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地理

国家:


全体地図

挿絵(By みてみん)

1193年当時

挿絵(By みてみん)

1200年当時



グライフトゥルム王国:

挿絵(By みてみん)

1193年当時

挿絵(By みてみん)

1200年当時


概要:

 “鷲獅子の塔”が語源。

 大陸の北東部に位置する国家。

 東西約1500km、南北900km。

 人口は約500万人。

 中央から東部に穀倉地帯があり、人口の七割が集中。北部はガイストヴェルデやヘクサローンなどの深い森林地帯。西部はヴォルケ山地と森林地帯となっている。南部にはヴァイスホルン山脈がある。


 王都は中央にあるシュヴェーレンブルクで一辺が2キロの城壁に囲まれ、周辺の人口を合わせると約30万人の大都市。シュヴェーレンブルクは大陸公路の西の端に当たり、商業都市でもある。また、最古の国家として様々な書籍を有しており、学術都市の一面もある。近隣の友好国グランツフート共和国からは留学先として人気が高い。

 第二の都市がマルクトホーフェンで人口10万人。その他にノルトハウゼン(人口5万人)、ヴェストエッケ(人口5万人)などの城塞都市がある。また、東部に自治都市ヴィントムント(人口20万人)があり、商業組合(ヘンドラーツンフト)が実質的な統治を行っている。

 ヴォルケ山地の東には王家の名の由来であるグライフトゥルムという塔がある。ここは魔導師集団、叡智の守護者(ヴァイスヴァッヘ)の塔であるが、グライフトゥルム王家との関係は明らかにされていない。


 東の国境はシュヴァーン河。

 シュヴァーン河はエンデラント大陸最大の河川で、全長は1200キロメートルにも及ぶ。河口付近の川幅は2キロメートルほどある。

 水量も多く、合流地点から河口付近までは何度も氾濫がおき、幅数十キロメートルにも及ぶ湿地帯となっている。このため、一定規模の軍隊が移動可能なルートは北公路とリッタートゥルム城付近から西の荒地に限定される。


 中央から東部の平原地帯は肥沃な土地だが、開発されているのは大都市周辺のみであり、その他は街道沿いに僅かに開拓村がある程度である。これは大動乱時代に減った人口が回復せず、街道付近以外に魔素溜まりが多くあり、開拓しようとしても魔獣の被害が大きく、進まないためである。これは他の国にも言える。


 1100年代まではリヒトロット皇国と良好な関係にあったが、1200年代に入ると、東のゾルタート帝国が侵略を開始し戦争状態となる。南東に位置するグランツフート共和国とは同盟関係にある。

 南方のレヒト法国とは西の国境で紛争が続き、事実上の戦争状態。但し、外交チャンネルは残っており、停戦と戦闘を繰り返している状況。

 1210年頃の国力は六ヶ国中五番目。新興のゾルダート帝国との国力比は2:5と言われているが、グランツフート共和国との同盟と商業組合の支援、天然の要害シュヴァーン河により戦線を維持できている。


成立:

 統一暦を作った国家フリーデンの正統な後継として統一暦120年頃に成立した。当初はグライフトゥルムに王都を置いていたが、統一暦200年頃に人口の増加に伴い、現在のシュヴェーレンブルクに遷都した。

 叡智の守護者との関係が強く、魔導の研究が盛んだったが、遷都後は魔導よりも別の学問の研究や教育に力を入れるようになった。王立シュヴェーレンブルク大学は千年近い歴史を誇る。

 そのため、学術都市として友好国から留学生を受け入れている。


組織:

 1200年時点での国王は四十八代国王フォルクマーク十世。王妃はマルグリットとアラベラ。国内は有力な貴族が派閥を作っている。


 国王を頂点とした封建制であり、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵が貴族として列せられる。騎士は準貴族として扱われる。


王国政府:

 行政府は宰相が長の宰相府。宰相府の下に財務、法務、外務の部署があるが、〇〇省や○○局のような名称はない。

 軍事に関しては、国王直属として実戦部隊があるが、軍政を取り仕切る部門がなかった。1199年の軍改革の一環として、帝国に倣った軍務府が置かれ、軍務卿という官職が新たに創設された。


 王国政府には以下の官職がある。

 文官

・宰相:文官の長。行政全般を取り仕切る。(首相)

・大法官:宰相の下で法律に関する職務を取り行う。(法務大臣)

・財務卿:宰相の下で財務に関する職務を取り行う。(財務大臣)

・外務卿:宰相の下で外交に関する職務を取り行う。(外務大臣)

・軍務卿:国王の直属で軍務府を取り仕切る。(防衛大臣)

・法務官、財務官、外務官:各組織の副大臣。

・宮廷書記官長:国王の秘書的存在。宮廷行事を取り仕切る。(官房長官)


 武官

・大将軍:王国軍の総司令官。通常は国王が兼ねる。

・将軍:貴族領騎士団や兵団など複数の部隊を指揮する役職。

・近衛騎士団長:近衛騎士団の長。将軍と同格。指揮権は完全に独立している。

        王国軍改革で第一騎士団長となった。

・騎士団長:王国騎士団及び各貴族領騎士団の長。階級的には将軍と同格。但し、貴族領騎士団長は将軍や王国騎士団長より下位とみなされる。

・騎士長:騎士団の大隊長クラス。

・兵団長:騎士団以外の軍の長。将軍の指揮下にある。

・護民官:王家直轄地の警察組織の長。



貴族:

 公爵家は先代国王と現国王の弟が叙爵される爵位。領地はなく、王国から俸給が与えられる。国王の代替わりにより公爵位の資格を失うと伯爵となり、額が大きく減らされる。そのため、侯爵家や領地を持つ伯爵家の養子になる者が後を絶たない。

 現在は先代国王の弟であるヴァインガルトナー公爵家とダイゼンホーファー公爵家のみ。

 侯爵家は5家が存在。マルクトホーフェン家、レベンスブルク家、ケッセルシュラガー家、メンゲヴァイン家、クラース家。王国最大の貴族領を持つマルクトホーフェン家が最大勢力で、傘下や同盟関係の貴族家を合わせると、王国の30%ほどの戦力を有する。レベンスブルク家は王妃マルグリットの実家であり、1190年代にはマルクトホーフェン家と拮抗する勢力を誇ったが、政争に敗れ大きく力を落としている。ケッセルシュラガー家は西海岸に領地を持ち、半独立状態で、ヴェストエッケの防衛にしか興味を持たない。メンゲヴァイン家は代々宰相や宮廷書記官長を輩出する文官の名家。クラース家も代々宰相を輩出する名家で、マルクトホーフェン家と同盟関係。

 伯爵家は領地持ちが10家、それ以外が30ほど。子爵家は60、男爵家は100で、ここまでが貴族階級となり、ミドルネームに“フォン”を付けることが許される。

 準貴族である騎士爵は伯爵家以上であれば叙任できるため、500家以上ある。俸給は王国か、叙任した貴族が支払うが、年収は比較的少なく、魔獣狩りで臨時収入を得る者が多い。



軍:

 1215年当時、王国軍は15万と言われているが、実数は5万程度で、戦時にはこれに義勇兵や徴募兵3万ほどが加わる。

 王家直轄の軍の総数は3万5千

・王都シュヴェーレンブルク騎士団(王国騎士団)2万

・ヴェヒターミュンデ騎士団5千

・ヴェストエッケ守備兵団5千(義勇兵7千)

・ゾンマーフェルト守備兵団3百

・ネーベルタール守備隊2百

 

 王家直轄の常備軍は王都や要衝の防衛が目的だが、貴族領の常備軍は治安維持と魔獣対応(街道の警備)が主な任務となる。特に西方街道と北方街道は魔獣が多く出没するため、頻繁な警備が必要となる。


 王家直轄軍の騎士団は攻撃を主眼に置いた騎士隊、拠点防衛を主眼に置いた弓兵隊、治安維持や野戦に主眼に置いた歩兵隊からなる。

 ヴェヒターミュンデ騎士団はヴェヒターミュンデ伯爵の指揮下にある騎士団であるが、伯爵領が辺境にあるため、1200年以降の軍制改革後は王家直轄軍となっている。


 貴族領の軍の常備軍はマルクトホーフェン5千、ケッセルシュラガー5千、ラウシェンバッハ5千、エッフェンベルク3千5百、ノルトハウゼン3千、グリュンタール2千が主要なところで、他は各領地に数百単位で分散している。

 マルクトホーフェン侯爵家やケッセルシュラガー侯爵家のように寄り子が多い貴族は、農民を徴兵することで数倍に膨らむ。但し、能力的には常備軍とは比較にならない。

 ノルトハウゼン騎士団は重装歩兵が主力で軽騎兵との組み合わせで野戦に強い。エッフェンベルク騎士団は長弓兵と槍兵が主力で、城塞での防衛戦の強さに定評がある。ラウシェンバッハ騎士団は獣人族で構成され、王国内最強と言われている。


