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聖魔戦記  作者: 西條
豊雲祭
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裏切りの焦燥


 俺はとんでもない事をした。

 裏切り者は心の中で自分のしたことを何度も何度も何度も後悔した。


 マドカが竜の元に走って行った時は本当に目を疑った。あんな見ず知らずの女、放っておけばいいものを……。マドカは何の躊躇いも無く助けたのだ。



 それはあまりにも無謀だった。


 昔からそうだ。マドカは自分の事を考えず他人を優先する。そのお蔭で自分がどれほど苦労されられて来た事か……。

 マドカは今も学習していないようだ。それがある意味マドカの長所でもあるのだが。



 竜が炎を出す直前、咄嗟に落ちていた石ころを拾い竜に投げつけてしまった。


 そのせいで、竜の気はこちらに向いた。裏切り者の決死の行為でマドカは火炙りにならずに済んだ・・そこは本当に良かったと心から安心出来る――のだが、お蔭で自分が竜に狙われる羽目になった。竜は俺が隠れている草陰を一転の狂いも無く見つめている。



(あぁ、クソ……。俺はここで終わりなのか……。聖魔学園に潜む《異端者》すら捜せずに俺は終わるのか……)


「おいおい……。なに諦めてんだよ。諦めんなよ。みっともなくてそれでいて情けないヤマト」



 ヤマト。聖魔学園裏切り者の名を呼ぶ青年が自分の横に立っていた。


 自分が危機的状況に陥っているのに何故か罵詈雑言を浴びせられる。こんなことを言う人物は一人しかいない。


 自分に聖魔学園の《異端者》を捜しだせと無理難題を押し付けた張本人であり、犯罪組織『コープス』のリーダー……ツクモだ。



「……。何をしに来たんだよ」


「好きな女の子を庇って自分自ら竜の餌になるなんてやるねぇーヤマト。見直したよ」


「べ、別に竜の餌になるつもりはねーよ? というか、マドカは惚れた女とかそんなんじゃねぇ! お、俺はただアイツが幼馴染みだから助けただけでそんな異性として見てないし!好意なんて感情これっぽちも無いから!……いや、そりゃあ少しはあるかも、しれねぇけどよ」


「あーはいはい」


 俺の長々とした言い訳を見事に受け流されてしまった。この掛け合いや、いつのまにかツクモが横に立っている事は俺にとって日常茶飯事なので特に動じはしない。慣れてしまった。と言った方が早い。



「で、あんたは何しに来たんだよ。……まさか俺を助けに来たとか?」


「君は面白い冗談を言うね。未だに《異端者》の手掛かりすら見つけ出せない間抜けな君を助けるだって?はははは!ははははは。」



 笑いが棒読みである。そして目も笑っていない。

 ツクモは「役立たずは助ける必要は無い」とでも言いたいのだろうか。




「ぐ……っ。聞いてくれよ!俺は《異端者》を見つけたんだ!」



「・・・それは本当に世界の危機を脅かす《異端者》なのかい? 絶対的な確信はあるのかい?」



 絶対的な確信。……確信はあるがそれは『絶対的』では無い。

 今更、絶対的確信が無いなんて言えない。


 もう退くわけにはいかないのだ。こうなれば最早クラインが《異端者》だと信じる他無い。これはもう、賭けに近い。




「……。あるッ!そいつは《異端者》だ!」



「最初の間が気になるけど。 まぁ、いいさ。ここは君を信じるとしよう。……いや、待て。僕は人を信じるなんて言葉は大嫌いだから訂正するよ。ここは君に、賭けるとしようか」


 ツクモがパチンと指を鳴らすと地面にぽっかりと穴が開いた。穴の真下にいた俺はそのまま重力の流れに従い落下してしまう。



「うおっ!?」



 突然の落下。視界は暗闇。そして未だに落ち続けている。俺は訳が分からずにいたが意外にも心は落ち着いていた。


 これはツクモの転移魔法か何かなのだろうか。それにしては心臓に悪い気がする。等と疑問を抱いていると下から眩しい光が差した。



 落下がようやく終わると思った矢先、穴から投げ出された俺が最初に見た風景は雲一つ無い青空であった。




 転移先は空のど真ん中であったのだ。俺はまたもや落下する――。



「―?―ッッ?」



 これもツクモの策略か。空に放り投げだされた俺はどうすることも出来ずにそのまま地面に激突した。落下した位置はさほど高くなかったものの受け身を取っていなければ全身打撲していたかもしれない。俺が無傷で済んだのは奇跡とも言えた。



