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イチゴさんの射殺劇。

作者: 国後旺

意味が分からないモノが嫌いな方には、オススメできません。

●あるゴージャスな家の冷蔵庫に生息している、苺のイチゴさんの嘆き。


『くそぉ、くそぉ』とイチゴさん。なんだかとっても悔しそう。


『あのクソ人間公がオレの彼女のイチコちゃんをイチゴジャムにしてパンにギッタンベッタンと塗りたくりやがってしかもハチミツとセットでしかもフランスパンにフランスパンにフランスパンにぃいいいい!!!』

 という非常に醜いセリフを、ドブにドボドボぅおえ!!

 と吐きだすように言いました。


『復讐だ、復讐してやる! 人間コロスケどもを…一人残らずブチぶちブチぶちブチコロ! ブチコロ!! ブチ、コロ!!!』


 イチゴさん、怒りからか、顔が真っ赤です。まさにキングオブレッド。


『そうと決まれば、アイツに連絡しないと』


 イチゴさんは、ドブにドバァゴシャアと吐き出すようにそう言いました。どうやら、少し冷静になったようです。

 その証拠に今度は本当に吐いてしまいました。


 イチゴさんはアタマのケータイヘタを取って、ピッピッ、とヘタについたヘタンを押しています。

 ヘタン番号は、いち、いち、いち、ご。


 そう…それは、親友とも呼べる…頼れる戦友の連絡先用ヘタン番号です。



●ある繁華街に生息している、苺のイチゴローへの知らせ。


 イチゴローはカーペットの上で寝そべっていました。隣には、妻のイチヨがいます。タネを押し付けあって…スキンシップでしょうか。

 そんなとき、不意に、

 ヘタヘタヘタヘタ、ヘタヘタヘタヘタ、とイチゴローのアタマのヘタから、着信音が鳴ります。


「この番号は、マブダチの!!」


 イチゴローはヘタを慌てて取りました。そのせいでしょうか。

 アタマからイチゴエキスが吹き出てカーペットにベッタァッ。恐らく、このシミ…しばらく取れないでしょう。


『イチゴロー、復讐の手伝いをしてくれ!』

 さすがはイチゴさん。いきなりすぎです。

「モチロンさ! マブイチゴ!!」

 応じるイチゴロー。マブイチゴに言葉は要らないのです。


 イチゴローは覚悟をしまくりました。


「行ってくる」

「行ってきて」


 夫婦に言葉は要らないのです。


 ちなみにイチゴローはイチゴさんが今、ドコで何をしようとしているのか、全て手に取るように分かっていました。

 なぜなら二人は、ウンコよりも臭い絆でつながっているからです。


「今こそ、マブダチのもとへ!」



●ゴージャスな家の食堂にて。


 イチコちゃんは、食されていました。


「はあはあぺちょぺちょはあはあはぅあ」

 と半ば興奮ぎみな人間公に、フランスパンに塗られて。


 今の彼女はジャム。かつての美しく、滑らかで、みずみずしいレッドボディは原型を留めていません。

 ジャムの赤が燃え尽きるほどレッドであることが、唯一の名残でしょう。


 そんななか、イチゴさんは冷蔵庫の内で待っていました。人間公が、再び冷蔵庫を開けるときを…。

 片手にはミルクロケットランチャーを持っています。人間公を撃ち取るのに、最適な場所を陣にとり、


 待って…待って待って待って、待って……。


      ガチャン!


 人間公が、勢いよく冷蔵庫を開けました!


『今こそ……』


 ミルクロケットランチャーを人間公に向けて、


『復讐のとっき、じゃあああああ!!!』


 ミルク発射! 発射、発射!


「ぬぁああああああ!! イチゴ、イチゴがッッ!!!」


 人間公、ミルクまみれ! 服はべちょべちょです。人間公のスカートから、ムチャクチャにミルクが滴ります。

 あまりのことに、人間公は、床に仰向けに倒れ、これ以上にないほど(ひる)みました。


 そのスキを、イチゴさんは逃しません。人間公の喉元に、華麗な三回転を決めて着地!


『くたばれぇえええにんげうんこぉおおおお!!!!』


 醜い罵声とともに、人間公の口の中にミルクを発射!

 発射! 発射!! 発射!!!