 編成は騎士団や兵団によって大きく異なる。

 王都を守護するシュヴェーレンブルク騎士団は1個騎士団が5千名程度。

 王都防衛を主とする第1騎士団は騎士1千、衛士4千。騎士は近衛騎士として王宮を守護するものと王都の治安維持部隊の隊長となる。


 第2~第4騎士団は、以前は常備軍ではなかったが、ゾルダート帝国やレヒト法国の侵略を受け、1199年に常備軍となり、1199年に第二騎士団、1203年に第三騎士団、1208年に第四騎士団が近代化された。ヴェヒターミュンデやヴェストエッケに派遣されることが多い。

 騎兵1千、弓兵1千、歩兵2千5百、補給部隊5百が標準的な編成。但し、兵種別に編成されるわけではなく、家ごとに隊を作る。


 標準的な編成は騎兵4(騎士1、従騎士3)、弓兵4,歩兵10、従僕2の計20名だが、騎士爵家の規模によって人数はまちまちで、20~100名と大きく幅がある。

 騎兵は騎士階級とその家臣(従士)で、歩兵と弓兵は従士もしくは従士の家来。従僕は騎士の世話をする非戦闘員。


 騎士団長の下に千名程度を指揮する騎士長、200名程度を指揮する部隊長、その下に家ごとの隊を指揮する隊長という階級となっているが、能力ではなく、爵位によって決まることが多い。


 1199年以降、第二騎士団長であるクリストフ・フォン・グレーフェンベルク子爵による改革で、兵種ごとに編成し直し、隊の構成も連隊(1000名)、大隊(315名)、中隊(3個小隊93+中隊長1、中隊軍曹1の95名)、小隊(3個分隊30+小隊長1の31名)、分隊(10名)に変更されている。


 中隊までは単一の兵種で、大隊は騎兵、歩兵、弓兵の各一個中隊に大隊直属小隊(副官1、大隊軍曹1、偵察分隊2個20、主計兵8の30名)で構成される。

 連隊は三個大隊945名と連隊司令部(副官1、参謀3、連隊軍曹1、偵察小隊1個30、主計兵10、士官候補生など員数外10)55名で構成される。


 偵察分隊及び偵察小隊は偵察の他に、伝令としての任務もある。また、戦闘時は隊長の護衛、平時は憲兵的な任務にも携わるため、優秀な兵が集められる。

 隊長付き軍曹(ゼルジャント)は隊全体を管轄する下士官であり、兵たちの状況について隊長に助言する。

 主計兵は駐屯地での調理や物資の管理などを行う。


 1個騎士団は4個連隊と騎士団司令部(副官3、参謀10、騎士団軍曹2、伝令15、護衛小隊1個30名の70名)、戦闘工兵大隊400名、輸送大隊400名、支援中隊130名で構成される。

 戦闘工兵は防御陣地の構築だけでなく、騎士団直属の歩兵として戦闘にも参加。輸送大隊は4つの中隊に分かれ、各連隊に物資を補給する。支援中隊は魔導師である治癒師、一般の衛生兵、主計兵で構成される。


 また、第二騎士団は爵位ではなく、能力によって階級が決まる。これはマティアスの軍事理論に賛同したためで、グレーフェンベルクの方針に従える者だけが第二騎士団に入っているため、身分や年齢が低い傾向にある。


 防衛拠点であるヴェヒターミュンデ騎士団は弓兵3千、歩兵2千と城に篭っての戦いに特化している。

 ヴェストエッケ守備兵団も弓兵主体である。


 騎士団長は侯爵家もしくは伯爵家、兵団長は子爵家以上の家柄が必要。但し、子息であれば嫡男でなくてもよく、武勲を上げて爵位を得ることや、養子に入るために団長を目指す者が多い。

 大隊・小隊などの編成上の区分はなく、基本的に家ごとの戦力を1つの単位としているため、〇〇家隊という呼び方になる。


 魔導士隊は存在するが、他国と違い、叡智の守護者(ヴァイスヴァッヘ)の魔導師が派遣されている。治療師として使われるだけで、攻撃魔導は禁忌であり、使われることはない。


 グランツフート共和国やゾルダート帝国に比べ、組織が前近代的であるため、非効率的な戦いが多い。


 一方で、高性能の通信の魔導具を使っていることから、情報伝達速度が格段に早く、それによって侵略を防いでいる。

 グライフトゥルム王国には、叡智の守護者(ヴァイスヴァッヘ)の情報分析室が使用する遠距離用の通信の魔導具の他に、王国軍で使用される20キロ程度の物と簡易型の5キロ程度の物がある。配備数は多く、大隊に配備されている。

 一方、他国の通信の魔導具は1キロ程度の通信範囲しかなく、実戦で使われることはほとんどない。



各都市:

シェヴェーレンブルク:

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


 シュヴェーレンブルクは一辺が2キロの城壁に囲まれた城塞都市。中央にシェヴェーレンブルク城が聳え、三重の城壁に守られている。一番内側がシェヴェーレンブルク城で一辺が五百m、二番目の城壁が一辺一kmでその内側が貴族たちの屋敷と騎士団、最外郭が市民たちの街となっている。

 二万人のシェヴェーレンブルク騎士団が駐屯している。

 シェヴェーレンブルク単体で5万人(騎士団除く)、周辺の人口を合わせると約30万人の大都市。シュヴェーレンブルクは大陸公路の西の端に当たり、商業都市でもあるが、ヴィントムントほど栄えてはいない。

 最古の国家として様々な書籍を有しており、学術都市の一面もある。シュヴェーレンベルク王立学院はエンデラント大陸の最高学府として有名。


シュヴェーレンベルク王立学院:

 初等部・高等部・研究科を持つ高等教育機関。教育と研究の二本柱で、多くの教員がいる。王都の最外郭の北にある。300m四方ほどの敷地に校舎が並ぶ。北側に図書館があり、100m四方の中庭が武術の訓練場を兼ねている。


 教員は研究者を含め、150名程度。初等部は主任教諭が責任者で教諭が約30名。高等部は学部ごとに学部長が責任者となり、教員は兵学部30名、政学部10名、文学部10名の計50名程度。研究科は学院長直轄で研究者は50名程度で教授10名、助教授20名、助手20名程度でこれに学生50名程度が加わる。研究科の教授・助教授は高等部の教員も兼ねる。学院長は伯爵以上の上級貴族が就任することが慣例。


 初等部は貴族や平民の富裕層の子息の初等教育を行う。

 高等部は王国全土から集まるエリートを養成する教育機関で、軍人を目指す兵学部、官僚を目指す政学部、教養を習得するための文学部の三つの学部がある。


 初等部は12~15歳。高等部は16歳~18歳。貴族階級が多いが、平民でも有力な商人や郷士であれば入学は可能。研究科は年齢を問わず、研究者や教育者が在籍。通常は高等部から編入試験を受けて選抜される。初等部と高等部には制服があり、紺を基調としたブレザータイプ(男子はスラックス、女子はスカート)を着用する。


 初等部の定員は1学年100名。12月に行われる筆記試験に合格することにより入学。伯爵以上の上級貴族は無条件で合格できる。但し、あまりに成績が悪いと実家にその旨が伝達されるため、通常は真面目に受験する。また、初等部には落第・留年はないが、高等部に入学するために一定以上の実力を身に着ける必要があり、真面目に教育を受ける者が多い。1クラス20名で各学年5クラス。担任と副担任が付く。


 高等部の各学部の定員は100名程度。11月に入学試験が実施される。学部ごとに試験項目は異なり、兵学部には武術などの実技もある。身分による点数の加点はなく、完全な実力評価となっている。そのため、合格に自信がない上級貴族の子弟は領地で経験を積むという理由で入試自体を受けないこともある。


 兵学部は武官系の貴族や地方の郷士階級の子息に人気が高かったが、1206年に士官学校が設立されたことにより、廃止になった。


 政学部は官僚を養成するが、中央省庁に入れるのは上位30名程度で、その他は各貴族領の文官となることが多い。


 文学部は貴族の令嬢が多く、結婚を見据えて教養を身に着けるために入学する者が多い。平民の女性も玉の輿を狙って入学することが多く、文学の教育はそれほど重視されていない。


 研究科は教授や教官の推薦を受けた卒業生がそのまま残ることが多い。一般的には出世街道から外れるため、上級貴族出身者は少なく、研究者や教育者を目指したい下級貴族や裕福な平民が残ることが多い。

 図書館には統一暦以前の物を含め、多くの書籍が保管されているが、一般には公開されておらず、学生と教員しか基本的に利用できない。また、魔導、特に禁忌に属する書物は助言者によって排除されている。



