39話 決戦・4
もう動くことはできない。ドラゴンの勝利だ。
誰もがそう確信した時……
ゴガアアアッ!!!
ゴーレムの巨大な拳がドラゴンを捉えた。
自身の損傷をいとわない攻撃に、さしものドラゴンも反応が遅れたのだ。
骨が砕ける音と共に、ドラゴンが大地に転がる。
大地が揺れて、土煙が爆発のように広がった。
致命傷ではないらしく、ゆっくりとドラゴンが起き上がる。しかし、翼は折れて、血は流れていて、戦える状態でないのは誰が見ても明らかだった。
「ドラゴンを下がらせろっ!」
ドラゴンは大事な切り札であり、唯一、飼いならすことに成功した貴重な存在だ。死なせることは許されない。
どちらにしろ、もう戦うことはできないが。
そう判断した聖騎士は、部下に指示を飛ばして、ドラゴンを運搬する専用の巨大馬車に乗せて、後ろに下がらせた。
それを確認した後、聖騎士はゴーレムに剣を向けた。
「今が好機! 総員、我に続けえええぇっ!!!」
「「「おおおおおおおおおおぉぉぉぉぉっ!!!!!」」」
ドラゴンの勇猛な戦いが人々の心に火を点けた。
騎士と冒険者たちは武器を手に取り、ゴーレムに突撃する。
それは、さながら雪崩だ。
様々な力が集まり、一つの流れになってゴーレムを飲み込む。
……今、最後の戦いが始まる。
――――――――――
怒号と悲鳴。
絶え間ない剣戟。
戦場は荒れ果て、平原の草木は戦火に飲み込まれた。
歩けなくなったとしても、ゴーレムが特大の脅威であることに変わりはない。
二本の豪腕が嵐のように荒れ狂い、暴力を撒き散らした。
ある者は重傷を負って戦線を離脱して、ある者は二度と目を覚ますことなく散って……
次々と人々が倒れていく。
それでも。
人々は諦めない。
否、諦めるわけにはいかない。
これが最初で最後のチャンスなのだから。
一心不乱に武器を振り、魔法を叩きつける。
そして……
オオオオオオオォォォ……
ゴーレムの弱々しい声が響いた。
右足だけではなくて、左手も砕かれていた。
胸部から頭部にかけてヒビが走り、中のパーツが見えていた。バチバチと火花が散っているのが見える。
もはや死に体だ。圧倒的な迫力は消えて、もう恐怖を感じることはない。
……それでも、まだ動いていた。
諦めることを知らないというように、豪腕を振り回し、ただ破壊を撒き散らしている。
「なんていう生命力だ、こいつ……」
聖騎士は息を切らし、武器を握っているのがやっとの状態だ。他の騎士や冒険者たちも似たようなものだ。
身体が限界を訴えてくるが、気合でそれを打ち消した。
あと少し。
勝利は目の前だ。
「……皆、いくぞ! トドメを刺す!!!」
「「「おおおおおおおおおおっっっっっ!!!!!!!」」」
この災厄を討ち滅ぼす!
それだけを願い、人々は武器を取る。
オオオオオオオオオオォンッッッ!!!!!
その時、絶望が、人々を、飲み込んだ。
「なん……だ、と……?」
戦場は、新たな戦場を生み出した。
響く咆哮は三つ。
平原の彼方に、新たに、ゴーレムが三体現れた。




