かみさまをたべたおとこ
あるところに かみさまが住んでいました
かみさまはとっても食いしん坊で お腹が減るとなんでも食べてしまいました
人々の夢や 希望や 幸せまで
お腹がいっぱいになるまで食べました
人々はそれではたまったものではありません
いつしか人々は かみさまをこらしめてしまおうと考えはじめました
しかし かみさまはとても偉く とても強いので誰も手出しできません
そこで 村一番の食いしん坊の男が かみさまと大食いで勝負することになりました
男は神様のところへ出かけると
「おれと勝負だ」とかみさまにいい
「やるだけ無駄だがやってやろう、私がお前の分まで食べ尽くしてやる、わっはっは」と かみさまは笑っていいました
ついに勝負の日がやってきました
かみさまの食べっぷりはやはり凄まじく 食べ物の山は次々と消えていきました
しかし 男も負けてはおらず まるで底なし沼のように食べ続けます
なんと 先に食べ終えたのは男の方でした
男はまだもの足りそうな顔をしています
かみさまは悔しそうに男を見つめます
「勝ったのはお前だ、だが幸せを食べるのをやめるのとは別問題だ」とかみさまがいいました
それをきいた男は 仕方がないのでかみさまを食べてしまいました
かみさまはいなくなりました
これで夢や 希望や 幸せが食べられることはなくなった と村人達は喜びます
村では宴会が開かれ 確かに幸せがあたりを包み込みました
それからの村はどうなっていったのでしょうか
人々はいままでからは考えられないような幸せを手にしていました
しかし 手に入れたのは幸せだけではありません
そう かみさまが食べていたのは 夢や 希望や 幸せだけではなかったのです
災害や 絶望や 不幸も一緒に食べていたのです
やがて村は大飢饉に襲われました
村人達は かみさまを食べてしまった男が悪いと考えるようになりました
そして男は 村人達に食べられてしまったのです
その大飢饉のあと 村はどうなってしまったのか誰も知りません
村人達にとって 幸せも不幸せもある生活と 幸せも不幸せもない生活 どっちがよかったのか 誰もわかりませんでした