ヴィントムント:

 ヴィントムントは自治都市であり、商人組合の本部が置かれている。非常に強固な城壁を持つ城塞都市。ギルド長がヴィントムント市の市長を兼ねており、5千人規模の防衛隊を持つ。また、多くの傭兵団が存在し、総兵力は1万人を超えると言われ、攻略するには10万以上の兵力が必要と言われている。


 人口は10万人。周辺を含めると20万人に達する。

 街の形状は円形で直径は約3km。城壁の高さは10mに達し、数百に及ぶバリスタが固定砲台となっている。また、市民が義勇兵となるため、3万とも言われるクロスボウを保有している。


 街の中心には商人組合本部の建物があり、その中には貨幣を鋳造する造幣局がある。

 グライフトゥルム王国へは王国の財政を支えると言われるほど税を納めている。現状の関係は良好だが、過去には何度かヴィントムントの自治権を奪おうとした王がいた。そのため、常に王国の動向に注意している。

 1200年代に入ると、更に野心的な国家ゾルダート帝国がグライフトゥルムに侵攻しようとしているため、密かに王国を支援しているが、表向きは中立という立場を貫いている。


挿絵(By みてみん)


ヴェヒターミュンデ城:

 シュヴァーン河の河口近くにある直径一キロメートルほどの要塞。城門は東西の二ヶ所のみ。城壁の高さは十メートルほどあり、大型の弩弓や投石機が設置され、五百メートル以内であれば一方的に攻撃できる。

 ゾルダード帝国がシュヴァーン河付近まで勢力を伸ばしたことで王国政府も危機感を持ち、常備軍を5千人にまで増強した。

 弓兵が3千人と多く、更に歩兵二千人が弩弓や投石機を操作するため、防御力は高く、五倍程度なら充分に守り切れる。


 元々は城塞都市であったが、ゾルダート帝国がリヒトロット皇国を滅ぼしてから要塞化され、民間人は兵士の家族とごく少数の商人のみ。北公路の中継地であるため、城の東側、シュヴァーン河沿いに十軒ほどの宿がある宿場町になっている。この宿場町には城壁の外を通っていけるため、商人たちが城の中を通過することはない。


 シュヴァーン河の流域は幅数十キロメートルに及ぶ湿地帯、シュティレムーア大湿原が続き、ヴェヒターミュンデ城の周辺には多くの支流があり、天然の堀となっている。


 帝国側からグライフトゥルム王国に向かうための陸路は、ヴェヒターミュンデ城がある北公路の他にはリッタートゥルム城から西に向かう荒れ地しかない。なお、海路で移動することも可能だが、シュトルムゴルフ湾は大型の水棲魔獣が多く、100人以上が乗る船を無条件で襲うため、軍隊の移動には向かない。


 対岸のゾルダート帝国の都市フェアラートとはシュヴァーン河を挟んで7キロメートルほど、帝国側の国境拠点ヴィーク関とは僅か1キロメートルほどしか離れていない。



シュヴァーン河:

 全長800キロメートルにも及ぶ大河。シュトルムゴルフ湾に流れ込むが、河口付近の川幅は800mで、更に西側のグライフトゥルム王国側はシュティレムーア大湿原と呼ばれる大湿原が広がっている。逆に東側は丘陵地帯であり、豊かな草原が広がっている。

 河口付近の水深はそれほど深くないが、徒歩での渡河はできない。北公路の渡河点はヴェヒターミュンデ城とヴィークで、ヴィークは船着き場と国境の検問があるだけの小さな町である。



シュティレムーア大湿原:

 東西60キロメートル、南北100キロメートルに及ぶ大湿原。シュヴァーン河の支流によって作られ、季節によって深さが変わる。また、シュヴァーン河の反乱によって常に地形が変わり、年々広がっているため、地元民でも湿原の中を徒歩で移動することは難しい。

 この湿原とシュヴァーン河により、グライフトゥルム王国はリヒトロット皇国やゾルダート帝国の侵攻を防いでいる。



タラレク村:

 シュヴァーン河の西岸にある人口三百人ほどの小さな漁村。ヴェヒターミュンデ城から上流側に六キロメートルほどの位置にある。川幅が広く水深も深いため、他よりも流れは緩やかで漁師が川魚を獲り、ヴェヒターミュンデに売りに行く。船は五人ほど乗れる小舟が十艘ほど。陸路は北公路に接続する細い道があるが、湿原の中にあるため、ところどころ木の板を渡している。そのため、重量物の輸送は困難。



リッタートゥルム城:

 シュヴァーン河中流域にある城。ここから北は大湿原が広がっているが、西側は荒れ地となっており、軍の移動が可能であるため、防衛拠点として作られた。但し、ゾルダート帝国側から進軍する場合はシュヴァーン河とグリューン河の支流の両方を渡河する必要があり、大軍を運用は難しいと言われている。そのため、駐留軍は水軍1千5百名が主体で、城兵は1千人程度と少ない。

 水軍はガレー船10隻と簡単な帆がある手漕ぎボート60隻。また、長距離通信用の魔導具も設置された。この他に幅が広い輸送船が十隻あるが、喫水が深いため、上陸作戦には使えない。

 ガレー船は長さ二十メートル、最大幅四メートルほどで、オールが片側十本出せ、帆柱もある。漕ぎ手20名の他に30名の射手が乗り込んで矢を放ち、頑丈に作られた舳先で沈める戦法を使う。射手に代わり50名の兵士を載せることも可能。

 手漕ぎのカッターボートは長さ十メートル、最大幅三メートルほどで、中央に簡単な帆柱があり、三角帆を使うことも可能。漕ぎ手は10人、射手10人が定員で、射撃と接舷してからの白兵戦で敵の船を攻撃する。射手の代わりに15名の兵士を載せることができる。



レベンスブルク:

 レベンスブルク侯爵領の領都。ヴィントムントとヴェヒターミュンデ城の中間に位置する城塞都市。かつては北公路によって栄えたが、現在では人口3千人ほどの小都市でしかない。ヴェヒターミュンデ城で戦いが始まった場合、兵士の家族や民間人が退避する拠点となっている。



ノルトハウゼン:

 ノルトハウゼンは人口5万のグライフトゥルム北部最大の都市。周辺の農村を加えると15万人を超える。

 ノルトハウゼン城が中央にあるが、街の周囲に城壁はなく、ガイストヴァルデから絶えず魔獣が侵入してくる危険な街でもある。そのため、街の人々の戦闘能力は高く、ノルトハウゼンの義勇兵は王国軍正規部隊より強力と言われている。同様に3千名のノルトハウゼン騎士団も精鋭と名高い。

 主要な産業は森で採取される薬草や特殊な鉱石類。北方であるが、土地は豊かであるため、森から離れた場所にある村では農業が盛ん。



マルクトホーフェン:

 マルクトホーフェン侯爵領の領都。人口約八万人と王国第二位の都市で、ブラオン河沿いの肥沃な大地と魔素溜まりが少ない土地であることから周辺の人口を合わせると30万人を超える。以前は北部と中央部を結ぶ北方街道の交易で潤っていたが、1200年代に入ってから法外な通行税を設定したことから、交易都市ではなくなっている。

 グライフトゥルム王国の都市にしては珍しく城塞の無い街で、治安はあまり良くない。

 中央部にマルクトホーフェン城がある。

 犯罪組織である盗賊ギルド(ロイバー・ツンフト)の本拠地がスラム街にある。



カウフフェルト:

 カウフフェルトはカウフフェルト男爵の領地にある町。人口3千人ほどだが、農業と漁業が主な産業であり比較的貧しい。

 港湾設備は大型船にも対応できるが、ゾルダート帝国の拡大と共に北方航路が廃れたため、王国北部から南部への輸送に使用する程度で、専ら漁港として使われている。



シュヴァイツァー:

 シュヴァイツァーはヘクサローンにある隠れ里的な村。人口は五百人ほど。ヘクサローンは魔獣が徘徊する危険な森であり、道はあるものの王国の徴税官も入らない秘境となっているが、村の周囲には木製の頑丈な柵があり、魔獣を防いでいる。

 排他的な土地ではあるが、グライフトゥルム王家に忠誠を誓っている。これは助言者マグダの影響だが、一般的には知られていない。



ネーベルタール城:

 王家直轄地であるネーベルタール半島の付け根にある城。以前はリヒトロット皇国、現在はゾルダート帝国からの奇襲を防ぐための城だが、北部の政治的な地位の低さから、重要度は低い。

 背後に急峻な山地、前面にシュトルムゴルフ湾があり、10mを超える城壁と多くの塔からなる堅城。大きさは100m四方。



ヴェストエッケ:

挿絵(By みてみん)


