇スキル◇
『隠密Lv1』『言語理解』
『白炎Lv1』『魔力操作Lv1』
『弓術Lv1』『短剣術Lv1』
『体術Lv1』
◇ユニークスキル◇
『記憶解放Lv1』『取得経験値上昇』
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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名前:桜城 紗香
性別:女
種族:姫猫Lv1
第1職業:魔道弓術士Lv1
第2職業:【使用不可】(解放条件:種族Lv20)
加護:130/130 (+50)
魔力:400/400 (+150)
技力:150/150 (+50)
筋力:11 (+5)
耐久:19 (+5)
敏捷:114 (+60)(+20)
器用:53 (+30)
精神:45 (+25)
◇スキル◇
『杖術Lv1』『言語理解』
『弓術Lv1』『魔弓術Lv1』
『魔力操作Lv1』『風魔法Lv1』
◇ユニークスキル◇
『不屈の闘志Lv1』『取得経験値上昇』
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「騎士なのに隠密……いいのかな?」
騎士なら正々堂々というイメージが強い。
そこに隠密が入るのはおかしいので、恐らくは優花専用の職業なのだろう。種族に関しては見た目通りである。
「姫猫、不屈の闘志……」
一方、紗香の羞恥心は限界に。
まあ、かなりイタい種族名に、女らしくないユニークスキルが来てしまったのだから仕方ない。なお、優花は優花で性別が女と表示されていることに苦笑していた。
そして、優花の加護、魔力、技力が減っている事にお気付きだろうか。
先程、優花が自分の手を短剣で刺すという奇行に走ったのだが、足を刺そうとした時点で紗香に泣いて止められた。ゲームかすら分からないのだから当然である。
手を刺せば痛みが走り、血が出る。
だが、短剣を抜いてすぐに、巻き戻しのような傷の再生が始まった。同時に確認していた加護も減っていたので、加護がある限りは傷を治してくれると考えていい。
ただし、即死級の場合は不明。
魔力は記憶解放を使おうとした際に消費。残念ながら必要魔力が多かったようで、急激に魔力が減るのを確認した優花がキャンセルした。
技力は、短剣術、杖術、弓術等で使用出来る技だ。技とは言っても、どこぞの浮遊城のように体が勝手に動く剣技では無い。
斬撃を飛ばしたり、斬った敵を状態異常をしてみたりと、"原理を把握していないと使えない"という点以外は卑怯とも思える効果だ。
パラメータの役割はこうだ。
〈加護〉
傷を治せる。無くなっても死なない。
〈魔力〉
魔法、スキルを使うのに必要。最大値によって魔法の威力が上下する。
〈技力〉
技を使うのに必要。
〈筋力〉
重い物を持ち上げたり、敏捷を生かすのに必要。
〈耐久〉
体力、防御力。
〈敏捷〉
瞬発力。継続するには筋力が必要。
〈器用〉
体の扱いが巧くなる。魔力を扱いやすくなる。
〈精神〉
状態異常・攻撃魔法の耐性。数値によって魔力の質が上下する。
それと、パラメータの横に付いている()の1つ目は職業補正で、2つ目は装備補正。内訳であるため、パラメータから2つを引くと素の状態が分かる。
「言語理解ってゲームなら要らないよねー……」
「多分イタズラですよ。きっと……もしかしたら……?」
ゲームなのに痛みがあるのはおかしいし、傷口も塞がるまでは見えていた(このゲームは15歳以上)。
ちょっとだけ、異世界だったらいいなと思う紗香。
メニューにはストレージ機能もあり、多少のお金も入っていて、自由に生きられるゲームのような世界。
優花も、性別さえ変わっていなければ……
ここで、優花は気になっていた事を聞いてみた。
「そういえばさ、僕の見た目ってどんな感じ?」
「どんな感じ……」
「ほら、可愛いとか可愛くないとか」
「えっと……」
立ち止まった紗香はじーっと優花の顔を見つめるが、暫くすると頬は徐々に赤みが差していき、手が優花の頬に添えられて……
「あの、さや姉?」
「あっ、えと、ごめんなさい……こんな美人さんが優くんなんだって考えたら、体が勝手に……」
「へー、美人……見てみたい気もするね」
なんて言いつつ、近づいてくる紗香に合わせて目を閉じる優花。いつもより積極的なのを不思議に思っていると、紗香の舌が唇を割って口内に侵入してくる。驚いて目を見開いた優花も、それに応えて舌を絡め始めた。
数分ほど経ち、満足したのか紗香が離れる。
「……もしかして、女の子の方が好き?」
「そ、そんな事! ……ありません、よ?」
言っている内に自信が無くなってきたらしく、俯いて優花の顔を上目遣いに見る。ニコッと笑い姉の手を取って歩き出すが、誰もこれで終わりとは言っていない。
「じゃあ、好きじゃないんだ?」
「あぅ……それは……前の優くんは見慣れてましたけど、今は慣れてないからというか……本当に、優くん以外は好きじゃないんですっ!」
「そっかそっか、なら良かったよ」
ニヤニヤする優花を見て自分が大声を出していたことに気づく紗香。周りに人が居ないか確認するも、特に誰も見当たらず一安心。
何も無い所で転んじゃって、「今の、誰も見てないよねっ!?」と確認しちゃうあれだ。
一応、"人"は居なかったものの……
「キュー!」
「「あ、ウサギ」」
魔物が居ないとは言っていない。
予想外の登場で、反射的に弓を射る2人。ウサギは角を2本生やしてお亡くなりになった。
数々のゲームを2人でプレイしていたのもあり、可愛らしいウサギ程度で動揺することは無い。
《隠密騎士がLv2になりました》
視界端に見えるログを確認しつつ、ウサギを暫く眺める。
「……消えないですね」
「まさか、自分で解体しろと?」
「ゲームとしてはおかしいですよね?」
「現実だったら普通だけどね」
普通の高校生に解体が出来るはずもなく、優花がストレージに収納する事で後回しにした。
「あ、今気づいたんですけど、パーティー設定っていうのがあるみたいですよ」
「そうなの? じゃあ――って、言う前に送られてきたし……」
紗香から送られたパーティー申請に同意すると、視界の左上に3本のバーと紗香の名前が表示された。
それからは特に何も無く、草原を進むこと数十分。そろそろ休憩しようかと思っていたところで街が見えた。
外壁は実にファンタジーな雰囲気を醸し出しており、2人の横を通り過ぎる馬車からは話し声が聞こえる。外壁の高さからすると、相当規模が大きい街なのだろう。
(これが、ゲーム?)