「ぎゃあぼぎゃあぼぉ!!!」


 人間公、悲鳴すら…まともに出せないダメージです。

 目からミルクがぴゅーぴゅー出てます。

 口からゴパゴパと、ミルクを出したりもしています。まるで滝のようです。ちょっとキラキラしてますが。


『射殺完了…』


 イチゴさんの額から汗が流れ、それを拭いながら、そう言いました。

 良い汗かいた…っていう感じです。


 そんなとき、


「イチゴ…さん……」


 悲痛な声。それも…聞き覚えのある声……。

 イチゴさんは、声の聴こえるテーブルの上に、ジャンプと空中ジャンプを駆使して登りました。そして、テーブルの上の、皿の上の、ジャムの塗られたフランスパンの上へ…


『イチコ! イチコ!!』


 ジャムに話し掛けるイチゴさん。

 ジャムとなったイチコは、その呼び掛けに反応して一言、言いました。


「逃げて…」と。


 そのセリフを言い終えたあと、ものすごい騒音が鳴り響きました。


 ドス、ドス、ドス、ドス!!


『な、なんの音だ!?』


 階段を下る音。それは、ゴージャスな家の、もう一人の住人…。

 よっくんが奏でる音。


「ナニゴトか、ぬーん!!?」

 よっくんは驚きました。それもそのはずです。床がミルクまみれになっており、服がミルクまみれで口からミルクをこぼしまくる恋人…晴海を見つけてしまったのだから…。


「アーウチ! なんてこった!!」

 よっくん、ものすごく悲しそうです。涙ボロボロです。自分の額をぺちんと叩きました。


「晴海ーん!? 返事してよう、はっるみーーーん!!」

 よっくんは、晴海の死体を抱え、何度も何度もその名を呼びました。


 そんなとき、よっくんはテーブルの上の、皿の上の、ジャムを塗られたフランスパンの上の、苺を睨み付けました。

 晴海が苺を食べるときに、フランスパンの上にのせて食べるような暴挙をしたことがなかったから…不自然に思ったのでしょう。


 そして、その苺こそがイチゴさん。ちなみに、今のイチゴさんは丸腰です。

 なぜなら『空中ジャンプにはジャマだなぁ…』という思いと、よっくんの存在を知らなかったという理由も含め、ミルクロケットランチャーを床に投げ捨てていたからです。


 イチゴさん、絶対絶命。


「この苺、メッチャ怪しいネ!」

 と言って、イチゴさんを掴みにかかるよっくん。


 捕まるわけにはいかず、勢い良く走り出したイチゴさん!


 よっくんは勘づきました。


「お前が、この惨劇を作ったのかーい?!」


 恐ろしい勘です。勘づける要素がどこにもないのに勘づいてしまいました。常人にはおよそ不可能な芸当でしょう。


『くそう、くそう』


 惜しくも捕まるイチゴさん。またもや絶対絶命。


 そんなときです。

 よっくんがイチゴさんを捕まえるときに、踏み出していた一歩が、晴海の足に引っかかってしまい、よっくんは、イナバウアーのごとき迫力で仰向けに転んでしまいました。自分の額をぺちんと叩きます。


「オーマイガァッッツ!」


 衝撃で、イチゴさんを掴んでいた手が緩みました。脱出するイチゴさん。

 そのまま床のミルクロケットランチャーをキャッチ! 


『形成逆転だな、人間公』


 半笑いで、ミルクロケットランチャーを構えるイチゴさん。


 しかし、


 ガチャ、ガチャ


 引き金が、引けません。

 先ほどの投げ捨てられた衝撃で、ミルクロケットランチャーは内部破損をおこしていたのです。


 事態に気付き、身を引くイチゴさん。そして…身を引いた、その横には…


 その横には、イチコが塗りたくられたフランスパンが!

 よっくんが転倒したときの衝撃で、床に落ちたのです。


 イチゴさんは声を掛けようとしました。

 しかし、よっくんが目を覚まし、イチゴさんの方へ手を伸ばしてきたため、そんな余裕は無く、更に後ろへ逃げるイチゴさん。眉間にシワを寄せています。


 しかし、よっくんが掴もうとしていたモノは、イチゴさんではなく、


 イチコジャム付きフランスパンでした。


 これには、さすがのイチゴさんも焦ります。

 なぜなら、イチゴさんは…イチコをイチゴ質にされたと思ったからです。


 しかし、そんな生易しいモノではありませんでした。




 なんと、よっくん! イチコジャム付きフランスパンを食べ始めたではありませんか!!