 ヴェストエッケはグライフトゥルム王国の西端にあり、レヒト法国との国境を守る重要な軍事拠点。

 人口5万人の西部最大の都市で、東西2km、南北1.5km、高さ20mの城が街道をふさぎ、ヴァイスホルン山脈と相まって、王国への侵入を防いでいる。

 王国軍改革によって、守備兵団が増強され、常備兵は5千名。更に義勇兵を招集するシステムがあり、即座に7千の兵力が加わって防衛に当たる。

 ヴァイスホルン山脈は標高3000m級の山が連なり、縦断する道は存在しない。また、山脈の中には多くの魔素溜まり(プノイマプファール)が存在し、災害級の魔獣が出没するため、天然の障壁となっている。



グライフトゥルム :

 グライフトゥルム王家発祥の地。王家直轄地にして魔術師の塔、叡智の守護者(ヴァイスヴァッヘ)の本拠地。

 魔導具の生産が主な産業で、ブラオン河を利用して世界中に輸出されている。



ラウシェンバッハ:

 ヴィントムントの南百キロメートルほどの位置にある中堅都市。ラウシェンバッハ約2万、周辺の村1万2千、獣人族3万5千の計6万7千。自警団は1万5千で、入植地の防衛に3千を残す必要があるため、出征可能な兵士は最大1万2千人。

 エンテ河沿いにあることから農業が盛ん。特に乾燥した土地であることから綿花が多く栽培されている。また、大陸公路上にあることから交易でも栄えている。

 西側はヴァイスホルン山脈が近く、魔獣が下りてくることから開発が進んでいなかったが、獣人族が入植するようになり、安全になった。

 1196年頃からモーリス商会がマティアス考案の水力紡績機で綿糸を安価に大量に生産し、工業都市に育ちつつある。



エッフェンベルク:

 シュヴェーレンベルクの南百キロメートルほどに位置する人口三万人の都市。周辺の農村を含めると12万人を擁し、伯爵領としてはノルトハウゼンに次ぐ規模。

 ヴァイスホルン山脈に近く、南の森から魔獣が多く出没する。飛行型の魔獣が多く出没するため、優秀な長弓兵が多く、足場の悪い山岳地帯での戦闘が多いことから、短槍を得意とする歩兵が多い。その関係で騎士団は強力で治安はいい。

 北側は王国有数の穀倉地帯であり、エッフェンベルク伯爵家はかなり裕福で、常時3千5百名の騎士団を維持できている。

 また、獣人族が2万が入植し、自警団を形成している。



 各地の距離

・シュヴェーレンブルク-マルクトホーフェン:約150km(海路500km)

・シュヴェーレンブルク-エッフェンベルク:約100km

・シュヴェーレンブルク-ノルトハウゼン:約400km

・シュヴェーレンブルク-グリュンタール:約300km

・シュヴェーレンブルク-グライフトゥルム:約450km

・シュヴェーレンブルク-ヴェストエッケ:約800km

・シュヴェーレンブルク-ヴィントムント:約250km

・シュヴェーレンブルク-ヴェヒターミュンデ:約500km

・シュヴェーレンブルク-リッタートゥルム(陸路):約700km

・シュヴェーレンブルク-ラウシェンバッハ:約350km

・ヴィントムント-ラウシェンバッハ:約100km

・シュヴェーレンブルク-ゾンマーガルト:約550km

・シュヴェーレンブルク-ヴォルフタール:約650km

・シュヴェーレンブルク-ライゼンドルフ:約450km

・シュヴェーレンブルク-ノイムル村:約150km

・シュヴェーレンブルク-オーレンドルフ:約100km

・シュヴェーレンブルク-シュヴァイツァー:約600km

・シュヴェーレンブルク-ネーベルタール:約800km

・ヴェストエッケ-ヴォルフタール:約150km

・ノルトハウゼン-ネーベルタール:約400km

・ヴェヒターミュンデ-リッタートゥルム:約100km


・シュヴェーレンブルク-ヘルシャーホルスト:約1900km

・シュヴェーレンブルク-ゲドゥルト:約1350km

・シュヴェーレンブルク-レヒトシュテット:約1900km

・シュヴェーレンブルク-シュッツェハーゲン:約2200km

・シュヴェーレンブルク-ヴァルケンカンプ:約850km

・ゾンマーガルト-ヴァルケンカンプ:約300km



レヒト法国

挿絵(By みてみん)


概要:

 “法”が語源

 大陸南西部に位置する国家。

 首都は聖都レヒトシュテット。

 総人口は600万人。最大動員兵力15万でゾルタード帝国に次ぐ国力を持つ。

 大陸南西部に東西1000km、南北1000kmの領土を持つ。中央部のガルゲンベルク山脈周辺は魔物が多く住むため、開発が進んでいない。

 水資源が豊かなスマラクト湖から南に人口が集中する。


 守護神(=管理者)の降臨まで清貧に過ごすという教義だったが、当初の理想は失われ、都合のよい聖典を作り出し、民衆を支配している。


 独立したグランツフート共和国とは現在休戦中で、膨張の矛先をグライフトゥルム王国西部のヴェストエッケ付近に向けている。



 フリーデン崩壊後、魔術師の塔である“魔象界の恩寵(ゼーレグナーデ)”がゼーレグネーデ神国を設立。魔導による大陸の支配を目指したが、助言者や代行者により、都ごと破壊され、神国は消滅した。その後、その恐怖を垣間見た下級の魔導師たちは代行者たちの報復がこれ以上起きないように管理者(ヘルシャー)を唯一絶対の神として崇め始める。そして、それが統一暦230年頃にトゥテラリィ教という名で正式に成立した。

 広大な地域が無政府状態となっていたため、トゥテラリィ教が政府の代わりに統治を行っていたが、教会の成立後、統一暦250年頃に宗教レヒト法国として発足した。

 当初は清貧を旨とし、教会と人民の関係は良好であったが、次第に聖職者が腐敗し、統一暦800年頃、東部域で反乱が勃発し、現在のグランツフート共和国と分離した。

 その後、グランツフート共和国に何度も侵攻するが、国民皆兵制の共和国軍に勝利を収めることができず、独立を認めた。


組織:

 首都レヒトシュテットに総本山があり、法王が東西南北の四つの教会を統括する。

 総本山にはレヒト大聖堂と法王庁があり、政治と宗教の中心地となっている。

 各教会はそれぞれの地方を支配する。

 ・枢機卿:総本山で法王を補佐する5名と総主教4名からなる。階位は総主教と同等。

 ・総主教:各教会の最高位

 ・大主教:大聖堂(東西南北の名を冠した教区を統括する聖堂)の統括者。4名。

 ・主教:聖堂(教区を統括する修道院)の統括者または大主教を補佐する聖職者。

 ・司祭:修道院の統括者(修道院長)または主教を補佐する聖職者。

 ・輔祭:司祭を補佐する聖職者。

 ・伝教師:修道院以外で布教活動をする聖職者。

 ・修道士:修道院で修業する者

 聖職者は基本的に魔導師であり、治癒魔導を奇跡と称している。但し、最も魔導を得意とする者であっても第三階位の魔導しか使えず、他の魔導師の塔の上級魔導師程度の能力しかない。

 基本的には修道士になると世俗とは離れ、出家扱いになる。但し、妻帯は可能。

 司祭以上は荘園を有しており、貴族と同列になる。また、世俗の貴族も教会への寄進により、名誉称号を得ることができる。

 各教会には騎士団が存在し、各聖獣の名を冠している。騎士団長は大主教と同列。

 法王は“聖下”、総主教と枢機卿は“猊下”と尊称される。

 普人族のみが人として認められるという宗教観から、獣人族が被差別種族とされている。森人族や小人族も差別対象だが、ほとんどいないため、目立つのは獣人族のみ。


軍事

 聖堂騎士団8万が常備軍。その他に各都市や荘園の守備隊が存在する。大規模な出征時には農民を歩兵や輜重兵として徴用することがある。

 ヴェストヴィント平原など穀倉地帯もあるが、交易による収入が少ないため、国家としては貧しい。また、常備軍が人口の1パーセント以上であること、税金の横領が激しいことから、平民の税負担は収入の六割以上に達している。そのため、外征を行えず、グライフトゥルム王国との国境紛争程度しか発生していない。

 神狼騎士団(北方教会)、聖竜騎士団(東方教会)、鳳凰騎士団(南方教会)、鷲獅子騎士団(西方教会)があり、それぞれ公称3万の兵力を有している。実体としては2万程度。

 各騎士団には白、黒、赤、青が冠される四つの騎士団からなる(例:白狼騎士団、黒竜騎士団、赤鳳騎士団、青鷲騎士団など)。

 聖堂騎士団の標準的な編成は、一個騎士団7千5百名で、1千が騎兵、2千が弓兵、4千が歩兵で、その他5百が定数。但し、定数に達している騎士団はなく、通常は五千名程度で、騎兵8百、弓兵1千2百、歩兵3千。歩兵は槍よりも剣を使う傾向が強く、組織戦より乱戦が得意。

