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1話 姉弟は日常を満喫……〈日常、終了のお知らせ〉

こんにちは、こんばんは。

わけわかめな話を書きたくなりました。

姉と弟のイチャイチャも。


という訳で、プロローグ、どうぞ。

 この世界には、VRという物が存在する。ヘッドギア1つで仮想世界にダイブ出来る画期的な技術。

 数十年前までは小説の中でしかありえなかった物が、現代社会では当たり前のものになっていた。


 そして、その中でもFPSというジャンルのあらゆる作品をハンドガンとナイフのみで制したプレイヤーが居た。


 大会に出れば必ずトップ。


 ハンドガンで300メートル先から狙い撃ち。


 弾を視認してから回避。


 背後から忍び寄り、ナイフで首を落とす。


 これらは全て1人のプレイヤーが行ったことであり、チート行為は一切していない。

 ただ、それを信じない者は多く、直接批判されることも多かった。……そのせいだろうか? 最強と謳われたプレイヤーは、いつの間にか姿を見せなくなったのだ。


 それでも、


「私達は、君に会える日を心待ちにしている」


 君が居るべき、本当の世界で――


 ◆◇◇


(変な夢だったなぁ……)


 夢から覚めた彼は、目を開けずにそんなことを考える。


 ここはとある高校の屋上。

 彼の名は桜城 優花。高校1年生。まだ入学して間も無いのに、屋上で堂々とサボっていた。


 ……のだが、


「優くん、そろそろ起きた方がいいですよ」


 真上から聞き慣れた声が聞こえ、優花は目を開く。

 頭の後ろは枕代わりにした鞄ではないし、硬い石の感触でもない。答えは1つだけ。


「さや姉……これはどういう状況?」


「? ……膝枕と、頭を撫でてますね」


 答えは2つだった。

 そして、不思議そうな表情を浮かべる女性に対し、デフォルトなジト目でお願いする優花。


「……離していただけないでしょうか」


「だーめ。授業をサボった罰なんですから」


(さや姉にとって、罰ってなんなんだろう)


 優花がさや姉と呼ぶ少女は桜城 紗香。

 義理の姉で、高校3年生。胸はかなり大きく、身長は151センチ。"優花曰く"世界一の美少女らしい。


「……そんなに嫌でした?」


 優花が無言だったせいで不安を覚えたのか、世界一の美少女が不安げになってしまった。

 しかし、優花に慌てる様子は見られない。


「いや、嬉しい。さや姉の事は好きだしね」


「あ……ふふ、私も大好きですっ♪」


 姉弟ではあるものの、2人は付き合っている。

 人に言えば白い目で見られるのは理解しているので、2人きりの時以外は普通の姉弟として振舞っているし、周りに気づかれたことも無い。


「じゃ、帰ろう?」


「はい、帰りましょう」


 下校途中は手を繋いだりしない。誰が聞いても仲のいい姉弟だと思うように気をつける。

 ……まあ、弟でも嫉妬の視線だけは突き刺さるが。


 人通りが少ないとしても、


 どんなに互いを愛していても、


 今はまだ、誰にも話せない。

 隣に居るのに触れ合えないもどかしさを感じて、優花の足は一刻も早く家へ辿り着こうとする。

 何も言わず並んで歩いていた所を見るに、紗香も同じ事を考えていたのかもしれない。


 息を切らしながら家に入ると、


「さや姉……」


「優くん……」


 靴も脱がずに口付けを交わす。

 外でイチャイチャ出来ない反動か、一緒に帰った日は毎回こうなるのだ。しかし、いつまでもこうしている訳にもいかないので、5分程すると優花から離れた。


「あっ……こほん。優くん、晩御飯は何がいいですか?」

 