「……。ここは?」



 飛ばされた場所は黄金街道であった。距離はレデレアからさほど離れていない。意外と村の目の前に飛ばされたらしい。


 飛ばした張本人のツクモの姿は見当たらない。またどこかに隠れているのだろう。



「さて……。どうするか……」



 見ず知らずの女を助けたマドカのその後も気になるがマドカが今どこにいるのか全く見当がつかない。



(そういえばユカリとクラインがレデレアで情報収集するとか言ってたな……)



 黄金街道でユカリがそんなことを言っていた事を思い出す。

 俺は村人に見つからないようユカリ達を捜す事にした。


 こんなストーカーまがいな行為、ユカリに見られたら幼馴染として示しが付かない。幼馴染みから一気に変態に格下げになる。俺は気合いを入れ心してレデレアに向かう。



「ん?」


 遠くからだが一軒の民家の煙突から灰色の煙が濛々と上っていた。軽く火事ぐらいに相当する煙の量だ。


(まさか、クラインの奴……? ついに本性を見せやがったか!)



 ――近くにいるユカリが危ない!


 幼馴染みの危機に居ても立っても居られず俺は全力で民家へ向かおうとする――。



「まぁ待ちなよ。友達思いのヤマト君」


 また何の前触れも無くどこからか出てきたツクモが言った。俺はツクモに視線を向ける事無く民家だけを視界に捉えている。



「ツクモ。邪魔しないでくれ」


「邪魔なんかしてないさ。僕はただ君に助言を与えているだけ。……今の僕はさしずめ最初の村にいる『町人A』のようなもの。 それが嫌だったら『小うるさいが主人公に時折ヒントを与えてくれる可愛い妹』だと思ってくれて構わないぜ、お兄ちゃん」


「……で、その町人Aは何を助言してくれるんだ。こうして話しているうちにユカリが危険に晒されているかもしれないというのに」


「ノリが悪いな、君は。だから駄目なんだよ。もっと考えて行動しなくちゃ。 君は銀行強盗されている銀行に平然とした顔で金を振り込みに行くのかい?君は火事になっているハンバーガーショップに笑顔でハンバーガーを食べに行くのかい?」


 非常に理解しがたい例え話である。多分直訳すると『危険な場所に考えも無しに乗り込むな』……なのだろうか。


 ここでようやく俺はツクモと視線を交わらせた。



「町人Aにしては長いセリフだったかな」


 いや、まずその前に例え話が分かりづらい。と俺は心の中でだけツッコミを入れておいた。



「で、俺はどうすればいいんだ」


「そうだな……。しばらく様子を見続けるのも一つの手段だと僕は思うね」


 様子見。自分のガラでは無いがこれも大事かと納得し民家の様子を遠くから確認した。

 相変わらず煙は煙突から立ち昇っている。しかし冷静になって考えてみれば民家に火は無い。火事というわけでは無いみたいだ。



(火事じゃないなら一体なんなんだ?)


 珍しく考え込んでいると民家の扉がゆっくりと開いた。中に充満していた煙が一気に外へ出たせいで民家全体が煙に覆われてしまう。


「くそ!これじゃあ出てきたのは誰か分からねぇ!?」


「君、黒の一族なんだろう?お得意の『異能』でなんとか出来ないのかい?」


 黒の一族だけが使える『異能』――もちろん俺にも異能は備わっている。

 が、俺はある理由で異能を封印している身だ。使えないワケでは無く、使わないだけだ。


「異能はその、使わないって決めてるんだ。こんな煙くらい異能なんて使わなくたって――」



 煙の中に人影が見当たらないか目を凝らす。



「あっ!」


 薄っすらだが俺の黒色の瞳は二点の人影を捉えた。一人がもう片方を抱きかかえているような形で向こうの林の中に消えてしまった。


「何が見えたんだい?」


「性別は分からないが一人が誰かを抱きかかえて林の中へと消えた……ように見えた」


「早く追いなよヤマト。あの人影、異端者かもしれないんだろ」


 異端者であると決めつける根拠は無いが、もう後には退けない。

 俺は全力で走り民家から出る煙の中を突き抜け人影を追った。


・・・えーお久し振りです。三ヶ月ぶりでしょうか(本当はもっと経ってそう)西條です。

この度、パソコンを新しく買い換えました。15万円くらいのPCです。

実は前まで使っていたノートパソコンが完璧に壊れてしまい投稿が出来なくなっておりました。もう一つ投稿している「オレと天使の祝福曲」が後1話で完結というのに申し訳なさでいっぱいです。

・・・・これからは投稿ペースを上げていきたいなと、思います。って、これ何回目でしょうか(^_^;)

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