 バックバク もっしゃもしゃ


「うわーお、ウワーオゥ! メッチャうまいやーん!!」

 よっくん、ものすごい表情です! とにかく、ものすごい表情です!!

「やーん」とイチコ、悶絶しています。緊張感のかけらも無い悲鳴です。

『うわぁあああん!! やめろバカ! 食うなバカーん!!』


 イチゴさんは、ミルクロケットランチャーをよっくんの方へ構えました。


 しかし、故障中なことを思い出しました。


 そこで『仕方ない!!』とか言って、ミルクロケットランチャーを投げつけることにしました。


『どらくそぉおおおおおぅ!!!』


       ぶぁんっ!


 イチゴさん、素晴らしくテンパってます!


 完璧な投球フォーム。それもアンダースロー! しかし、ミルクロケットランチャー…


       ぺちん


 よっくんの指に跳ね返され、こっぱみじんです。


『のーん!!』


 イチゴさん、悔しそうです。床を叩きまくってます。

 そのうえ目から赤い涙が出てます。軽くヤバい。


「ぅのお! おほ、おほ。完璧だね! 超完璧だーね! うほほ」


 遂に…遂によっくんは…。

 イチコジャム付きフランスパンを、カケラも残さずたいらげてしまいました。


『ぬぁああああん! イチクォオオオオオオオ!!』


 よっくんは笑います。鬼畜スマイルです。お腹はパンでパンパンです。そのうえ、


「おぽぽぽぽぽぽぽぽぽー!」


 ダダダダダダダダダッッ!!!


 彼は口内でフランスパンを小さく丸めて、吐き出し始めました!


 ダダダダダダダダダダダダダダダッッッ!!!


 まさにブレッドブレッド!

 そして乱れ撃ち!!

 イチゴさんのカラダが小さくなければ、即死していたでしょう。


『あんちくしょう!』


 ダダダダダッ!


 避ける、避ける、避ける。


 ダダダダダッ!


 軽やかです。非常に軽やかなステップで避けています。


 ダダダダダッ!


 タタタタタッ!


 ダダダダダッ!


 タタタタタッ!


 ダダダッ!


 タタタタタ…


 コヒュウ コヒュウ


『…弾切れか?』


 よっくんの口元を見て、イチゴさんはそう言いました。

 イチゴさんの顔は、笑いながら泣いています。


「オーウゥ! お互い様じゃナーイ?」

『な!? なぜ貴様がソレを喋れる!?』

 イチゴさんは驚きました。それもそのはず、人間公であるハズのよっくんが…

 イチ語を喋ったからです。


「インターナショナルに生きてるからサー!」

『くぅ! 侮れぬな、インターナショナル』

 さすがはイチゴさん。話についていけてます。もはや超イチゴ(超人)の域です。


『だが、ひとつ間違いがあるぞ、人間公。オレにはまだ、武器がある』


 その言葉に、首を傾げるよっくん。

 ソレもそのはずです。現に、イチゴさんの手のひらには何も無い…。

 これはさすがに…と、よっくんは首を傾げたのでしょう。


「どこにも無いやーん!」

『ばっかがっっ!!』


 ノドの奥まで覗けるほどに、口を開けて叫ぶイチゴさん。

 恐るべき迫力です。


『オレには最早、護るべきものは無い…だから、』


 ムックムクムクむくむくむくむくっ……


 イチゴさんのカラダが風船のように膨らんでいきます。ある意味健全だったボディはムッチムチ!

 数秒前のボディビルダーは見る影もなくハイなメタボリックに。

 その姿、あやうく、KONISHIKIを思い出しかねないほどに立派な風船ヤローです。


『行き先はノーライフな、この禁術を、』


    しゅーーーー…ピタッ!


 膨らみは、止まりました。


『我が道の、バッドエンドに…』


 種が、イチゴさんの肉体からトゲのように尖り、剥き出しになりました。

 普段見える面とその裏側まで、バッチリ全て見えます。

 そして、



『イチゴマシンガン』





 ズダダダダダダダダダダダダダンッッッ!!!



