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聖魔戦記  作者: 西條
始まりは雷鳴と闇
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影黒の少女は踊る



「「あ。」」


 

 灰色の毛並み、悪魔特有の紅い瞳に角や鋭い牙。まさしく本で見たゴブリそのものだった。


 私とユカリは同時に声を上げ通り過ぎて行くゴブリを呆然と見送った。


「――はっ!!マドカ!そいつ!!そいつがゴブリ!!追え!!」


 我に返ったユカリは急いで「追え」と叫んだ。ユカリに急かされ私はのそのそと歩き続けるゴブリの後を追う――。







◇◇◇◇


 あまりに唐突な事で咄嗟に声に出してしまった。その瞬間酷く後悔する。


 ゴブリは仲間を呼ぶ習性があるのを忘れていた……。マドカにゴブリを追わせればゴブリの群れに囲まれてあっという間にマドカは死ぬ終わり。


 急いでマドカを止めようとするがマドカもゴブリもその場から忽然と姿を消していた。周りを見渡すが誰一人いない。


 

 完全に見失ったと大きく舌打ちをするとゴブリが歩いて行った大体の方角へ走り出す。


 木と草ばかりで走るのが非常に困難な獣道。マドカの奴、よくこんな道を走れるもんだと感心した。


 草木を押し退け無理矢理通って行くと開けた場所に出る。

 辺りを見回すとゴブリが前方に。多分先程見たゴブリだろう。大きさからして間違いない。



 ……しかし肝心のマドカの姿がどこにも見当たらなかった。



「もしやあいつ……迷ったのか?」


 この迷いの森から聖魔学園までは迷わないように目印である看板が立てられている。だが道を外れてしまうと看板のある場所まで三日間はたどり着けないらしい。


 とりあえずマドカがこのゴブリとの戦闘を回避出来た事に一安心するが迷子のマドカを捜すという言う面倒仕事が増えてしまう。



(……世話が焼けるぜ)



 私は息を殺しゴブリに近づく。ゴブリの方は私に気づいていない。この場でゴブリを五匹倒しとけば後々苦労せずに済む。適当に魔法でも打ち込めば悲鳴を上げることなく御陀仏だろう。


 右手に精神を集中させると手が赤色に淡く光った。


 これが『魔法』である。


 正確に言えばこの魔法は私の力では無く聖魔が貸してくれた力と言った方が良い。今使った魔法は火属性だがここは森なので火の聖魔は少ない。その為微量の力しか扱えない。風や土の属性を使えればいいのだが私は勉強が苦手な為初級魔法の火属性と闇魔法を少々嗜む程度だ。


 更に手に力を込めると、掌に小さな火の玉が出来上がる。威力はあまり期待できないが初級悪魔のゴブリにはこれで十分。


 掌をゴブリに向けると火の玉は勢い良くゴブリに当たり、あっという間に燃え、すぐに灰になった。


 これを後、四回繰り返せば課題は終わり。マドカを捜すのはその後でも良いはずだ。



「はぁ……。あと四匹、ゴブリが近くにいないものかねぇー」



 ――来た道を振り返ると大量のゴブリがそこいらにいた。



 悪魔特有の紅い瞳で私を凝視している。これが夜だったらかなりのホラーだ。

 数は四匹よりかなり多い。ざっと見、二十は超えている……。


 

 ――悪魔は死ぬ間際に人間には聞こえない特殊な超音波を出すと言われているが多分それが原因で大量のゴブリを呼び寄せてしまったのだろう。とりあえずこの数で攻められたら私と雖も骨が折れる。


 逃げようとするが退路はゴブリに塞がれていた。他に行く道も無い。この危機的場にマドカがいなくて本当に良かったと思う。



「面倒だぜ……まっいいか。 汚れ役は私だけで十分だ」



 この場所は木々の間から少しだが日光が漏れている。それを確認した私は地面から伸びている自分の影に手を入れた。




――影に手を入れる事など当然不可能だが、私だけは違う。





 黒の一族だけが使える『異能』――人によって使える能力は個々違い、当たり外れもある。


 私の異能は『自分の影を自由自在に操る』能力。マドカはこの異能をシャドウクリエイト《影の創作》と名付けた。中二病丸出しだが私自身もその名称を使わせてもらっている。意外に気に入っているのだ。


 私の手にかかれば影なんぞ様々な形に変形出来る。意外に伸縮可能でそれなりに強度がある。


 しかし欠点も存在する。《影の創作》は日陰など日の当たらない場所に行くと影は元に戻ってしまうのだ。ここは太陽の世界だけあって日陰で戦う事は早々無いだろうが裏を返せば日の当たる場所でしか、戦えないという事だ。


 欠点はその一つだけだが強いて言えば疲れる。


 影に手を入れた状態で勢い良く引っ張ると影は切れ味の良さそうな黒い鎌に変形した。何故鎌に変形するかというと私も中二病患者だからだ。恥ずかしいから言わないが。


 鎌を片手で握り起用にクルクルと回す。


 そして横に一閃。一振りするだけで突風が巻き起こり、木の葉がカサカサと舞い踊る。




「さて、いきますか」




――地を蹴り、ゴブリの群れへと突撃する。


 一匹のゴブリが手に持っていた木製の棍棒で殴り掛かる。ゴブリはそれほど素早くは無いので攻撃をかわす事は容易い。


 しかしゴブリは少々厄介なスキル能力を持ち合わせている。


 棍棒を「よっと」と避け、右に飛ぶと見計らったように二匹のゴブリが私を撃ち落そうと棍棒を振るう。



 これがゴブリの能力《チェインアタック(三匹寄れば文殊の知恵)》。



 一匹一匹は弱いもののゴブリには他の悪魔とは違い協調性がある。息の合った連携攻撃は実に厄介。大勢でかかればゴブリは中級悪魔にも匹敵する程の強さを持つのである。


「おおっと! 危なッ!」


 これは不意打ち。咄嗟に鎌で攻撃を弾き返すと二匹のゴブリは反動で隙が生じた。


 空中で回転をし、二匹のゴブリの首を同時に刎ねた。


 首は地面にゴロンと落下し切り離された首からは赤黒い悪魔の血がどくどくと流れ、地面を染めた。




「――っと。これで三匹か」


 二匹の胴体の落下と同時に地面にトンッと着地する。


 その場にいたゴブリ達は同胞の亡骸を見て臆する事も無く私と対峙する。流石は悪魔「心」が無いのは本当のようだ。


 私は目が合ったゴブリ達を次々斬り倒していく――。


 真っ二つに切り裂き、蹴り飛ばしては首を刎ねる。


 ――優雅で残酷な舞鎌捌きは全てを両断した。




西條です。


マドカの唯一無二の親友ユカリ視点のお話です。

このユカリちゃんですが自分の影を自由自在に操れる力を持っています。

私だったら影をベッド変身させます。私の家は布団なのでベッドというものに憧れを抱いています。でも落ちたら痛そう。

でも急性胃腸炎になったとき夜間病院のベッドに寝ましたがフカフカでした。注射痛かったしなんか隣でおばさんの呻き声が聞こえましたがベッドはフカフカでした!


未だにおばさんの呻き声が耳から離れません。


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