 元々魔導師国家だったが、代行者による破壊を教訓に、魔導師部隊は存在しない。

 一部の騎士たちは東方武術と同様に魔導器(ローア)を用いた身体強化を習得しているため非常に強力だが、その他の兵士は他国と能力的には変わらない。但し、戒律による絶対服従が浸透しており、上位者の命令に盲目的に従うため、全滅するまで戦い、敗走することは極めた稀。

 優秀な騎士が多いため、法国の主力となっているが、常備軍が10万近いため、軍事費の増大を招いている。

 戦時にはこれに貴族領軍6万から7万程度が加わる。

 首都レヒトシュテットには法王直属の聖霊騎士団約1千名が法王庁を守護する。但し、首都の防衛は16ある騎士団が輪番制で駐屯することで担っている。


 北部教区の神狼聖堂騎士団はクライスボルンに本拠を持ち、クロイツホーフ城を前線基地として、ヴェストエッケに何度も侵攻を行っている。

 1214年に餓狼(フングリヒヴォルフ)兵団(トルッペ)が発足。獣人族5千。


政治:

 聖都レヒトシュテットにある法王庁がレヒト法国としての全体を取り仕切るが、東西南北の各教会が半独立国家として地方を統治しており、一つの国家というより連合国家に近い。

 法王庁では、法王の他に5名の枢機卿がおり、それぞれ財政、内政、外交、国防、司法を担当する。対外戦争などの重要案件は法王と枢機卿、各教会の総主教で構成する最高会議で決定される。


地理:

 北方教会の大聖堂はクライスボルンにある。ヴォルケローンの森とガルデンベルク山脈という危険地帯があり、神狼騎士団は聖堂騎士団の中でも最精鋭。最前線のクロイツホーフ城までは約350km。

 東方教会の大聖堂はキルステンにある。ヴェストヴィント平原とスマラクト湖があることから、法国最大の穀倉地帯。最前線のヴァイスキュステまでは約400km。ヴェストヴィント平原の国境付近は緩やかな丘陵地帯で、乾燥していることから森や林はほとんどない。

 南方教会の大聖堂はハーセナイにある。ゲヘルツ平原が穀倉地帯で更に東方航路の港を持つことから四教会で最も裕福である。

 西方教会の大聖堂はヴァールハーフェンにある。法国中央部の丘陵地帯の開発が遅れている。


 レヒトシュテットとの距離は以下の通り。

・キルステン:約250km

・ハーセナイ:約350km

・ヴァールハーフェン:約850km(ハーセナイ経由)、直行で約500km

・クライスボルン:約1200km(ハーセナイ、ヴァールハーフェン経由)

 直行で約650km


・クライスボルン-クロイツホーフ城:約400km

・キルステン-ズィークホーフ城:約300km

・キルステン-ヴァイスキュステ:約400km



グランツフート共和国:

概要:

 “栄光の守り”が語源

 大陸南部中央に位置する国家。

 首都はゲドゥルト。

 総人口は440万人。平常時の兵力6万。国民皆兵制であるため、最大動員数は人口の5パーセント、22万を超える。

 大陸南部に東西1000km、南北1000kmの領土を持つ。首都ゲドゥルト周辺から北デュレハイデ高原の南までが豊かな農業地帯であり、食料輸出国となっている。


 北部のヴァルケンカンプは商業都市として栄えているが、ゾルダート帝国の南下の兆しが見えたため、常時2万の兵力が駐屯している軍事拠点ともなっている。

 北部のデュレハイデ高原は地味に乏しい荒地だが、大陸公路の中継地点として人の往来は多い。

 独立時にグライフトゥルム王国の支援を受けたため、友好関係にある。特にゾルダート帝国が南方に興味を示し始めたため、グライフトゥルム王国へ積極的に支援している。

 フォルタージュンゲル(拷問の密林)は魔物の巣窟となっており、絶えず国軍が討伐に当たっているが、追いつかず、狩人組合(イェーガーツンフト)に依頼している。フォルタージュンゲルには魔窟ベスティエネストと呼ばれるダンジョンのようなものがあり、イェーガーたちが魔物を間引いて報奨金を得ている。

 レヒト法国との国境はランダル河であるが、水量が少なく渡河が容易であるため、障壁とはなっていない。

 ランダル河の上流域、ヴェストヴィント平原の東の端にあるズィークホーフ城は、防衛拠点というより監視拠点という扱いで、ここから狼煙台による連絡網が作られている。


成立:

 統一暦800年頃、レヒト法国より独立した。

 独立のきっかけはレヒト法国内で侵攻されているトゥテラリィ教の聖職者たちの横暴だった。当時、聖職者たちは特権を悪用し、重税を課し若い女性を暴行するなど、市民の反感を買っていた。しかし、教会は聖職者たちを罰することなく、更に事態は悪化した。聖騎士以外の騎士や貴族にすら傍若無人な振る舞いを始めたため、有力な貴族や騎士たちが反乱を起こし、聖職者を追放した。

 当時、トゥテラリィ教会は絶大な権力を持っており、反乱はすぐに鎮圧するかに見えたが、反乱軍の指導者は隣国グライフトゥルム王国に助けを求め、グライフトゥルムもレヒト法国の力を削ぐために反乱軍を積極的に支援した。

 この結果、ランダル河以東がグランツフート共和国として独立を果たした。


政治体制:

 共和制国家。

 国家元首は共和国最高運営会議議長。通称は国家主席。

 選挙により選出された議員による共和国議会と議員により選出された最高運営会議により運営される。立法府と行政府に明確に分離しておらず、権限は曖昧。

 大陸公路の中央部に当たることから有力な商人が多く、彼らの多くが議員となって国政を動かしている。民主制ではあるが、一定以上の税を収めた者のみが参政権を与えられるシステム。

 何度か軍人が王制に移行しようとしたが、その都度商人組合によって防がれている。


軍事:

 最大動員兵力22万。

 国民皆兵制であり、軍事教練は国民の義務となっている。但し、商人組合や狩人ギルドなど職業ギルドに所属している者は免除される。

 明確に決まっている階級は元帥と将軍のみ。元帥は最高司令官、将軍は師団長。

 それ未満に階級はなく、大隊長や小隊長などの職制がそのまま身分を表す。

 職業軍人は士官と下士官が多く、召集された国民が兵士となる。そのため、歩兵が中心の構成。

 職業軍人はある種の徒弟制で、士官である隊長(通常は中隊長以上)の従卒として軍に入り、大隊長以上の幹部の推薦を持って士官(小隊長)となる。帆船時代の海軍の士官候補生に近いイメージ。

 近代軍の編成に近く、1個師団は1万人で師団長は将軍。

 1個連隊は2千人、1個大隊5百人、1個中隊100人、1個小隊30人、1個分隊10人となる。

 但し、平時は即応師団2個のみがフル編成で、それ以外の20個師団は、2千人程度の士官・下士官・中核となる兵士のみ。

 常備軍は約6万。

 首都ゲドゥルトに首都防衛軍(三個師団)3万、首都の西のケッテシュロス城にケッテシュロス防衛師団(一個師団)1万、ヴァルケンカンプに中央機動軍(二個師団)2万。

 ズィークホーフ城やマッセルシュタイン城は監視兵5百程度。


地理:

首都ゲドゥルト:

 共和国の南西部にある交易都市。人口は20万人。周辺を合わせると30万人を超える大陸有数の大都市。

 フィッツァウ河の河口付近にあり、北部の丘陵地帯と合わせて、共和国最大の穀倉地帯にあり、農業が盛ん。特に丘陵地帯のワインは高級品として珍重される。

 東方系武術が盛んで多くの道場がある。また、予備役の兵士が多く住むため、3万程度の義勇兵はすぐに招集が可能。


ヴァルケンカンプ:

 共和国の中央にある交易都市。人口は10万人。周辺を合わせると15万を超える。

 大陸公路にあり、東のシュッツェハーゲン王国、北のグライフトゥルム王国の間にあり、中継点として発展した。

 乾燥気味の気候だが、小麦や大麦の生産量は多く、放牧も盛ん。

 中央機動軍の駐屯地があり、予備役の兵士が3万人ほどいるため、1万人程度の義勇兵はすぐに招集可能。


ヴァルケンカンプ-ズィークホーフ城:約450km

ゲドゥルト-ヴァルケンカンプ:約500km

ゲドゥルト-ケッテシュロス:約250km

ヴァルケンカンプ-ゾンマーガルト城:約300km




シュッツェハーゲン王国:

挿絵(By みてみん)

1193年当時

挿絵(By みてみん)

1200年当時


概要:

 “射手の垣根”が語源

 大陸南東部に位置する国家。

 王都はシュッツェハーゲン


 総人口は560万人。総兵力10万で1200年代ではレヒト法国に次ぐ第三位の国力を持つ。

 豊かな自然と鉱物資源に恵まれた強国で、天然の要害ゲファール河により、北部のゾルダート帝国の侵略を防いでいる。

 西部のグランツフート共和国とはシュタークホルスト山地で隔たれていることと、大陸公路の接続から友好関係にある。


成立

 統一暦400年頃成立した封建国家。

 北のゲファール河、西のシュタークホルスト山地によって他国からの侵入はなかったが、成立当初は小国に分裂し戦乱が続いていた。

 現在の王家ハーゲンベルク家が統一を果たし、シュッツェハーゲン王国を成立した。

 ハーゲンベルク家の尽力により、シュッツェハーゲンは統一国家となり、豊かな自然と豊富な鉱物資源により、大国に成長した。

 その後、ハーゲンベルク家内で内紛が起き、直系が途絶えると、シュッツェハーゲン王国とハーゲンベルク家いう名は残ったものの、三度王朝が変わっている。それに伴い、内戦が断続的に起きる不安定な国家であったが、1100年代半ばから、ゾルダート帝国の前身であるゾルダート共和国への警戒から内戦が終結。更にリヒトロット皇国と同盟を結び、ゾルダートに宣戦を布告した。

 当初は有利に戦争を勧めていたが、1165年にゾルダートが帝政を敷くと、一気に押し返され、ゲファール河での防衛に専念する。


政治体制:

 国王を頂点とした封建制。

 封建領主の力が強いが、王家であるハーゲンベルク家への対する忠誠心は低くない。但し、ハーゲンベルク家は王家の他に三つの大公家があることから、派閥争いが絶えなかった。

 しかし、ゾルダート帝国が侵攻を開始してからは挙国体制で防衛に当たっている。

 シュタークホルスト山地には小人族が住み、優秀な武具を供給している。また、ゲファール河周辺には森人族が多く住み、シュッツェハーゲンとともにゾルダート帝国に抵抗している。更にゾルダート帝国から多くの獣人族が難民として流れ込み、多人種国家となっている。但し、小人族、森人族、獣人族に参政権はない。


軍事:

 総兵力10万人

 国名の通り、弓兵が主体で防衛戦を得意としている。また、小人族の優秀な防具を身に付けた重装歩兵が五メートル近い長槍を持つ方陣はシュッツェハーゲンの最も得意とする戦術である。

 ゾルダート帝国のような制度化した組織はなく、各地域に騎士団があり、騎士団長が指揮官となる。



ゾルダート帝国:

概要:

 “兵士”が語源。

 大陸北東部に位置する国家。

 帝都はヘルシャーホルスト。


 50年前に勃興した新興国でリヒトロット皇国(光の土地の意)を滅亡させている。

 1215年現在の総人口は1000万人。常時兵力16万の大国。

 1215年現在の皇帝は第十二代のマクシミリアン(38歳)。

 大陸北東部に広大な領土(東西1600km、南北1100km)を持つが、北部と南部は険しい山岳地帯となっており、西部の草原地帯も乾燥しており、中央部のグリューン河近くの旧皇都リヒトロットと東側の帝都ヘルシャーホルスト周辺に人口が集中する。

 南部のベーゼシュトック(邪悪な階段)山地は鉱物資源が豊富であり、開発が進められている。

 西部はシュヴァーン河沿いに良好な農地があるが、その他は比較的乾燥しており、綿花など乾燥に強い作物の栽培が行われている。西部総督府がフェアラートにあるが、グライフトゥルム王国への侵攻拠点としての位置づけで、経済的には東部や中部に比べて劣っている。

 傭兵団が独立し、当時の大国リヒトロット皇国から独立して共和制を敷いたが、最終的には帝国となったため、力こそ正義という風潮が強い。

 リヒトプレリエ大平原には十万ともに十万とも言われる遊牧民が住み、帝国から半独立状態で暮らしている。その中には皇帝の座を争ったゴットフリート皇子がおり、反帝国活動を行っている。

 北公路ノルトシュトラーセは、リヒトロット皇国時代は通商街道として往来が多かったが、グライフトゥルム王国やグランツフート共和国との国交断絶により、寂れた街道となっている。

 ベーゼシュトック山地からリヒトロットを経てシュトルムゴルフ湾に流れるグリューン河は皇国時代に水運に利用されたが、帝国が統治するようになり廃れている。

 また、シュトルムゴルフ湾の海運業者たちは皇国派であったため、帝国の弾圧を恐れ、グライフトゥルム王国に拠点を移している。



成立:

 統一暦1000年頃、大陸北部リヒトロット皇国東部で生まれた傭兵団ゾルダートは、カリスマ的な団長ヴォルフガング・クルーガーによって、一万人を超える大傭兵団に成長する。

 その当時、リヒトロットは貴族の横暴により平民たちは不満を抱えていた。特に東部クロンティリス侯爵領では元々農業生産能力が低く、食料に事欠く状態でありながらも重税が課され、小規模な反乱が頻発していた。

 また、オストインゼル公爵は完全な独立を目論んでおり、ヴォルフガングらを密かに支援する。

 ヴォルフガングは平民たちの不満と自らの武力を背景にリヒトロット皇国から分離独立を図った。更にオストインゼル公爵の経済的支援により、何度も敗北を経験しながらも戦い続ける。100年にもわたる独立運動の結果、統一暦1103年、大陸北東部ヘルシャーホルストを中心にゾルダート共和国が成立した。

 独立当時は人口300万人程度とリヒトロット皇国の半分程度の国力しかなかったが、オストインゼル公爵や商人組合の工作により、リヒトロット皇国内で内紛が発生し、共和国は存続することができた。

 ゾルダート共和国は成立過程から軍人の権威が高かった。これは大国リヒトロットとの慢性的な戦争を勝ち抜くためで、共和制といいながらも執政官と呼ばれる最高司令官と元老と呼ばれる元軍人たちによる寡頭政治だった。つまり、建前上、軍人や政治家からなる元老院と商人など裕福な平民たちからなる民会の二院制であったが、執政官とその支持者のみによって政治が行われていたのだ。

 そのような体制が数十年続いたが、シュッツェハーゲン王国の参戦によりリヒトロット皇国との戦争がこう着状態に陥ると、最高意思決定に時間が掛かることが問題視され、執政官が独裁官となり、更に皇帝へと名を変えていった。

 1165年、独裁官であったオスヴァルト・クルーガーがゾルダート帝国初代皇帝となった。但し、彼はゾルダート帝国の成立をゾルダート傭兵団が独立運動を開始した1001年と定め、初代皇帝をヴォルフガングとした。そのため、彼は八代皇帝オスヴァルト二世を名乗ることになる。

 1180年頃、第十代皇帝ヴォルフガング三世の時代からリヒトロット皇国を圧迫し始め、1193年頃には皇国の版図は皇都と皇国北西部のみとなる。皇国軍は皇都防衛と補給線攻撃に戦術を切り替え、抵抗を開始。この頃の人口は600万人程度。

 1196年秋にグライフトゥルム王国、グランツフート共和国の連合軍がシュヴァーン河を渡り、帝国軍を攻撃。皇国軍もそれに呼応して反撃を試みるが、連合軍がフェアラート会戦で大敗北を喫し、皇国軍の反攻作戦は失敗に終わった。

 第十一代皇帝コルネリウス二世が1206年4月に47歳という若さで崩御したため、第一王子であったマクシミリアンが若干26歳で即位。即位後は弟であるゴットフリートを支持する軍上層部の暴走を許し、ヴェヒターミュンデの戦いで敗北を味わう。

 その後、ゴットフリート派を粛清し独裁体制を確立。1209年に宿敵リヒトロット皇国の皇都リヒトロットを陥落し、ゾルダートの悲願を達成。しかし、リヒトプレリエ大平原にゴットフリート皇子、南部鉱山地帯に皇国の残党が潜んでおり、北公路やエーデルシュタイン付近でゲリラ活動を行っている。

 リヒトロット皇国の次の標的としてグライフトゥルム王国に定め、シュヴァーン河以西への侵攻の機会を窺っている。


政治体制:

 ゾルダート帝国は中央集権国家である。封建制は採用しておらず、貴族は存在しない。

 皇帝のもとには、枢密院と呼ばれる諮問機関があり、元老と呼ばれる軍人、政治家たちが皇帝を補佐している。

 商人などが議員である民会という組織があるが、名誉職的な扱いであり、政治に参加できるわけではない。

 皇帝の下には内務府、軍務府、財務府の三府が置かれ、それぞれ尚書が統括する。宰相などの統括する文官は存在せず、尚書は皇帝直属となる。

 内務府は内政全般と国内の治安維持、軍務府は帝国軍の管理、財務府は徴税と財務を行う。戦争を含む外交は皇帝の専権事項だが、枢密院の承認が必要。

 広大な領地を中央集権体制で維持するため、皇帝が任命する総督が各州を治め、護民官が軍事を統括する。任期は総督が5年、護民官が10年と定められており、総督および護民官が必要以上に力を付けない制度となっている。