紗香の表情は心做しか暗い。
本当に異世界だとして、何故自分達なのか、2人だけで生きていけるのか、他にも来ている人がいるのか、と今更ながらに不安が押し寄せてきたのだ。
(大丈夫、私には優くんだって居るんですから)
元は弟だった絶世の美少女を見る。
優花に関しても、どうして女になったかは全く分かっていない。だが、本人はそこまで気にしていないようだし(紗香が好きだと言ったから)、楽観的でも悲観的でもなく、冷静でありつつもこの状況を楽しんでいる。
(優くんが居なかったら? ……だめです、そんなの耐えられません。死んじゃいます)
主に優花成分が足りなくなるから。
「さや姉、考え事をしながら僕の顔を見る……のは別にいいんだけど、もうすぐ着くよ?」
「ふにゃ? ………………今のは、えっと、」
「なるほど、猫耳だから『にゃ』と」
「ちがっ!? わ、態とじゃないんですっ!」
「うんうん。そうだねー、さやにゃん」
「うぅ……優くんのバカぁ……」
などと紗香をからかっている間に門まで着いていた。まあ、紗香は仕返しする気満々だったりするが……完全な自業自得だろう。
普通に通ろうとした2人だったが、ここで問題が起きた。20代に見える門番の男が、ぼーっとしたまま反応しないのだ。
「あのー、通りたいんだけど……」
「………」
「……あれ? 無視?」
否、見蕩れているだけだ。
見た目は、白と黒で正反対。しかし、どちらも近くで見る機会がない、非現実的な程の美少女。更に、男なら視線が吸い寄せられるであろう足は惜しげも無く晒されており、何の嫌がらせか、下着(上)を着けていないせいで胸が強調されていた。
一応言っておくと、優花の胸はそこそこある。本人は全く喜んでいなかったが。
その門番を見て、『なるほど、さや姉可愛いもんね。仕方ないね』と自分がそこに含まれているとは微塵も思っていない優花。
だが、これでハッキリした事がある。
((この反応はNPCじゃない))
NPC――ノンプレイヤーキャラクター。
これに関しては、今でもある程度決まった動きしか出来ない。何度話しかけても同じ事しか言わない、というのは無いものの、プレイヤーの容姿で反応が変わることは無い。もしそこまで進化しているとしても、ゲーム以外で先に使われているだろう。
2人が頷きあっていると、今までなんの反応も返さなかった門番が慌てて頭を下げる。
「はっ!? も、申し訳ありません!」
「き、気にしてませんから、頭を上げて下さい」
急に頭を下げられて、紗香も慌てていた。
「それで、通るのに何か必要?」
「み、身分証と100エルが必要となります!」
「? ……はい、これでいい?」
身分証と銀貨2枚を取り出す。
ゲームの設定的には、とある小さな村から出てきたらしいので、身分証自体は持っている。
通貨は、銅貨(1)、大銅貨(10)、銀貨(100)、大銀貨(1000)、金貨(10000)、白金貨(100000)、という風に紙幣は使われていない。
「確認出来ました。……それにしても、よく武器も無しにこの街まで来れましたね。……もしや、アイテムボックスが使えるんですか?」
「え? あー、そうそう!」
「それは羨ましい……おっと、失礼しました。では、お通り下さい」
「はい、ありがとうございます」
「お仕事お疲れ様」
2人が居なくなった後、門番の一言がこちら。
「名前、聞いとけば良かったな……」
2人の名前を知るのは、もう少し先の事。
え? 獣耳の必要性?
ほら、身体能力とかでただの人間より上だから……というのは建前で、獣耳が大好きだからです。もふもふ……もふもふさせろー!(暴走)
この後、にゃんこに腕を引っ掻かれました。