「……もう少ししたいなら、」


「晩御飯は何がいいですか?」


「別に無理しなくても、」


「晩御飯は、何がいいですかっ!」


 どうしても無かった事にしたいようだ。

 切なそうな声にドキッとした優花だったが、当の本人が否定(?)するので仕方なく答える。


「さや姉」


 そんな事を言ったのに、紗香は何故か怒らない。


「っ……お、お風呂の後なら……」


 ちょっとした冗談だったのに、と優花は苦笑するが、紗香がそれに気づいた様子はない。

 それ以前に、夜は2人でやることがあるのだ。


「……肉かな」


 今度は真面目に答える。

 少し早いが、紗香は料理の方を始めて、優花はテーブルを拭いたりお風呂掃除を済ませた。


 紗香の手料理を食べ、お風呂に入った後は……


「始めようか」


「……はい」


 ……ゲームを。

 諸君、残念ながらムフフな展開ではない。

 昨日発売されたばかりのVR専用RPG。基本的には一人用となっており、直接繋いだ場合は4人まで楽しめる。


 このゲームの売りは、ゲーム内では現実の1日が5日になる……つまり、5倍過ごせるという点。

 2人はこれを目的にゲームを予約していたので、他はおまけ程度にしか考えていなかったりする。分かりやすく言うと、イチャイチャしたいのだ。


 次に、多種多様な種族があるという点。自分では決められないのだが、性格や得意分野によってシステムが自動設定してくれる。それがまた面白いと評判に。


 お次は、今までにない程五感が再現されているという点。従来のゲームでは意識していなくとも違和感を感じてしまったが、今回のゲームはそれがかなり改善されているらしい。


 最後は、オリジナル職業とスキル。

 オリジナルとは言っても、自分で作成出来ると言う訳では無く、システムが個人個人に合ったものを最低一つ自動作成してくれるのだ。

 そして、オリジナルの職業にはオリジナルのスキルも付属されている。

 職業レベルが上がると使えるようになるのだが、特殊過ぎて扱いが難しいものや、汎用性はあるが特殊なものに比べると性能が劣るもの等……まあ、無数にあると考えていい。


 世界観やその他細かい部分もあるが、大まかには今挙げた点が売りと言えるだろう。



 ……というのをサイトで見た2人は、ベッドで横になり、音声コマンドを入力する。


「「ウルティマ・リソルサ、起動」」



 ◆◇◆




 優花は、昔から自分の容姿に疑問を抱いていた。

 何故かと問われれば、答えは簡単。優花が白髪碧眼だからである。それに比べて、紗香達家族は普通の日本人と変わりない。

 だから、中学に上がった頃、優花は両親にこう聞いた。


「僕の本当の両親は今どうしてるんだろうね?」


 実のところ、桜城家の両親は、優花の両親を探していた。

 しかし、何一つ手掛かりはなく、優花にも中々言えなかった。

 ただ、優花と桜城家は違いが多過ぎるため、口に出さずとも優花や紗香は気づいてしまうのだ。


 その時、思春期真っ只中だった紗香は優花に向けて言ってはいけない事を言う。


 それが何だったか、優花の記憶には無い。それほど、優花にとっては絶望的な一言だったのだろうか。


 とにかく悲しかった。


 死ぬより辛かった。


 だから、ゲームに没頭する。

 両親に迷惑はかけなかったし、大会の賞金でちょっとした小金持ちにもなっていたのだ。


 そんな優花を見ていた紗香は、何度も謝ろうと思って、でも許して貰えない事が怖かった。

 優花が紗香を避けていた事も一因ではあるが。

 それが続けば、段々会いにくくなるのも必然。

 紗香は、高校に入るのと同時に一人暮らしを始

 めた。


 やがて夏休みになり、紗香が帰って来た時の事。

 両親は、紗香と優花に海外旅行を提案してきたのだが、優花は紗香を避けるように断り、紗香は避けられたことに落ち込んで断った。


 既に予約は済ませてあったらしく、仕方なく両親だけで出かけた。


 ……しかし、帰っては来なかったのだ。


 飛行機の墜落事故。

 生存者は居たものの、その中に両親は含まれていない。紗香は、優花は、自分を責めた。


 2人が早く仲直り出来るように旅行を提案していたのは間違いない。なら、もっと早く仲直りしていればこんな事にはならなかった、と。


 互いに謝りながら泣いた。涙が枯れるまで、ひたすらに泣いた。

 そうして辿り着いた2人の思い。