総督府:

 帝都が大陸の東にあることから、総督府が置かれている。1215年現在、シュッツェハーゲン王国との国境を守る東部総督府、エーデルシュタインと南部鉱山地帯を守る南部総督府、旧皇都リヒトロット市周辺を守る中部総督府、グライフトゥルム王国との国境に近いフックスベルガーにある西部総督府。

 旧リヒトロット皇国は反帝国感情が強く、財政が悪化している状況においても総督府を設置せざるを得なかった。東部以外の総督府軍は現地民を徴用しており、士気・練度ともに低い。


貴族制度:

 貴族制度に近いものは存在するが、領地や特権は有さず、名誉職的な称号に過ぎない。爵位は大公の他には勲爵士のみ。大公は皇帝の兄弟など有力な皇族に与えられる称号だが、二代に限り名乗ることができる。これは現皇帝の子供だけでなく、甥や姪までが皇位継承権を有するためである。

 勲爵士は特別な武功があった者に与えられる称号で、世襲は認められていない。


枢密院:

 元尚書や元総督など、一線を引いた元老が議員となる。定数は9名。任期は5年で一度だけ再任が可能。議員の選出は枢密院が推薦し、皇帝が親任する。

 議長を除く過半数の賛成で承認。同数の場合は議長に一任される。

 全体の75%(9名中7名)の賛成で、新皇帝の即位が承認され、退位を勧告することも可能。

 枢密院の任期や定員に関する規定の変更には皇帝の賛成に加え、尚書、軍団長、総督のうち、三分の二以上の賛成が必要。この規定により任期については何度も延長や制限の撤廃が提案されたが、いずれも否決されている。

 基本的に大公など皇室関係者3名、軍関係者3名、官僚出身者3名からなり、それぞれが派閥を形成している。

 1206年にマクシミリアンが即位してから権限が縮小され、形骸化している。


軍事:

 常時兵力16万。

 編成は最大単位が軍団(3万人)。その下に師団(1万人)、連隊(2千5百人)、大隊(5百人)、中隊(100人)、小隊(20人)となる。また、二個軍団以上を統合した軍もある。

 指揮官の階級は、元帥、将軍、騎士長、上級騎士、騎士が士官。元帥が軍団、将軍が師団、騎士長が連隊、上級騎士が大隊、騎士が中隊と小隊の指揮官となる。皇帝は最高司令官である大元帥として、帝国軍の頂点に立つ。

 参謀は皇帝直属の参謀本部の総参謀長が元帥、軍団参謀長が将軍と同格で、その下は騎士長と同格の上級参謀、上級騎士と同格の参謀、騎士と同格の参謀補という階級がある。

 この他に准士官は従騎士、下士官は従士と呼ばれ、兵士のうち優秀者が昇格する。

 大隊までが単一兵種。連隊には補給中隊があり、師団には補給大隊と支援部隊があるため、師団の実質的な戦闘員は九千名。


 1215年当時の編成は、3個軍団9万と治安維持に当たる総督府軍が約7万(エーデルシュタインの南部総督府1万、リヒトロットの中部総督府2万、ナブリュックの西部総督府2万、うちフェアラート守備兵団が1万、シュッツェハーゲン王国との国境付近の東部総督府1万)の16万。

 第一軍団は帝都防衛が主で、第二、第三軍団が外征軍。

 広大な草原地帯が主な戦場であったことから、正規軍団の主力は軽装騎兵。総兵力の約三割6万にも及ぶ。騎兵はすべて職業軍人だが、歩兵の多くは徴兵された市民である。尚武の気質のある国民性もあり、周辺国の騎士団と遜色のない練度を誇る。

 この他に森林地帯や山岳地帯での戦闘を専門とする部隊や攻城戦専門部隊も存在する。

 


 兵士は実力によってのみ評価される。士官は帝都ヘルシャーホルストにあるヴォルフガング士官学校を卒業した者のみがなれる。生まれに関係なく、士官の階級は絶対。

 有力な軍人の家系が貴族化しつつあり問題になっているが、生まれよりも士官学校の成績がものを言うため、顕在化はしていない。

 士官学校では身体強化の得意な者が指揮官コースに、身体強化が苦手な者は参謀コースに回される。これはゾルダートでは前線に立つ指揮官の方が優遇されていることを示している。その結果、優秀な参謀が少なく、力押しの戦いが多くなっている。


 ヴォルフガング士官学校は全寮制の4年制で、入学時の定員は200名。戦術や国際情勢などの座学だけでなく、西方系武術と集団戦の指揮を学ぶが、成績不良者は帝室関係者であっても無条件で退学になるほど厳しく、卒業時には半分の100名程度にまで減る。3年目にコース分けが行われる。

 通常16歳で入学し、20歳で卒業するが、入学に年齢制限がないため、15歳以下で入学する者もいる。但し、あまり若すぎると体力的・精神的に付いていけず退学になることが多い。

 軍と同様に上下関係が厳しく、下級生は上級生に絶対服従を強要され、反抗的な態度を取る者は退学に追い込まれることもある。

 首席卒業者は大隊長である上級騎士か、師団参謀となることが通例。


諜報組織:

 1201年1月、シュテヒェルト内務尚書が内務府内に諜報局を設置。構成員はヴァールヴェヒターの間者が50人、その他の情報員が300人程度で発足。1204年11月にマティアスによって、王国内の諜報網を壊滅される。それを機に更に強化を行い、間者60人、情報員500人規模となる。但し、情報員は専門の教育を受けていないため、能力は限定的。

 1206年5月にペテルセン総参謀長が皇帝直轄の諜報組織“(オウレ)”の設立を提案。諜報局の間者30人を移籍させ、更に70人を増員し、100名体制とする。梟は暗殺を含む謀略を専門としているため、皇帝以外に実態を知る者はいない。

 1206年8月頃に王国に30人程度を派遣し、マルクトホーフェン侯爵と連携し、王国内で活動を開始する。



経済:

 リヒトロット皇国の元皇都リヒトロット周辺とグリューン河流域は大陸屈指の穀倉地帯で小麦などの穀物の生産が盛ん。南部ベーゼシュトック山地には多くの金属鉱山があり、リヒトロットまで運ばれた後、製品や素材として各国に輸出され外貨を獲得していた。

 帝都ヘルシャーホルスト周辺は森林地帯であり、多くの魔素溜まり(プノイマプファール)が存在するため、農業には適していない。

 西部はシュヴァーン河流域こそ農業に適するものの、リヒトプレイリ大平原は遊牧民が半独立状態で暮らしており、開発は進んでいない。シュヴァーン河流域では綿花の栽培が盛んで、外貨獲得手段にもなっている。

 統一暦1100年頃から商業組合(ヘンドラーツンフト)が帝国を警戒し始めたため、独自の通貨ゾルダート帝国マルク(SM)を発行し、統制経済に移行。基本的に帝国内でしか使えないため、当初は外貨獲得で苦労したが、リヒトロット皇国が滅亡後、独自の経済圏が拡大したことで問題は小さくなった。

 周囲の国に戦争を仕掛けているため、オストインゼル公国を経由することで他国と交易を行っている。そのため、国内で生産できないものは非常に高価。

 皇帝及び枢密院が武断的な性格であり、経済に対してあまり理解がない。財務府の官僚が何度も改革案を出しているが、無視されている状況。但し、マクシミリアンが即位後は経済政策が見直されつつある。


 1200年頃のゾルダート帝国の国家予算と軍事費。

 人口約600万人、一人当たりの国内総生産(GDP)は2千ツンフトマルク(ZM)と推定され、GDPは120億ZM程度。

 国家予算をGDPの50%推定すると、約60億ZMとなる。国家予算に占める軍事費は30%ほどで18億ZM。


 1213年頃のゾルダート帝国の国家予算と軍事費。

 人口約1000万人、一人当たりの国内総生産(GDP)は1500ツンフトマルク(ZM)と推定され、GDPは150億ZM程度。

 国家予算をGDPの50%推定すると、約75億ZMとなる。国家予算に占める軍事費は20%ほどで15億ZM。



教育:

 ゾルダード共和国時代から教育には力を入れ、世界初の軍人教育機関ヴォルフガング士官学校は百年以上の歴史を誇る。

 士官学校は三年課程で、十五歳以上で入学が可能。定員は一学年二百人。戦術や指揮、西方式兵術などの軍事関係の他、人事や経済に関する授業もある。

 士官学校を十位以内で卒業すると、皇帝から直々に短剣を授与され、出世が約束される。

 士官学校の前に三年課程の幼年学校もあるが、エスカレーター式ではなく、受験で合格する必要がある。

 基本的に皇子や皇女たちは帝国軍を率いる皇帝になるため、士官学校に入学するが、ここでも実力主義により入試の免除はなく、不合格となる者もいる。その場合、皇帝への道は閉ざされる。

 軍関係以外では第二代皇帝(実際には共和国時代の執政官)テオドールの名を冠した、テオドール大学がある。テオドール大学は五年制で、年齢制限はない。学部は政治、経済、法律、農業、数学(代数・幾何)、建築、教育の七学部。官僚を育てるという目的のため、実学でない文学や芸術系の学部はない。シュヴェーレンベルク王立学院より歴史は浅いが、先進的な教育が行われ、卒業生は内務府などの役所に就職することが多い。



帝都ヘルシャーホルスト:

 帝国東部のザフィーア河河口付近にある大都市。人口は1205年当時で20万人(帝国軍兵士を除く)、1215年には30万人にまで膨れ上がった。ザフィーア河を使った交易都市。

 北側に皇宮である白狼宮があり、その周辺が官庁街と高級住宅地、ザフィーア河に近い南側が商業地区でその東側にある港湾地区と合わせて最も賑わっている地区でもある。

 近衛兵でもある第一軍団は皇宮近くに駐屯し、第二軍団以降は西側に駐屯地を構えている。

 他国の首都のような城壁はない。これは元々傭兵団の根拠地であり実力で排除するという考えがあったが、それ以上にゾルダート帝国の前身であるゾルダート共和国が貧しかったため。

 無計画な都市であり、人口増加が顕著となる1207年頃からインフラ整備の遅れが問題になった。

 周辺は基本的に荒れ地であるため地味に乏しく、ザフィーア河流域の農業地帯から食料を輸送している。



リヒトプレリエ大平原:

 東西四百キロ、南北三百キロほどの草原地帯で、大河川はないものの、日本の一級河川相当の川が何本も南から北に流れている肥沃な土地。北側の北公路周辺は農地が広がるが、その他は遊牧民の自治区であり、商人以外が訪れることは稀。

 遊牧民は総数20万人ほどで、百近い部族がそれぞれの縄張りの中で暮らしている。国家はないが、二年に一度、族長が集まる族長会議がある。

 有力な部族は、ゾンネ(太陽)族、ヒンメル(空)族、ボーデン(大地)族、ヴィント(風)族、ドンナー(雷)族の五大部族。それぞれ1万人程度で、その他の部族は5百から3千人程度。ゾンネ族は大平原の中心付近に縄張りを持ち、族長会議を主催している。ヒンメル族は東、ボーデン族は北、ヴィント族は西、ドンナー族は南に縄張りがある。



フェアラート:

 シュヴァーン河に近い西の国境の要。

 城壁は高さ5m、一辺1.5kmで東西南北に城門がある。人口は三万人ほどで、海が近く海産物が特産品。特に牡蠣やムール貝は市民に親しまれ、名物料理となっている。但し、下水口付近の貝は中毒になる可能性があり、市民は食べない。



ヘルシャーホルスト-エーデルシュタイン:水路6百km、陸路250km

ヘルシャーホルスト-リヒトロット:8百km

エーデルシュタイン-リヒトロット:3百km

リヒトロット-フェアラート:5百km

リヒトロット-ナブリュック:2百km

リヒトロット-フックスベルガー:3百km

リヒトロット-タウバッハ:4百km

タウバッハ-フェアラート:1百km




オストインゼル公国:

概要:

 “東の島”が語源

 大陸東部のオストインゼル島にある国家。

 首都はオストパラスト。


 元々は独立国であったが、リヒトロット皇国に併合され、オストインゼル公爵領として皇国の一部となった。皇国の東部で反乱が発生し、ゾルダート共和国独立運動が起きると、皇国からの独立を図るべく、ゾルダートへの支援を行った。

 共和国が建国された際、共和国や商人組合の支援を受けて独立を果たす。但し、皇国や共和国、その後の帝国からの干渉を防ぐため、あえて公国を名乗り続けている。

 総人口は200万人。総兵力1万人の小国。

 険しい山岳地帯と狭い国土から国力は六ヶ国最低。

 ガオナァハイム(悪党の家)山脈には「真理の探究者(ヴァールズーハー)」の魔導師の塔がある。

 独自の文化を形成し、東方武術が発達した。このため、達人と呼ばれる狩人イェーガーが多く住み、武力は侮れない。

 また、帆船が発達しているため、海上交易が盛んで、水軍も存在する。


成立:

 北の大国リヒトロット皇国の一公爵領であったが、ゾルダート帝国の前身、ゾルダート共和国の独立運動を支援。共和国が成立したことを機に、リヒトロット本国との連絡線が海路のみとなったことからオストインゼル公爵が独立に向けて動き出した。当初はリヒトロット皇国派が多く、また、ゾルダート共和国がいつ崩壊してもおかしくない状況であり、公爵は共和国への支援を続けるとともに自治権の拡大など水面下で独立の準備をした。

 統一暦1130年、ゾルダート共和国が独裁制に移行したことを確認し、オストインゼル公国を設立した。この時、リヒトロット皇国は公式には独立を認めなかったものの、オストインゼル公爵を大公に陞爵させ、ゾルダート共和国の後背を突かせる戦略に切り替えた。しかし、オストインゼル大公は自らが支援したゾルダート共和国に対し、様々な理由を付けてゾルダートとの戦端を開かなかった。

 統一暦1165年にゾルダート帝国が成立すると、オストインゼル大公はゾルダート皇帝に臣下であることを認める公文書を送付した。皇帝がそれを認め、正式にオストインゼル公国が認められた。更に新興国であるゾルダート帝国に対しては朝貢国となることで侵略を防ぐ方針に切り替える。


政治体制:

 大公を頂点とした封建制。但し、公爵と侯爵は存在せず、爵位は伯爵以下のみ。これはゾルダート帝国に対し、公爵領であるというアピールであると言われている。

 爵位とは裏腹に貴族の力は強く、大公は貴族の調停役という側面が強い。封建領主である貴族は同じく封建領主である騎士たちと主従関係を結んでおり、オストインゼル島内では土地を巡った小競り合いが後を絶たない。


軍事:

 総兵力は1万人と少数だが、実際には封建領主たちの兵力があるため、5万以上になる。

 ゾルダートのような軍の近代化は進んでおらず、指揮命令系統が混乱することが多い。しかしながら、東方系武発祥の地ということもあり、兵士の個人能力は高く、少数であれば数倍の兵力でも対等に戦えると言われている。

 また、ヴァールズーハーが公国を全面的にバックアップしているため、諜報関係で優位に立ち、帝国の干渉を防ぎ続けている。



リヒトロット皇国:

概要:

 “光の土地”が語源。

 かつて大陸北東部に位置していた大国。ゾルダート帝国の浸食を受け、統一暦1209年に皇都リヒトロットが陥落し、1212年12月に皇王が殺され滅亡した。


 最盛期の総人口は1000万人。皇帝を頂点とした封建主義だが、伝統的に貴族の力が強く、各貴族領は半独立状態で皇帝の権力が及ばない状況が続いていた。

 レヒト法国が国境を接している時代は南部で武力衝突が頻繁に起きたが、レヒト法国からグランツフート共和国が独立すると、周辺国との戦争はなくなった。しかし、国外に敵がいなくなったことで、逆に貴族同士の戦闘が頻繁に起きるようになり、慢性的に小規模な内戦が起きる不安定な国家であった。

 軍事的には貴族の直属の騎士と傭兵団が主体の旧態依然としたもので、傭兵団が力を持ち、ゾルダート帝国の建国を許すことになる。

 南部のエーデルシュタイン周辺に金属鉱山が多くあり、皇国の財政を支えていた。また、西部のリヒトプレリエ大平原は大陸屈指の穀倉地帯であり、皇国全体としては豊かであった。

 一方東部と北部は貧しく、北部には海沿いに港町が点在する他は大きな勢力はなく、東部はザフィーア湖やザフィーア河周辺が農業に適するものの貧しい地域であり、取り残されていた。

 東部一の大貴族クロンティリス侯爵が近隣の貴族領を併合し始め、それに伴い重税を課した。そのため、平民たちは何度も反乱を起こした。

 これに対し、皇帝及び皇国政府は無力で、五月雨式に軍を派遣するに留めた。その結果、クロンティリス侯爵領では更なる軍費の増加を招き、税負担が更に大きくなる。また、平民たちは皇国の政治体制が根本的な原因であると考え、グランツフート共和国に倣い、平民による国家の独立を目指すことになった。




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