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光と影
影は光のことが大っ嫌いでした。いつも自分の存在を脅かす、絶対に敵わない力を疎んでいました。
影は光に言いました。お前がいると俺は消えてしまう。俺の前から消えてくれ。
光はしぶしぶそれを承諾し、影の前から姿を消しました。
影はようやく、敵がいなくなりました。周りには暗闇しかありません。
念願だった、自身のみが存在する場所を手に入れたのです。
しかしそれと同時に、影は自分自身を見失ってしまいました。
俺は、どこまでが俺なんだろう。そもそも俺とは何なのだろう。
影は思い知りました。光がいたからこそ、自身は影でいられたのです。
影は曖昧な自身を手繰り寄せ、光の元を訪れました。
俺が悪かった。その言葉を聞いた光は、嬉しそうに耀きを強くしました。危うく存在が無くなりかけたのは、お仕置きだと思うことにしましょう。