『もう後悔したくない』


 周りから見れば、親の死を悲しまない子供に見えたかもしれない。

 だけど、2人は家族を大切にしようと気丈に振舞う。


 辛くなったらお互いを頼ればいい。


 失って後悔するよりはずっといい。


 そんな風に、普通の家族よりも互いを知っていくと、家族に抱くものとは違う感情が芽生え始めた。

 家族なのは変わらない。でも、それと同時に、血の繋がらない姉弟であることも事実。


 家族を大切にするあまり、他の異性と関わりが薄かった2人。間違い、すれ違い……ようやくこの関係を掴み取ったのである。


 後悔したくないから、


「さや姉を……」


「守って見せる」「守って見せます」


「「えっ?」」


 気づけば、白い空間に立っていた優花。

 その隣には紗香が立っており、今まで見ていた回想のらしきものは2人とも見ていた様子。


「優くん……酷いこと言ってごめんなさい!」


 痛いくらいに抱きしめながら謝る紗香。覚えていないくらいショックだったと考えるのなら、何と言われたのか気になってくる。お姉ちゃんな紗香は何を言ってしまったのか。


「……大丈夫、もう気にしてないから」


「本当ですか……? 無理してたり、怒ったり……き、嫌いになったり、してませんか……?」


「大丈夫」


 紗香が震える声で尋ねると、覚えてなくてよかったかも、と思いつつ頭を撫でる優花。

 恋人を嫌う程の言葉とは一体……?


『開始まで、残り10秒』


「あれ、キャラ作成とかないんだ」


「……名前も決めてませんよね?」


「そうなんだよね………ん?」


 カウントが0になる直前、優花の目には人が見えた気がした。


「…リ……爆発……ろ」


 そんな声も、聞こえた気がした。


 ◆◆◆


 晴れ渡る青空……で飛び回る怪鳥。


 昼間から見える美しい月……が2つ。


 視界に映る時間表示。


「ゲームが始まっ……」


 ――ている、と続けようとした優花だが、違和感を覚えて中断した。違和感とは、声である。

 草原らしき場所に倒れたまま確認。


「あ、あー……高い。喉が……あれ、細い」


 喉仏が存在しない様子。バグかもしれない。

 よく見てみれば、手は白いし細いしスベスベ肌だし、バグが多いのでは……と困惑してきた優花。


「眩しいです……優く………ん、んっ?……ちゃん?」


「え? さや姉、何言って……」


「優くん、ちょっと動かないでください」


「あ、はい」


 後ろから聞こえる声に反応して起き上がろうとしたのだが、真剣な声に遮られてしまう。

 すると、紗香が優花の胸へと手を伸ばし、優花の視線もそちらに向かって……


「は、はは……あのさ、さや姉」


「なんですか、優……くん?」


「くんで、お願い……これって、どう見ても女の子的なあれじゃないですかね。というか、しっぽとかも見えるよ」


「はい……髪も、伸びてます……」


「……さや姉は、猫耳以外変わらないね」


「「…………」」


 草原に訪れた一瞬の静寂。

 混乱状態の2人には、風の音すらも届かない。


「「っっ!!」


 紗香は頭とお尻を、優花は全身を慌てて触り始める。しかし、悲しいかな……紗香には猫耳と猫しっぽが、優花に至っては女の子の体&キツネ耳とキツネしっぽの感触が伝わってくるばかり。


 虚しい。


 ふと、紗香の見た目が気になった優花。

 耳としっぽだけかと思ったが、よく見ると瞳も猫目になっている。まあ、何を言いたいのかと聞かれれば……


「僕の目は何か変わった?」


「はい、少しだけ。ただ……」


「ただ?」


「女の子になっているから、という可能性も……」


「ぐはっ」


 優花、胸を抑えて蹲る。

 しかし、胸の感触を感じてしまい、ついでに自分が着ている純白のワンピースを見て目が虚ろになっていく。


「おかしいなぁ……性別はどのゲームでも変更不可なはずなんだけど……耳としっぽは種族があるからともかく」


「えっと、現実と違う性別になっていると、戻った時に自分が男性か女性か分からなくなってしまう、というあれですね」


「あー、ニュースで取り上げられてた。初期は出来たんだよね……僕も興味本位で試したけど、五感に違和感がありすぎて性別云々は気にならなかったかな」


 それに比べて、このゲームのリアルさは……と考えた所で思った。


(チュートリアルも無しにこんな場所へ……)


