タイムマシンの防人
私は「タイムマシンが発明されないように監視する」という
「タイムマシンの防人」をしています。
私の家系は先祖代々、この重大な任務を請け負っています。
私は22歳の時に父に教えられその事実を知りました。
一子相伝の任務で私の弟もそのことを知りません。
子供のころ、私は父が何の仕事をしているのか知りませんでした。
今考えればいつもフラフラしていたように思います。
給料は毎月ある大きい組織から振り込まれています。
もちろん未来の企業からです。
仕事の内容はいたって簡単です。
タイムマシンが発明されそうになったら現場に行き、それを壊すことです。
もしくは、それっぽい事を作り出しそうな研究者がいたら
それよりもっと面白い研究テーマを与えて気を逸らすことです。
なぜそんなことをするのか?と疑問に思う人もいるでしょう。
答えは簡単です。未来においてタイムマシンが完成してしまい
歴史がえらい事になったからです。
「だったら、お前の仕事は意味がないじゃないか」とあなたは思うでしょう。
ところがどっこい、そうではないのです。
未来ではタイムマシンによって
いくつもの「パラレルワールド」ができてしまっているのです。
要するに、書き換えた過去というものの発生と同時に
新しい別バージョンの「世界」が誕生しまくっちゃっているのです。
できてしまったたくさんのパラレルワールドの中では、あなたが何人もいてるのです。
そして未来では、このタイムマシンの発明のおかげで様々な問題が起こりました。
例えば戦争。あるパラレルワールドの「世界」では世界戦争が起こり、すべてがなくなっているのですが、別のパラレルワールドの「世界」では、アメリカだけが残っていたり、中国だけが残っていたり、といくつものパターンの「世界」を作ることが可能になりました。
よって「この「世界」では勝たせてあげるから…」というような「別パターンの世界」を作ることで、国々は戦争を収めようとしました。
でも未来のある日
「これではダメだ。ややこしい」ということで
「パラレルワールドをこれ以上増やす事を禁止」と世界憲法で定めました。
タイムマシンができる前の時代については、歴史の教科書どおり戻そうということになりました。
そして世界総会のえらい人達がお金を出資し
「タイムマシンの防人」という人材を「過去」に派遣しました。
それが私の先祖にあたる人間です。
しかし、今私が生きているこの「世界」では、私がいるにもかかわらず
残念ながら、未来においてタイムマシンが出来てしまっていることになります。
なぜなら私がこの「世界」には生きているからです。
タイムマシンが見事壊せていれば、私もご先祖様もいないのです。
またお給料も振り込まれないのです。
あと、これは、ひーおじいちゃんに聞いたのですが
(防人の話を父に聞く前、まだ小学生の頃にこの話を聞いたので
完全におじいちゃんはボケたと思っていたのですが)
タイムマシンにせよクローンにせよロボットにせよ
先の先の未来で、人間はそれらを間違った事にしか使えないらしいです。
透明人間になる薬もできましたが、戦争やお風呂を覗くことぐらいにしか使えなかったそうです。
不老不死の薬もできましたが、人口が増え続けるために使用中止になったそうです。
ちなみにスタップ細胞はあったみたいです。
私はこのタイムマシンの防人をしながら思うのです。
「人はなぜ生きるのか?幸せとは何か?」
父も同じことを誰にも相談できずに1人で考えていたんだろうなぁと思うと
うれしいような複雑な気持ちです。
そしてたぶん同じようにこの問を結論づけたと思うのです。
「次の世代の子供たちが幸せであることが幸せなのではないのか」と
私はすごい任務を遂行してるのですが、歴史に名前を刻むことはできません。
ただ壊して、祈るばかりなのです。