 種は乱れ、飛び立ちました。



●イチゴロー、ゴージャスな家に到着。そして、侵入。



 それも、窓ガラスをシロップボムで粉砕して入るという方法で。

 イチゴローいわく、シロップの甘い香りに窓ガラスは油断して、割れるらしいです。

 妻のイチヨとのスキンシップの際にいつも使用していたためか…

 その効力、制限時間、使い方の全てを、イチゴローはマスターしていたというかこの話し要らないのでカットしましょう。



 イチゴローは見渡しました。その家のありとあらゆるところを。


 [便所]

 クサいです。便器が金色です。イチゴローは便器の座るとこにタンを吐き、トイレのドアをバナナライフルで蜂の巣にして立ち去りました。


 [風呂]

 バスタブが金色です。イチゴローはそれを見て何を思ったのか、シロップボムをバスタブに投げつけて、ぶち壊して立ち去りました。


 [書斎]

 本棚にはエロ本しかありませんでした。イチゴローはソレを見て「ふんっ」と鼻で笑い、立ち去りました。

 ちなみに、椅子と机は金色でした。それが理由なのかは分かりませんが、

 イチゴローは時限型シロップボムを、その二つの光り輝く家具に設置しました。


 ドゴォオオオオオン!!!


「イエス! イエス!!」

 ガッツポーズを作りながらイチゴローは叫びました。

 いったい、ナニしにきたんでしょうか、このクソイチゴ。


 [食堂]

「な! なんだ、コレわ!」

 イチゴローは瞳孔を裂くように開いて言いました。それもそのはず、



 食堂が、イチゴ畑のように、机、食器、床に倒れている人間公…その他モロモロから、イチゴの実がなっていたのですから(それにしてもキモい)。


「まさか…イチゴ……!」


 イチゴ畑を掻き分けて、イチゴさんを探すイチゴロー。


 ざわざわっ ざわざわっ


 ざわっ


「…………! イ、イ、イチゴ……!!」


 イチゴローは、見つけました。

 机の上で横たわる、種ひとつ付けていない、穴だらけの、シワシワのイチゴさんを………。


「あぁ、あああ、何てことを、したんだ、イチゴ…」


 イチゴさんの使ったイチゴマシンガン…それは、自分の命を、大気からの小汚い空気を侵入させない為のバリアだった種を、銃弾として使用する技。

 その威力はダイヤモンドも容易く貫きます。

 しかし、そのリスクとして、自分のカラダを死滅させる恐ろしい禁術でもあるのです。


「アホ! イチゴのアホォ! 何故命捨ててんねん!!」

 何故関西弁なんでしょうか。

『…ふ、ふふ、来るの…遅いじゃ…ないさかかぬぬげほぉ!!』

 エキスをぶちまけるイチゴさん。

「イッチゴオオオオオォゥ!!」


 叫んだ直後、いきなり自分の口からエキスを吐き出しはじめたイチゴロー。エキスがキラキラ輝きます。

 イチゴローのエキスには再生能力があるのです。

 コレを飲めば、種も完全回復すること間違いナッシングでしょう。


 しかし、ひとつ難点が…。



「さあ! 飲むのだマブイチゴッ!!」


 口から例のエキスをゴバゴバこぼしながら叫ぶイチゴロー。

 イチゴの口にゴバゴバと入っていきます。


『ゥウオオオオオオオアアアアアアアアアァゥウ!!!』


 叫ぶイチゴさん。復活…




『くっさああああああぁ!!』


 ゴハッ


「イッチゴオオオオオオオォゥ!!!」


 …ならず。

ごめんなさい。

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― 新着の感想 ―
[一言] イチゴ達が色々ぶちまけちゃっていますが、語り口調が淡々としているせいか、ほのぼのできました^^ こういう作風、大好きです。 これからも頑張って下さい^^!
[一言]  こういう勢いのある話、好きです。相棒に話をするところが、1番ツボでした。ヘタンに、イチゴ同士に、夫婦同士ですか(笑)。短編だと最初にこういう笑える場面をおいてあるだけで、読ませる作品になる…
[一言] 目の付け所、発想が面白すぎです。 すっかりイチゴになりきってるのがいいですよね。 シリアスになりきれない(あえてならない?笑)のも魅力の一つですね。面白かったです。
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