 最初はどこかの街へ飛ばされるはずなのだが、2人は街どころかチュートリアルすら受けていない。完全無防備な状態で外に居たのだ。


 そんな優花の心を呼んだかの如く、視界には無いはずのものが現れる。すぐに紗香の方を向けば、同じようにこちらを向いた所だった。


「……メールを受信しました、って」


「なんでしょうか、これ……」


 このゲームは基本的には一人用で、絶対に2人以外のプレイヤーは居ない。そうなると、この状況に関わっている何者か、と考えるのが妥当だろう。


「ふー……『まず、てめぇら姉弟に送る一言はこれだ。ざまあみろリア充ッ! 爆ぜろッ! 俺様の前でイチャコラすんじゃねぇッ!』……誰だ貴様、としか」


 人前でイチャついた覚えのない2人。

 可能性があるとすれば、謎の白い部屋くらいだ。


「『俺様が異世界転移させてやった。だが、ウザいてめぇらに説明なんざしてやらねぇ。左手で指を2回鳴らす動作をすれば、システムメニューが開く。あとは勝手にやれ。んで爆ぜろ。じゃあな』……終わり? というか誰……」


 仕方なく、意味不明なメールは閉じる。

 優花も紗香も首を傾げるしかない。このゲームの設定に、異世界転移などというストーリーはあっただろうか。


 考えても仕方ないので、メニューを開いてみるしかない。人差し指と親指を合わせ、素早く2回擦る。鳴らしてはいないが、透明なメニュー画面は開くことが出来ていた。


 指を鳴らす"動作"が必要なのであって、実際には音が鳴らなくても開くようだ。

 優花は、ある1点だけを確認してため息をつく。


「優くん、これからどうしますか?」


「それは、行動方針ってこと?」


 その問いに頷く紗香。


「そうです。確かに、異世界だなんて荒唐無稽な話は無いと思います。でも、ログアウトも出来ないみたいなので……」


「出来ないね」


 紗香だけでなく、優花も確認していた部分。

 セーブやログアウトという項目自体が存在しない。


「まあ、最悪の可能性を考えて……異世界に来た前提で行動すればいいんじゃない? NPCの反応を見ればゲームかどうかは判別出来るだろうし。……後は、絶対に死なないようにしようか」


「少なくとも、外部からの介入があったのは間違いありませんからね……異世界よりはデスゲームの方が納得出来ます」


 メールに姉弟、とあったのだから、システムが自動判別したとは考えにくい。何故なら、2人は血が繋がっていないからである。


 というか、


「異世界だったら困るよね?」


「凄く、困っちゃいますね」


「さや姉、女の子はダメ?」


「ど、どうなんでしょう? 中身は優くんですし、無理では、ないと……思いますけど……」


 2人一緒なら、デスゲームでも異世界でも割とありだったりする。優花が女になっていなければ。

 友人も居るのに冷たい、と思うかもしれない。そしてその通りだ。家族が第1、その他はどうでも良くなるくらいに下である。


 具体的にはこうだ。


 家族>>>>>>>>>>>その他


 そんな酷いシスコンは、姉と愛し合えなくなる事態を避けるべく行動に出た。


「ゆ、優くん……?」


 正面から抱きつき、顔をじっと覗き込む。

 同じ女であるために、優花の身長的な優位は1、2センチしかない。……それはそれでありかと思う優花。


「さや姉、キスしようか」


「え、でも、その……」


「問答無用!」


 いつもの癖でつい目を閉じてしまう紗香だが、優花はあえて途中で軌道をずらすと、頬に触れて湿り気のある音を立てるだけに終わる。


「終わったよ。無理にするのはあれだし」


 ポカンとする紗香にそう告げると、「そろそろ行こうか」と立ち上がる優花。

 しかし、紗香が袖を掴んでいた。


「さや姉、行かないの?」


「だめ、です……」


「……何が?」


「キスするなら……口にしてくれないと、ダメです」


 紗香に潤んだ目で見られた優花は、何を言うでもなく顔を寄せ、飽きること無く口付けを交わした。





 ……ここがゲームであろうと異世界であろうと、2人とっては愛を育む方が大切なようだ。

???「リア充爆発しろ」←誰だ貴様。


保護者自体は居ます。2人でアパートに住んでる的な。そこを変われ優花、と言いたいです。

……あ、次回はステータスを公開します。



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