35.連鎖
※第三者視点です。
7月22日。
英蘭王国、リーベルト離宮。
英蘭王家の保養所である、リーベルト離宮は、全室白い大理石で彩られた部屋が連なり、通称「白栄の城」と呼ばれている。
大理石が贅沢に使用してあり、豪華と言える外観を誇るが、何処か寒々しく人の営みを感じさせない厳格さがあった。
そんな離宮内の一室、上質な調度に囲まれた広い部屋で、アッシュブロンドの淡い色の髪を輝かせる女性が、上品にお茶を楽しんでいる。
一見物腰静かに思えるが、女性の顔はどこか落ち着きがなく、何かを期待するように青い瞳には光が躍っていた。
やがて扉がノックされ、一人の人物が入室してきた。
「入りなさい」
女性は待ち焦がれた人物の訪れに、僅かに声を高くする。
彼女の言葉に、青の正装を纏った騎士が入室した。
女性は室内にいた女官を全て部屋から追い出し、騎士と二人きりとなる。
騎士は部屋に人気がなくなったことを確認すると、女性に数枚の資料を手渡し、彼女の足元に跪いた。
女性はほっそりとした指を緊張で震わせながら、その資料をめくる。
資料をめくる度に、淡い笑みを浮かべていた口元は徐々に吊り上がり、最後には抑えきれないほどの喜びに満ちた満面の笑みを刻む。
「ふふふ、やっぱりいたのね。私の王子さま……」
女性は頬を上気させ、資料を指でそっと撫でる。
制服を着て勉学に励む様子。
日本王国の伝統である和の着物を纏い、凛と佇む姿。
無防備に笑顔を浮かべている素顔。
女性はそこに写る男性に、熱で浮かされたように強い視線を向けていた。
「何て美しいのでしょう……。数百年、我が祖先たちが誰も手にすることが出来なかった至上の男性が、やっと、やっと私のものになるのね……」
その言葉に誰も返事をする者はいない。
ただ一人、頭を垂れる騎士も黙したままだった。
「本当に良くやってくれました。英蘭王国王太女である私が、貴方のことを正当に評価いたしましょう。安心しなさい、アーシェ・サース・エルランド」
銀髪の騎士は顔を上げず、ただ深く頭を垂れ続けた。
具体的な章分けはしませんが、この話で「日本王国編」終了となります。
同時に「英蘭王国編」の始まりとなります。




