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タイムマシンの防人

掲載日:2016/01/29

私は「タイムマシンが発明されないように監視する」という

「タイムマシンの防人」をしています。


私の家系は先祖代々、この重大な任務を請け負っています。

私は22歳の時に父に教えられその事実を知りました。

一子相伝の任務で私の弟もそのことを知りません。

子供のころ、私は父が何の仕事をしているのか知りませんでした。

今考えればいつもフラフラしていたように思います。


給料は毎月ある大きい組織から振り込まれています。

もちろん未来の企業からです。

仕事の内容はいたって簡単です。

タイムマシンが発明されそうになったら現場に行き、それを壊すことです。

もしくは、それっぽい事を作り出しそうな研究者がいたら

それよりもっと面白い研究テーマを与えて気を逸らすことです。


なぜそんなことをするのか?と疑問に思う人もいるでしょう。

答えは簡単です。未来においてタイムマシンが完成してしまい

歴史がえらい事になったからです。

「だったら、お前の仕事は意味がないじゃないか」とあなたは思うでしょう。

ところがどっこい、そうではないのです。


未来ではタイムマシンによって

いくつもの「パラレルワールド」ができてしまっているのです。

要するに、書き換えた過去というものの発生と同時に

新しい別バージョンの「世界」が誕生しまくっちゃっているのです。

できてしまったたくさんのパラレルワールドの中では、あなたが何人もいてるのです。


そして未来では、このタイムマシンの発明のおかげで様々な問題が起こりました。

例えば戦争。あるパラレルワールドの「世界」では世界戦争が起こり、すべてがなくなっているのですが、別のパラレルワールドの「世界」では、アメリカだけが残っていたり、中国だけが残っていたり、といくつものパターンの「世界」を作ることが可能になりました。

よって「この「世界」では勝たせてあげるから…」というような「別パターンの世界」を作ることで、国々は戦争を収めようとしました。


でも未来のある日

「これではダメだ。ややこしい」ということで

「パラレルワールドをこれ以上増やす事を禁止」と世界憲法で定めました。

タイムマシンができる前の時代については、歴史の教科書どおり戻そうということになりました。


そして世界総会のえらい人達がお金を出資し

「タイムマシンの防人」という人材を「過去」に派遣しました。

それが私の先祖にあたる人間です。

しかし、今私が生きているこの「世界」では、私がいるにもかかわらず

残念ながら、未来においてタイムマシンが出来てしまっていることになります。

なぜなら私がこの「世界」には生きているからです。

タイムマシンが見事壊せていれば、私もご先祖様もいないのです。

またお給料も振り込まれないのです。


あと、これは、ひーおじいちゃんに聞いたのですが

(防人の話を父に聞く前、まだ小学生の頃にこの話を聞いたので

完全におじいちゃんはボケたと思っていたのですが)

タイムマシンにせよクローンにせよロボットにせよ

先の先の未来で、人間はそれらを間違った事にしか使えないらしいです。

透明人間になる薬もできましたが、戦争やお風呂を覗くことぐらいにしか使えなかったそうです。

不老不死の薬もできましたが、人口が増え続けるために使用中止になったそうです。

ちなみにスタップ細胞はあったみたいです。


私はこのタイムマシンの防人をしながら思うのです。

「人はなぜ生きるのか?幸せとは何か?」

父も同じことを誰にも相談できずに1人で考えていたんだろうなぁと思うと

うれしいような複雑な気持ちです。

そしてたぶん同じようにこの問を結論づけたと思うのです。

「次の世代の子供たちが幸せであることが幸せなのではないのか」と


私はすごい任務を遂行してるのですが、歴史に名前を刻むことはできません。

ただ壊して、祈るばかりなのです。


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