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水滴さんの能力は本当に素敵ですわ!
ミルクに続いて、ミルク粥まで出せることが判ったのです。しかも、水滴さんが食べた時と全く同じ暖かい状態です。
小匙たった一杯のミルク粥をスープ皿一杯へと増やしたのですから、まさに魔法の力ですわね。
そんな水滴さんの力を確認出来たことが、今日起きた事件の中で二番目に良かったことですわ!
一番?それはもちろん、アルフレート殿下からお手紙を賜ったことです。
ただ良いことは続かないもので、わたくしは直後に犠牲を払うことになりました。
安全かどうか確認せぬままミルク粥を口に運びましたことで、ミリーにそれはもう大変な剣幕で諌められてしまいました。
いつもは穏和なミリーの目がきりりとつり上がっていく様子なんて、もう見る機会がないことを祈りますことよ!
とはいえ、甘いミルク粥の匂いを前にして抗うことの出来る者などいるでしょうか?わたくしには無理です。暖かいミルク粥を食べる機会をみすみす逃すだなんて、そんなことになったら悔やんでも悔やみきれません。
ミリーもまたミルク粥の誘惑を退けることはかなわず、わたくしが小匙にミルクをすくってミリーに差し出すと、ミリーは長い葛藤の末に食べたのでした。
一口目を食べてしまうともう歯止めが効かず、ミリーはそのままスープ皿のミルク粥を全て平らげてしまいました。
なんでも、ミリーは甘い物が大好きなのですが、太りやすい体質なので普段は控えて居たそうです。
わたくしが飲んだのは結局、ミルク粥小匙一杯分だけでした。
てもそれで助かったこともあるのです。
もう夕刻ですから、すぐに夕餐が始まります。ただでさえ食の細いわたくしですから、そんな頃合いに間食をしたなら、夕餐を食べるのに支障をきたしたに違いありませんもの。
☆
夕餐を終えたわたくしはベッドに横たわり、このところ続けざまに起きた様々な出来事を思い起こしました。
アルフレート殿下とオリビア様と観劇し、おやつを頂きながら感想を語らったのはなんと昨日のことなのです。
オリビア様にはお願いして御一緒してもらったのでしたわね。
だって、もしアルフレート殿下と二人きりになったなら、わたくしまともにお話ができたとは思えませんもの。
その後のロック鳥襲撃は言うに及ばず、水滴さんの新たな能力も確認できました。明日はもう少し穏やかな日であれ、と祈ることとしましょう。
それでは、おやすみなさい。