遠い昔のおぼろげで儚げなそんな記憶
窮地に追いやられ、今まで心の奥底で眠っていた記憶が甦る。
――これは数年前の出来事。
草木や四季折々の美しい花々が咲き誇る草原。その一角に黒い沼があった。
黒い沼の前には灰色の粗末なワンピースを着た少女が一人。
ワンピースを着た少女は黒い沼に沈みゆく少女を呆然と見ていた。
「あっちゃー……聖魔学園トップと言われたレンカさんもこんなドジ踏むかー」
黒い沼に沈む少女は笑いながら言った。
少女の名前はレンカ・ルミナス。聖魔学園の制服を着ていて金髪の髪を横に一本で束ねている。
これから死ぬというのにどうしてレンカは笑っているのか、少女には理由がわからなかった。
「……」
刻一刻と闇に沈むレンカを黙って見下す少女。茶色の長髪に灰色のワンピース姿がどこか哀愁漂う。少女は無表情で無言。彼女は無で出来ているのだ。
「あたしはまんまと異端者の罠にハマっちゃったけどさぁ……あんたと過ごした毎日、悪くなかったよ!あんたはあたしの妹みたいでさ。毎日が馬鹿みたいに楽しかった!」
少女の目が一瞬だけ大きく見開くがすぐに死んだような黒い目に戻りレンカを見つめた。
「……これからあんたは異端者に追い回されるかもしれない……。でもあんたならきっと大丈夫。なんたって仲間がいる」
「……仲間?」
ようやく少女は口を開いた。途中で途切れてしまいそうなか細く、儚い声だ。
「そう、仲間。あたしもそうだし……ほらクロナの所のユカリちゃんもそう」
レンカの腕は両方とも沈んでしまった。少女がレンカと話せるのもあと僅かだ。ここで本題に入るかのようにレンカは真剣な眼差しで少女に問いかけた。
「あたしからの最期のお願い、言ってもいい?」
少女はこくりと首を縦に振った。
「聖魔学園に入ってあたしの後を継いで。それがあたしからの最期のお願い」
「……聖魔学園?どうして……? だって私は――」
「抵抗はあるかもしれない。 でもいつでもいいから聖魔学園に入ってほしい。きっとあんたの世界が変わるから」
とうとうレンカの首までもが沈み、顔が闇の沼に飲み込まれていく。
「……最期に一つ言いたいことがある。 異端者についてさ」
「……異端者?」
「異端者は*だ。あたしじゃあちっとも歯が立たない相手。 でも***のあんたなら……」
「――レンカ。私……レンカに会えて、本当に、よかった」
何故だろう。よく分からないがそんな言葉が出てきた。
「あたしもだよ」
ふっとレンカは笑い、別れの挨拶を告げる。
「……さよならは悲しいからさ」
レンカの瑠璃色の瞳からはポタポタと雫が零れ落ちていた。まだ生きたいと言うレンカの悲痛な思いは雫と共に頬を伝い無残にも闇の境界に飲み込まれてしまう。
そしてレンカは悲しさを微塵にも感じさせぬ最期の笑みを少女に見せた。
「またね、マドカ」
レンカが闇の境界に飲み込まれ残された少女――マドカはただ呆然と立っていた。
(……?)
突如原因不明の胸の苦しみに襲われマドカは地面に膝をつき胸を押さえた。
胸の苦しみと共に頬を伝う一粒の雫。それは紛れもなくレンカの瞳から流れ落ちたものと同じであった。
この透明な雫が『涙』と気づくのはまだ先の事。
――これが、私――マドカが生まれて初めて涙を流した日の出来事である。
どうも、友達がほしい西條です。
友達、ほしいです。
別にぼっちというわけじゃないんですが自分と似たような友達がほしいのです。
高校生で小説かいてる子とか学校で見つからないからそう思ってしまう西條なのでした。